また酒場でケンカをした。
ケンカっつーか、オレのはいつも、相手をどやしつけるタイプのものなのだ。
ガンコオヤジなのだ、オレは。
その店は、大将とおかみさんの夫婦で切り盛りしてる。
手間ひまをかけたとても質のいい料理と、心づくしでもてなしてくれるオレの秘密基地なのだが、隣にあまり品のよろしくないスナックがあるせいか、たまに妙な客が現れる。
昨日の客はひどかった。
「作家」と名乗る60がらみの男と、絵に描いたようなタイコ持ちの男という二人組だった。
店内には、カウンターのオレと、ボックス席のその二人だけだったのだが、「今日は貸し切りだ」と大きな声で話してる。(この時点でカッチーンときてる)
そしておかみさんを呼びつけて横に座らせ(はべらせ?)、ヤるのヤらないの、抱くの消えるの、と大将の耳に聞こえよがしに騒ぎ立てはじめた。
横のタイコ持ちがまたクソみたいな卑屈野郎で、ヨイショ一辺倒。
ほんとに五七五調で(きみまろみたいな)、おごってくれる相手をおだて上げるんだね、びっくりした。
どんなに偉いセンセイなのか知らんけど、オレも「作家」だと知ると、チョッカイ出してきた。(しめしめ)
「オレはかしこいぞ」と言うので、「オレもかしこいですよ。そしてケンカも強いよ」と言い返してやった。(牽制)
しかし、まだ余裕をかましてる。
「ボトルを入れてやるよ」と言うので、「師匠の遺言で、ひとのふところから出た酒は飲まないようにしてる」と言って断った。
しかし、断られたままではプライドが許さないのか、一杯だけでいいから飲め、としきりにすすめてくる。
大将がロックを出してくれたもんだから仕方なく飲んだが、「だったら彼にも、お返しに一杯さしあげて」と、オレも負けてない。
このくすぐりにはカチンときたらしく、再びおかみさんへのチョッカイがはじまる。(オレはすでに沸騰中)
ついに大将まで横に呼びつけて、ひどく屈辱的な言を弄するものだから、
「うるせーな、いいかげんにしろ!」
キレた。
「作家かなんか知らんけど、どんな品性してんだ」(怒鳴ってる)
相手はドギモを抜かれてる、ざまーみろ。
「バカじゃねーのか」(頭の横でくるくる指を回す)
「しねっ」(ここは心の声)
それきり、おとなしくなった。
大将が板場にいそいそと戻ってきて、やつらの死角から愉快そうな笑顔を向けてくる。
客商売だからって、調子にのせちゃいかんよ、バカは。
あと、この手の輩でよくわからんのは、必ず最後に握手を求めてくることね。
媚びへつらうような気味の悪い笑いを浮かべて、「また飲もう」だって。
知らねーよ、二度と飲みたかねーよ。
ほんとにクソだ、あいつら。
でも、いいや、スッキリしたから。
怒り散らしたことになんの後悔もねーや、へへ。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園