裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/宇宙編・3

2023年02月26日 08時48分31秒 | 世界のつくり

3・量子重力理論って

重力理論は、物理学の中でも特別な位置づけだ。
素粒子論や天体物理などは、時空間の内部で起きる現象を記述するものだが、重力理論は時空間そのものを説明するパラダイム論なので、他のすべてに優先される必要がある。
アインシュタインさんの重力理論は、ニュートンさんの発見した万有引力の正体を解明したのが優れてるわけじゃなく、この世界のつくり・・・いわば時空間そのものを明確な形で体系化させた点がすばらしいんだ。
彼は重力を、場の概念を用いて説明してる。
時空間とは、宇宙にひろげられたゴムマット(これが場)のようなものだ、と。
そのマット上の一点に大きな質量の天体を置くと、マットは大きく沈む(つまり時空間がゆがむ)。
そこに小さな質量の物体・・・例えば流れ星が通りかかると、マットのゆがみに落ち込んでいく。
これが重力の正体なのだ、と。
これをさらに拡張しようというのが、場の量子論における量子重力理論だ。
さて、ここから先の概念では、場とは、宇宙空間にひろげられたゴムマットではない。
最初にゴムマットがあって、そこから宇宙空間が生まれるのだ。
時間も空間もないところに、まずゴムマットがあるのだ。
・・・意味がわかるまいが、もう慣れただろ?
場とは、それほどまでに根本的なものなのだ。

つづく

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世界のつくり/宇宙編・2

2023年02月23日 09時51分38秒 | 世界のつくり

2・一般相対性理論って

ここは無重力の宇宙空間だ。
あなたの部屋の形をしたロケットをここで上昇加速させると、室内に重力が発生する。
床が上向きに足の裏を押してくるので、あなたは地球上とまったく同じ重力を感じるんだ。
部屋の壁には、ダーツの的がある。
その中心に向けて、あなたはレーザー光を発射する。
すると、光の先は下向きに曲がり、的の中心から少し下にずれて命中する。
光は、的に向かったわけではなく、的よりもはるか先の宇宙空間に向かって進むことに注意だ。
つまり、レーザー光が発射された瞬間から的に当たる瞬間までの間に、ロケットが上昇加速して壁の位置が上向きにずれたために、光の先は下向きに曲がったわけだ。
ところが、「光は必ずまっすぐに進む!」というのが、アインシュタインさんの一般相対性理論だ。
よってこの現象は、「加速する系では空間が曲がる」と表現する。
光が曲がったわけじゃない、と視点を変えるところが、まさに相対性だ。
さて、地球上には、このロケットの室内そっくりのあなたの部屋がある。
あなたはロケット内と同様に、壁のダーツの的に向けてレーザー光を発射する。
光の先はもちろん的の中心に当たる・・・と思ったら大間違いだ。
ここでもまた、光は中心から少し下にずれて命中する。
地球の大質量が、ロケット内とまったく同じだけ空間をゆがめてるんだ。※1
地球の重力は、常にあなたの足の裏に向けて地面を押してくる。※2
このゆがんだ空間の系において座標を補正しようとする加速移動こそが、重力の正体だ。

つづく

※1 ただ、大きいとは言っても地球の質量は小さすぎて、時空間のゆがみは観測が難しいほどささいなものだ。
※2 あなたの足の裏が地面を押す反作用とも言えるが。

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世界のつくり/宇宙編・1

2023年02月22日 08時28分41秒 | 世界のつくり

1・重力って

ミクロの世界からいっとき離れて、ここからは世界を俯瞰で見ていく。
最初に知っておくべきは、やっぱり重力かな。
前の「物質編」で、この世界は四つの力のみによって支配されてる、みたいなことを書いた。
身近に感じられる「電磁気力」に、素粒子同士をくっつける引力(「強い力」という)と崩壊させる力(「弱い力」という)・・・そして「重力」だ。
考えてみれば、重力なんて、へんな力だよ。
気持ち悪い遠隔操作で、もの同士を引き合わせたがる。
ものとものの間にはなにもないんだから(天体が重力によって運動させられる宇宙空間には空気もないと言っていい)、これはまるでオバケみたいな超能力だ。
これを説明しようとするのが、場の量子論だよ。
重力は、ご存知のようにニュートンさんが「万有引力」として表現したんだけど、実は本人もこの力を「なにが媒介してなにに作用してるのか理解できない」と気持ち悪がってたんだ。
そこに「場」という概念を持ち込んだのが、「ラプラスの悪魔」※1でおなじみのラプラスさんだ。
それを、いよいよアインシュタインさんが一般相対性理論として体系化した。
単純に言えば、重力とは「質量を持つものの周囲の時空間をゆがませ、へんになった位置から本来あるべき位置へと加速させる力」だ。
あなたは、落下してるんじゃない。
もともといなきゃいけない座標に、原状回復を目指して自分の位置を修正しようとしてるだけなんだ。

つづく

※1 宇宙にあるすべての素粒子に位置と運動の初期値を与えれば、その未来は完全に予言できるとする「運命論」は、確率に支配されて確定値を持つことのできない量子もつれの現代科学によって、完全に否定されつつある。

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世界のつくり/物質編・おしまい

2023年02月18日 23時22分40秒 | 世界のつくり

おしまい・対生成と対消滅って

場、ねえ・・・
また話をめんどくさくしてしまって、ほんと、ごめんと思ってる。
だけど結局、数学で記述された自然現象を言語に還元するとこうするしかなく、こうすると、世界の根本メカニズムを実にうまく解釈できるんで、どれだけ抽象的であろうと観念的であろうと、この説明はいちばん事実に近似してるようなんだ、今のとこ。
そしてまたへんなことを書くけど、まじで今日で最後にしとくから、許してほしい。
というのも、量子場でひっきりなしに素粒子が生成され消滅する、って件がまたなんというか・・・ややこしてくても、今後どうしても必要になってくるんだ。
そこだけ書いて、めんどうなやつはおしまいにする。
例えば、ある素粒子がエネルギーを得て、ちょっとパワフルな素粒子になったとする。
この事案を、場の量子論は、「素粒子がエネルギーと出会って双方が消え去る」と同時に「パワフルになった新たな素粒子が生まれる」と表現する。※1
つまり、エネルギーを得たと同時に、素粒子は別人に入れ替わるのだ。
俗な例え話だけど、「百円玉×5枚と五百円玉×1枚が混ぜられた途端、千円ぶんの小銭の山は一瞬で蒸発し、代わりに千円札1枚がこつ然と誕生する」というような物質そのもののエクスチェンジが、ミニミニ世界では実際に行われてるのだ。
素粒子同士がハチ合わせるたびにいちいち、だ。
要するに、この世界の裏側には鏡面のようなもうひとつの世界が存在し、こちらの出来事をすべて見てて、百円玉5枚と五百円玉1枚が混ぜられた瞬間に、次元の扉を開けて「千円札」と反物質である「反千円札」を送り込み、「反千円札」を「反百円玉」5枚と「反五百円玉」1枚に両替したのちに正規の百円玉5枚と五百円玉1枚にぶつけて対消滅させ、差し引きで「千円札」1枚をこちらの世界に残す、という手の込んだことをしてるようなのだ、数学的に記述すれば(そしてそれを言語に還元すれば)。
・・・わ、わかった、もう書かないよ、これ以上はややこしくしないと誓う。
でもねでもね、この作法を用いれば、世界が生まれる瞬間が、時間の開始が、空間の成り立ちが説明できるのだ。
そういう話を、ぼくはしたいだけなのだ。

おしまい・・・だけど「宇宙編」につづく

※1 この際の物質としての素粒子とエネルギー(もつぶ状の素粒子)には、反物質である反素粒子と反エネルギーが付き添って対消滅し、新たに生まれる素粒子には反物質である反素粒子がペアとなって対生成される。が、その後に述べてるように、その順序は複雑に入り組む。

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世界のつくり/物質編・18

2023年02月17日 07時40分58秒 | 世界のつくり

18・量子場って

量子が煮えたぎってる場が「量子場」(通称で「場」)だ。
世界を量子場が支配してる・・・というよりは、世界に先駆けて量子場が存在し、世界をつくってるんだ。
場を、広々とひろがる薄布とすると、その表面は波動関数の確率の高低差で山谷ができ、波打ってる。
そして、山のピークに高確率で素粒子が発生する。
今「発生する」と言ったけど、これがほんとに「生まれ落ちる」んだ。
素粒子たちは、もうひっきりなしに生まれ、そして消える。
素粒子とは、離散的な数値を持ったエネルギー・・・つまりつぶ状に小分けにされた波だってことを思い出してほしい。
連続的につながってなくて、こま切れなんだ。
だから、生まれるときには前触れもなくぽんっと出現し、消えるときにはいきなり跡形もなくぱっと消滅する。
そのために、時間もまた小分けにされて、飛び飛びの値に刻まれる。
連続的に流れるもんだと思ってた時間もまた、つぶ状なんだ。
その時間のつぶごとに、素粒子はおびただしく生み落とされる。※1
しかも、「物質」と「反物質」という、鏡うつしのペアで。
このペアは、姿かたちも性格もそっくりなのに、電荷だけが正反対、という双子だ。
生まれるときは、必ずふたり一緒(対生成)。
そして、消えるときも必ずふたり一緒(対消滅)。
この世界とは、延々とこれを繰り返して、いわゆるひとつの定常状態を保ってるようだ。

つづく

※1 正確には、素粒子が生まれるごとに時間のつぶが発生する、という逆の順序が正しい。

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世界のつくり/物質編・17

2023年02月16日 09時45分20秒 | 世界のつくり

17・場の量子論って

ミクロ世界のつくりは、大きな体を持ってしまったぼくら人類の直観とは相容れないみたいだ。
そもそもそこでは、存在の概念も、活動のルールも違ってるんだから。
だけど、ぎりぎり前回までに書いたことは、頭の中でイメージできる世界だった・・・よね?ね?
ところがここから先は、さらに常識を捨てなきゃな世界になっていく。
物理学とは、自然現象を数学で記述するという学問なので、より正確な世界の描像を構築しようとすると、どうしても観念的になっていくしかない。
そんな、最新にしてコンセプチュアルな芸術作品(科学の粋を集めた最先鋭見解)を知ってもらい、第一部の完結にしたい。
それが、量子力学をただの基礎科学にしてしまう、「場の量子論」だ。
ここまで、物質は波であり、力はつぶであり、つぶと波は同じものである・・・みたいなことを言い散らかしてきたけど、「波っつーけど、なにが震えてんの?」と疑問に思ってたはずだ。
フツーなら「音波」や「風」みたいに空気が震えてると考えたいとこだけど、その空気を形づくる素粒子こそが「波の集中した一点の位置」だってんだから、疑念は深まる。
だったら、なにが震えてんの?
その震え、波打ち、素粒子を素粒子に見せてるものとは、「場」だ。
磁石の周りに現れる「磁場」は、そこにまかれた鉄粉なんかの形を変え、方向を与えることで、力が目に見えるよね。
あれと同様に、いろんな場※1は、真空にひろげられたマットみたいなもので、あちこちで震えて素粒子に形と力を・・・なんというか「存在」そのものを与えるんだ。
それどころか、そこら中で煮えたぎって、素粒子たちをひっきりなしに生み出してる。

つづく

※1 素粒子はそれぞれにいろんな場を持ってる・・・と言うよりも、場こそがそれぞれの素粒子そのものだ。
例えば、電磁場(電気と磁気は同じものだ)の震えは光子という波であり、この素粒子形成の過程を「場が量子化される」と表現する。

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世界のつくり/物質編・16

2023年02月14日 10時06分58秒 | 世界のつくり

16・分子って

まったく精妙なことに、こんなスカスカな波の重なり合いがひとつのパーツとなり、それがたくさん集まって、ぼくらの住む物質世界を構築してくれる。
波同士が精密なパズルのように組み合うことで、いよいよ本当に「つぶ」の体をなしはじめるんだ。
原子の中央に位置する原子核は、陽子が一個で「水素」原子核、二個で「ヘリウム」、六個で「炭素」、八個で「酸素」、二十六個で「鉄」・・・という具合いに、まったく別の性質を獲得する。
ここに陽子と同数の電子が飛び込めば、各種「元素」の誕生だ。※1
原子核の周囲に展開する電子は、他の原子と手をつなぎ(というよりも、電子そのものが手の役割りをする))、「分子」を形成する。
陽子と電子の勘定が合わない分子は、イオン化して電荷の勾配をつくり、他の分子と酸化・還元という化学反応を起こす。
物質に酸性やアルカリ性という、さらなる複雑な性質を持たせるんだ。
分子の振動は、氷から液体、そして水蒸気という相転移にまで関係してくる。
これらは結局、素粒子が「つぶ」だと起こりえないような現象だ。
波のうねりが共鳴し合って、1+1は2よりも大きな創発を引き起こすわけだ。
分子の間に起こるあらゆる現象は・・・すなわち、この世界で起きる一切の出来事は、素粒子たちが持つ電磁気力、グルーオンの引きつけ力、万有引力※2、そして崩壊の力※3・・・の四つのみで説明できる。
この世界におけるいちばん小さなパーツが「波」という融通無碍な存在だからこそ、お互いに絡み合い、交わり合い、はじき合い、打ち消し合い、同化し合い、反応し合って、こんなにも豊かな光景(まさしくこの言葉通りだ)をつくり出すんだね。

つづく

※1 原子核には中性子も含まれるが、この中性の核子の数はわりとテキトーだ。
※2 「グラビトン」という素粒子の介在で、質量を持つもの同士は引っ張り合う。
※3 ベータ崩壊はちょっとだけ説明したが、「ボソン」系の素粒子が仕事をする。

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世界のつくり/物質編・15

2023年02月13日 10時06分01秒 | 世界のつくり

15・あらためて原子って

地球のような原子核の周りを、月のような電子がぐるぐる・・・という古典的な原子モデルは捨て去るときがきたようだ。
最新の知見による原子の実像は、構造も、構成の比率も、イメージをはるかに超えるものだ。
まず原子核からして、実体を持つ物質という概念とはかけ離れた、「エネルギーの震えが集中してる空っぽのエリア」にすぎないんだった。
だけど、そのエリアが持つ+電荷に引かれて、−電荷エネルギーの固まりである電子がやってくる。
そして周囲に展開するわけだけど、その相対比スケールときたら。
例えば、水素原子核である陽子を東京ドームのマウンド上に置かれたパチンコ玉とすると、「その周囲を回る」とされる電子は、なんとはるかドーム屋根ほどもの距離をかすみのようにさまよう希ガス、という構成になる。
原子核がパチンコ玉の大きさだとしたら、原子全体は水道橋のこの区画一帯ほどもの直径を持つ※1、なんて驚くべきオーダーだよ。
しかも電子は、ぐるぐる回ってるわけじゃなく、無数に分身して散開する「たまに位置を持つ波」なので、原子の姿は量子力学ではたびたび「雲」と表現される。
この広大な軌道上を、電子は実体で飛び回ってるわけじゃなく、例の「あそこにもここにもそこにも同時にいて」「そこには確率の波があるきりで」「観測されて姿を現すまでは位置を持たない」という波動関数で存在してるにすぎない。
そしてそれは、原子核の中のクォークも同様だ。
素粒子がそうした茫洋とした存在である以上、原子には姿かたちなんてどこにもない!という当然の結実が待つ。
原子の中身が、これほどまでにスッカスカ・・・というか、まるきり空っぽだったとは!
これをはたして「物質の最小単位のつぶ」と言っていいものなのかどうか?
というよりも、いったい「物質」ってなんなんだろう?
この世界に「在る」とされるものの、確たる手応え、硬く感じる感触の、その中身って・・・?

つづく

※1 原子の大きさは、電子の周回径で表される。

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世界のつくり/物質編・14

2023年02月11日 06時11分12秒 | 世界のつくり

14・陽子と電子って

話を元に戻すと、物質構成素粒子であるクォークが三つ、グルーオンという引力素粒子に拘束されて、陽子は誕生したんだった。
だけどその内部構造は、「玉が三つ接着剤で固定された」などという画づらとはほど遠い。
何度も何度も何度も書いて恐縮なんだが、素粒子とはただの波なのだ。
なんか知らないけど「無」がいつもいつも震えてるやつ・・・くらいにイメージしといた方がいいかもしれない。
というわけで、「陽子という名の半径エリア」にいるクォーク三つは、グルーオンという鎖でつなぎとめられた、飛び交うエネルギーだ。
クォークたちの活動半径は、自己半径の100〜1000倍(これが事実上の陽子の半径)だから、陽子なんて事実上スッカスカの、密度がほぼゼロの風船※1、ということになる。
さて、電荷の合計が+1になった陽子は、いよいよ電荷が−1という相性ピッタシのキャラを呼び込むことになる。
人類の男の子と女の子が好き合うように、磁石のS極とN極がくっつき合うように、+電荷と−電荷もまた引き合うことを運命づけられてるのだ。
その−電荷キャラとは、もちろん「電子」だ。
このおてんばな子は、+1の電荷を持った陽子に引き寄せられ、マンツー(ウー)マンのパートナー契約を結ぶ。
ついに、物質としての最小単位である原子の成立だ。
原子チームに組み込まれた電子は、同時にすごい運動量で中心から遠ざかろうともし、居心地のよろしい距離感のあたりに周回軌道を確保する。
こうして、陽子という原子核を中心に、その周囲を電子がぐるぐると回る水素原子が・・・というモデルも、しかし不確定性原理と波動関数がはばをきかせる今となっては、古典的なものだ。

つづく

※1 陽子に実体はありそうにないが、エネルギーに換算される質量はある。そして、比喩に用いた風船の密度はもちろんゼロではない。ただその中身は、今まさに説明中のスカスカな素材で満たされてるという哲学的な矛盾は生じる。

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世界のつくり/物質編・13

2023年02月10日 15時32分47秒 | 世界のつくり

13・核融合って

「クォーク」三つがくっついてできた陽子と中性子とで、原子核はつくられる。
だけどそのすき間には、「グルーオン」という接着剤係や「光子」という電荷係のひとがひそんでるんだね。
姿かたちは見えないけど、これらはとても重要な仕事をする「力の素粒子」たちだ。
例えば、こんな具合いだ。
陽子は、たったひとりでも水素の原子核になる。
水素は、原子核のつくりがいちばんシンプルな元素だよ。
水素原子核になる陽子は電荷が+なので、同じ+電荷の他の陽子が近づいてくるとはねのける。
電荷が同じもの同士の仲が悪いのは、磁石の同極同士が反発し合うのと同じだ。
なので、陽子と陽子とは絶対に触れ合えない。
だけど、無理矢理に・・・例えばものすごい高温と高圧とで押しつけ合ってやると、ついにすれすれにまで近づくことができる。
まさに触れ合わんばかりに、だ。
するとなにが起こるか・・・実はあなたはもう知ってるんだよ。
そう、接着剤素粒子であるグルーオンは、鼻先すれすれにまで近づくとやっと働く超近距離引力なんだった。
しかも、磁力の100倍というほどの、猛烈な!
電荷の反発力をものともせず、陽子同士はくっつき合う。
どかーん!
・・・いきなり、びっくりした?
これが核融合だよ。
こうして陽子と陽子はひとつの原子核におさまり、原子番号の階段を一段上がったりするんだ。※1

つづく

※1 厳密に言うと、このケースでは片方の陽子がベータ崩壊を起こして中性子に変身し、陽子と中性子というペアの「重水素」になる。
この重水素同士が再び核融合を起こすことで、ようやく晴れて原子番号2の元素「ヘリウム」になる。

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