裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/天体編・5

2023年06月30日 13時44分25秒 | 世界のつくり

5・平衡宇宙、って

何度も言うけど、ぼくらには、量子の振る舞い(現実の世界)は「人類の感覚と神経系が独自に解釈する画づら」、すなわち自分の脳内につくりだすオリジナル世界の範囲でしか理解できない。
ぼくらの外側(ぼくらの肉体も含めた)には、実体のない「場」があるばかりなのに、ぼくらの生物としての身体機能(を総合する脳)はそこに三次元空間を立ち上げ、素粒子というつぶつぶを見出して・・・というよりは、想定してるだけだ。
まあ主観的で一方的な事実として、ぼくらはそこに色と形と手触りを感じてるんだからなんの問題もないわけだけど、そのバックヤードが「無」であることは、風景想起の根底に納めておこう。
さて、ビッグバン後の宇宙空間がひろがってきた。
そこには波動関数が規則正しく波打ち、のちの人類が観測するところの陽子(水素原子核)が完全に等間隔な隊伍を組んで展開してる。
慣性の法則によれば、動きはじめたものは動き出した方角に向かって等速直線で永遠に動きつづける。
つまり陽子の隊伍がそのまま放射状に行進をつづければ、世界は陽子を正確な三次元方眼状に並べた平衡状態を保ったままひろがっていくはずだった。
そして、物質の誕生はおろか、わずかな変化をも含めた何事も起こり得ないはずだった。
が、慣性の法則には、ただし書きがある。
「他から力を加えられないかぎり」という。
その「他からの力」というのが、万有引力だ。
陽子は、小さいながらも質量を持ってるのだ。
とは言え、「質量を持つもの同士は引き寄せ合う」というこの法則は、パーフェクトな平衡状態においては、力を相殺されてしまう。
個別の陽子は、全方向から等しい万有引力の効果を求められており、奇しくもニュートンさんが第三法則に組み込んだ「作用と反作用」が完全な形で機能したかのように、陽子の隊伍は平衡状態に固定されてしまうわけだ。※1
ところが、量子場は確率の存在であり、永久不変を許さないゆらぎまくりの性質を持ってるんだった。

つづく

※1 相対性理論によれば、宇宙はがんじがらめな平衡状態を維持できず、素粒子間の引力が宇宙の膨張を収縮へと逆転させ、やがてビッグバン時の特異点に収斂(しゅうれん)させる「ビッグクランチ」に向かうはずだ。※2
※2 が、「平衡じゃない宇宙なんていやだ!」とアインシュタインさんは考え、重力理論の計算式に宇宙定数というものを組み込んだが、宇宙膨張の証拠を突きつけられて「しまった、余計なことをした」と悔やんだんだった。※3
※3 が、最新の宇宙空間加速膨張の観測と、当時知り得なかった宇宙中にひろがるダークな質量の存在が明らかとなり、「アインシュタインの宇宙定数、ファインプレイじゃね?」という空気になってるようだ。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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世界のつくり/天体編・4

2023年06月28日 10時00分10秒 | 世界のつくり

4・わかりやすく、ったって

よめはんが「じぇんじぇんわからにゃい」「ねむくなった」と言うんだけど、そうだろうなと思うので、もう少し噛み砕いて説明を試みるものなり。
というわけで、ビッグバンに先立つインフレーションでできたのは「現世」という針の先ほどの穴で、その一点に突如として、素粒子を生み出す量子場が折り畳まれ、充填されたのだった。
量子場には、質量というエネルギーがみなぎり渡ってるんで、それのつくり出す重力が出来たての小さな小さなピンポイントの位置情報をゆがめ、世界の容積を膨張させていく。
そしてついにビッグバンがポンと爆ぜるわけだが、ここで魔法のカーペットたる量子場がひろげられる。
生まれたての宇宙空間全体に、ミストの噴出口のような量子場がすみからすみまで張りめぐらされて、いつどの位置から素粒子が出現しても不思議でないつくりとなった。
その出現確率こそが「波動関数」というやつで、波を打った関数のピークから素粒子は(反素粒子と対となって)吐き出されるが、ピークでない場所から不意に吐き出されることもある(なにしろ確率なもので)。
かくも量子とは、われわれ人類には抽象的に思えるからくりなんだが、こいつをどう観測して概念化するかで、受け取る側にとっての世界の形は変わってくる。
たまたまわれわれ人類の感覚受容と神経系はこれを「時間と三次元空間」と解釈し、クォーク場とグルーオン場の相互作用を「物質」ととらえて、目に見え、手に触れられるように機能を進化させたわけだ。
ところがそのバックヤードにまわると、舞台上で目に見えてたものは、一箇所に偏った素粒子の塊にエネルギーがどう吸収されて反射されてるかの道すじを感覚器がどう受け取るかの問題であり、その手に触れて実体と思えてたものは、手に取ったものの素粒子間の電磁気力と自分の手の平の持つ電磁気力との間に発生する反発力の問題であったのだ、とわかる。
要するに人類は、「量子場の振る舞いを感知できるように自分サイドの感覚機能を操作した」のであり、したがって脳内に立ち上がるその世界は、自分だけが感じ取れる(あるいは勝手につくり上げてる)幻想なんだった。
さて、出来たての宇宙空間に戻るが、そんな量子場が・・・まだ誰にも観測されることなく、解釈をされたこともない、実体を伴わない素粒子たち(波動関数の波)の大集団が、のちに人類が宇宙空間と呼ぶことになる幻想界に、広々と展開をはじめたんであった。
・・・やはりじぇんじぇんわからにゃいか・・・

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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世界のつくり/天体編・3

2023年06月27日 12時43分11秒 | 世界のつくり

3・量子場の展開って

ひろがりつづける宇宙空間に、おびただしい陽子が大展開・・・と、われわれ人類の感覚器は情報を受容し、脳機能で描写(解釈)するが、実際の画づらはどういうものなんだろう?
最先端の科学が言うところでは、インフレーションの特異点の中にあらかじめまるめられ、宇宙開闢の際にひろげられたのは、量子場だ。
つまり、はたくと素粒子を飛び出させる、実体のない魔法のカーペットだ。
クォーク場、グルーオン場、ヒッグス場にボソン場に電磁場にグラビトン場・・・様々な素粒子と「力」を生成・消滅させるカーペットが、三次元の綾として時空間内に織り込まれ、多様な相互作用を起こすことで、物質世界が築かれていくわけだ。
誕生したての時空間には、まだ物質は存在していない。
場の正確な方眼に区切られた各エリアに、ひとつひとつの素粒子を生み出す波動関数のピークが設定されてるだけだ。
が、このおびただしい関数が炸裂することで、きれいに目のそろったハニカム構造のような陽子の隊伍が組み上がる。
この最初期の状況が、エントロピーの最小値の姿と言える。
さて、タテ・ヨコ・奥行きに一定の距離を置き、一様に並んだ隊伍は、空間膨張の勢いに乗って展開しても、なにも仕事はできないはずだった。
同じ比較距離のまま相似形にひろがり、散開し、遠い未来には離れ離れになるはずだった。
どのタイミングでも物質は構成されず、天体は形づくられず、生命も永遠に生まれ得ないはずだった。
が、幸運なことに量子とは、もつれ、重なり、揺らぎ、ラプラスの悪魔※1を笑いのめす「確率論」の存在だ。
そんな確率が、われわれの宇宙をつくった。
つまり、各自に放射状に進むはずの陽子たち・・・すなわち水素原子核たちだが、お互いに離れ合いつつも、どこかにおいてはくっつき合うという可能性、すなわち確率も持ち合わせてたのだ。

つづく

※1 質量、位置、方向と速度の初期値が未来を決定づける、という運命論。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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世界のつくり/天体編・2

2023年06月25日 06時17分31秒 | 世界のつくり

2・時空間の誕生って

針先ほどの特異点から広大な時空間をこじ開けるのは、質量を得た素粒子にそそのかされた重力場だ。
一般相対性理論によると、質量を持った物質の周囲の時空間はゆがみ、そのゆがんだ座標から正常な座標への加速こそが重力・・・というものなんだった。
わが推し説は、これを逆に解釈する。
つまり、時空間があらかじめそこにあって、その環境内に重力という現象が存在するんじゃなく、重力という「質量が生む違和感」こそが時間と空間の正体なのかも、と。
この自説によると、物質を生み出すクォーク場に、質量を生み出すヒッグス場が絡めば絡むほど、特異点はねじくれ、違和座標から正規座標への乖離は甚大なものとなり、その容積に等しい時空間が開かれていく、ということになりそうだ。
一方で、クォーク場はグルーオン場と相互作用して、陽子・中性子を産み落とす。※1
これは正確には、クォーク・反クォークとグルーオン・反グルーオンが、陽子・反陽子と中性子・反中性子を産み落とし、すぐさま相互作用して対消滅する、ということだ。
が、前回に書いたように、反物質を漉し取って物質のみをこちらサイド(われわれの世界の宇宙空間)に余らせるボソン場の振る舞いがある。
このために対称性は破られ、物質であるところの陽子と中性子のみが、耕された時空間に大展開していくわけだ。
ところが、中性子の半減期は15分と短く、そのほとんどが崩壊して陽子に変身し(ついでに電子とニュートリノを放出)、この世界は陽子・・・すなわち、水素原子核で満たされるんである。

つづく

※1 クォーク三つがグルーオンの核力で接着されたものこそが、陽子と中性子だ。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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世界のつくり/天体編・1

2023年06月20日 10時11分25秒 | 世界のつくり

1・ビッグバン直後って

ビッグバンが起きて、すさまじい高温の「点」から素粒子が・・・ここではクォーク(物質の種)とグルーオン(クォーク同士を接着する係)が飛び出したんだった。
さらにヒッグス粒子がこれらと相互作用して質量を与えると、相対論(重力理論)的な時空間がゆがみまくる。※1
そんな特異点のゆがみそのものが「未来へ向かう時間の一方通行ベクトル」をともなう「宇宙空間のひろがり」となって、シン世界を耕しはじめる。
宇宙の創生、ってわけ。
さて、膨張を開始した直後の小さな小さな宇宙空間は、煮えたぎる素粒子のスープだ。
超高温で、超高密度。
だけどここで「温度が高い」と表現する事象は、もちろん空気があたためられてアチーということじゃない。※2
波動関数の弦がギンギンに震えまくって、時空間が途方もないエネルギー塊になってる、って意味だ。
その中で、おびただしい素粒子が反素粒子と対になって生成されたり消滅したりしてる。
ところが、ここで鏡映しになるはずの(パリティ)対称性は、「弱い力(粒子を崩壊させる)」によって破られるようだ。
素粒子は、各自に右巻き、左巻きという「スピン」なる性質を持ってるんだけど、弱い力には好みがあって、この両方を均等に扱うというリベラルさに欠けてるんだな。
その結果、世界に運命づけられたはずの「物質と反物質とはピッタシ同数で」「どちらか片方のみが世界に居残ることはできず」「したがって生成されたすべての素粒子は必ず反素粒子と対となって消滅し」「原理的に宇宙は永遠に無の状態である」という約束ごとが破られたんだ。
かくて、100億個に1個という割り合いで物質がこちらサイドに取り残され(物質100億個のうちの99億9999万9999個は、反物質99億9999万9999個と反応して消えてしまい、残りの1個が物質世界を構成しはじめた)、晴れて「形ある世界」が誕生する運びとなるんである。
計算違いで渡されるおつりの小銭を集めたら、チリツモで家が建った、ってところか。

つづく

※1 重力とは、相対性理論によれば、質量の周囲の時空間がゆがむ、という現象だ。
※2 空気そのものがまだないので。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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