裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/意識編・15

2024年04月25日 23時38分14秒 | 世界のつくり

15・実体の世界、って

さらに数億年もかけた進化を経て、彼は全身にくまなく神経網を張りめぐらせた。
触れて外界の様相を感じ取ることができる、センサーのネットワークだ。
情報を集積して総合する感覚中枢(脳機能)はまだ未成熟とはいえ、外界からの刺激に対する自動的な「反射」「反応」が可能になった。
彼の感覚の源である「タッチ」は、「観測」と言い換えることができる。
観測は量子場の波動を収縮させる・・・とあなたは思い出してくれただろうか。
量子力学の見解では、観測行為が波を粒子に実体化させるんだった。
要するに、それまで茫洋とした波の重なり合いと作用の応酬だった世界が、突如としてひろがりと厚みを持ち、物理的な質量を持ち、形となり、手応えとなり、物質世界となって、彼の前に立ち現れたんだ。
そのカラクリは、(何度も、何度も、なんっ・・・ども説明して恐縮だけど)こうだ。
物質の素である素粒子・クォークが、波から観測収縮して姿を変え、いわゆる「つぶ」になる。
クォーク同士を引きつける力の素であるグルーオンが相互作用し、陽子と中性子を形づくる。
それら数個が集まって原子核になり、電子が引き寄せられて原子になり、さらに複数が集まって分子になる。
分子は、個々の原子核に連れ立つ電子と光子とのやり取りから、電荷をポテンシャルとして持ってる。
その電荷同士の反発力が抵抗となり、いわゆる「手応え」が発生する。
いや、手応えが発生する、という表現は上出来だが適切とは言えず、彼は「電荷を持つ彼自体と他者の電荷との反発力によって、手応えという感覚を想起する」ことができるメカニズムを発明した、としよう。
したがって、彼は物質を、質量を、時空間を、世界を見つけたり、元々あったそれを掘り起こしたわけじゃなく、自発的に内的世界につくり上げたんだ。
周囲からの情報が示唆する意味不明の様相を自分なりに解釈して図式化し、認識できる形に仕立て上げたんだ。
波打つゼロ次元にすぎなかった世界を、彼は感覚によってタテヨコ奥行きと時間を与えて手応えある実体に描き起こし、彼自身をその中心に位置づけるという大仕事をやってのけた。
彼は波が交差するのみの無の淵を脱し、確かな足掛かりを得、手探りを開始し、外にひろがる世界の感触を「神経系を走る信号で」理解しはじめた。
まだ無意識のままに。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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