裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/宇宙編・12

2023年03月30日 10時42分17秒 | 世界のつくり

12・いったいこの世界って

まったく、これは深刻すぎる問題ではないか。
波が観測によって収縮し、位置を持ち、その際にはじめて物質が実体を獲得するという「観測問題」に、ふりだしはあるのだろうか?
生まれたばかりの宇宙空間に、観測者は存在しそうにない。
観測できる者がいるしたら、それは絶対者、超越者・・・すなわち「神」だが、そんな絶対者が世界をあまねく観測して物質の実在が開始されるのだとしたら、そもそも波動関数の収縮に人類その他の観測は必要なくなる。
つまり、その頃には物質は存在せず(ついでにこの背理法は神が存在しないことも示すようだ)、ただ波があるばかりだったのだ。
ビッグバン直後、そこにはただエネルギーがあるのみだったのだ。
目に見えるものはなにもない。
逆に、何者かが目で見る際にはじめて目に見える形で姿を現すのが物質なのだから、これは堂々めぐりの迷路だ。
物質を存在させるには行為者が必要で、行為者を存在させるには物質が必要なのだとしたら・・・これはもう科学ではなく、哲学の問題になってくる。
波はいつ、どうやって、つぶの形式を得るのだろうか?
・・・ところで、音速を特定したマッハさんという人物がいる。
このひとはこう言う。
「目に見えるものだけが実在する」と。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園


世界のつくり/宇宙編・11

2023年03月24日 07時27分22秒 | 世界のつくり

11・観測問題って

こうして、できたての宇宙空間に「つぶとしても解釈可能な波」が満ちることになったわけだ。
満ちる、と書いたけど、実際には宇宙空間にはなにもない。
あるんだかないんだか、わからない。
なにしろ、すべては波なんだから。
そしてその波はまだ、つぶに変身させてもらってないんだから。
ただ、宇宙空間全域に波が満ち、沸き立って、出現と消失を繰り返してることは確かなようだ。
ビッグバンの際に放たれた超高エネルギーの光と熱は、宇宙がふくらむにつれて弱く、暗く、か細く薄まり、やがて心細い波長のマイクロ波の背景放射となって・・・要するに宇宙空間を文字通りに満たす舞台背景となって、あまねくゆき渡る。
そんな中に、物質の種とも言うべき陽子が、電子が、ニュートリノが散りばめられた。
これらはみんな、波動関数に従い、位置を持たないで確率だけで存在してる。
要するに、数値だけを与えられた状態で、われわれ人類の目には見えない波として展開してる。
・・・いや、今のレトリックは、永遠のジレンマを含んでる。
なぜなら、波は「われわれ人類の目に見えた瞬間に」つぶに変身するのだから。
逆説すれば、波は「何者かに見てもらえない限り、永遠に波のまま」の姿でいる。
量子のこの観測問題は、卵が先かニワトリが先か、という問い以上に奥深い謎を持つ。
観測が先か?物質が先か?
すべては生まれた。
が、その問題を解決しないことには、いかなる実在も生まれられない。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園


世界のつくり/宇宙編・10

2023年03月15日 08時52分25秒 | 世界のつくり

10・時空間って

物質を含む波のエネルギーは、最小単位の整数倍だ(つぶ状なので)。
その振幅には大きさが定められてて、中間の値を取ることがなく、ある数値から別の数値に、ぴょんっ!と飛ぶ。
これは言い換えれば、空間にも最小単位がある、ってことだ。
見てきたように、空間は素粒子のポテンシャルが特異点をゆがませてつくったものなんだから。
空間にも、刻んで刻んで刻みきった、「それより先がない」いちばん小さなパーツがあるんだね。
さらに、あらゆる波のエネルギーの数値が飛び飛びということは、その間の時間もまたつながってない、ということだ。
映画のフィルム一枚一枚の間が途切れてるのと同じ理由からだ。
時間が連続的じゃないなんて(つまりつぶ状だなんて)信じられないことだけど、これもどうやら本当のことらしいよ。
まったく、ぼくらの世界の根本原理ときたら、直感に反することばかりだ。
さて、ずっと後の世界でぼくらを構成してくれるはずの陽子たちは、宇宙空間のへりを外へ外へと開墾しながら飛びつづけてるんだった。
ちなみに、同素性で生まれた中性子たちは、たった15分の半減期しか与えられなかったせいで、大部分が崩壊して陽子に姿を変えてる。
生まれたてのこの頃の宇宙の全空域には、ほとんど均等な割り合いで水素原子核が配置されてたんだ。
エントロピーが最小値の世界って、なんて整ってるんだろう。
これをどんどんと散らかし、偏らせ、エントロピーを増大させて、極端な造形を進めていくぞう。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園


世界のつくり/宇宙編・9

2023年03月14日 07時32分35秒 | 世界のつくり

9・ビッグバンって

おびただしい数の陽子(と中性子)が、重力のポテンシャルで周囲をゆがませ、ゼロ次元をこじ開けはじめた。
うがたれた針先ほどの小穴は、特異点という「世界の新規オープン地点」であり、ぼくらが生きるこの時空間の萌芽だ。
その一点に、後の世界を構成するすべての物質が集中する。
エントロピーが最小値にリセットされ、瞬後、時空間が爆発的に開いていく。
電荷を+に設定された陽子たちが、ものすごい反発力で飛び散ったんだ。
どっかーん!!!・・・と音は鳴らなかった。
だって、空気がまだないからね。
その代わりに、すさまじい光と熱が発生した。
あらゆる種類のエネルギーの開放、あらゆる種類の波の放射散開だ。
飛び散った陽子たちの質量で、時空間はどんどんとねじくれながら耕されていく。
宇宙の拡大膨張が開始された。
ただの点だった時空間の穴は、ひろがりとなり、奥行きとなり、要するに容積となって、宇宙のふところを巨大な「スペース」へと膨らませていく。
エントロピーが不可逆な増大(エネルギーの散らかり)をはじめ、過去から未来という時間の方向が定まった。
ビッグバンという奇跡が起き、ぼくらの世界が誕生した。

つづく

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世界のつくり/宇宙編・8

2023年03月13日 10時00分35秒 | 世界のつくり

8・宇宙開闢(かいびゃく)って

なにもないところに、ぴょん、とクォークが出現した。
ところがそこに、同時に出現(対生成)するはずの反クォークが・・・ペアで対消滅してくれるはずの相方である反物質がいなかったんだ。
これじゃ、表舞台から姿を消せない・・・というか、舞台裏にはけることができない。
こんな境遇のクォークが、どういうわけか舞台上におびただしく取り残された。
あなたは、物質を見たことはあっても、反物質は見たことがないはずだ。
反物質は実在するし、実験によってつくり出され、観測されてもいる、れっきとした実体を持つモノなんだけど、この世界では(物質と比べて)圧倒的に不足してるんだ。
どうやら「反物質との勘定が合わなくなった物質で満たされた世界」が、ぼくらのいるこの時空間のようだ。
というわけで、なにもないところに(時間も空間もないゼロ次元だ!)、そのときなぜかクォークが存在するはめになった。
こうなるとクォークは、三つ集まってチームをつくり、グルーオンの媒介でくっつく。
くっついてできた陽子(と中性子)は、ヒッグス粒子と相互作用して、質量を手に入れる。※1
質量あるところに、重力あり。
おびただしい陽子と中性子は、グラビトンと相互作用して重力を得、相対性理論を発動させる。
すなわち、時空間をゆがませはじめる。
ところが、ここに時空間はない。
逆だ。
このゼロ次元をゆがませて生まれるものこそが、時空間だったんだ。

つづく

※1 質量を手に入れるのはクォークで、順が逆だけど、このへんはわかりやすく物語仕立てにしてると思って許してちょうだい。

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世界のつくり/宇宙編・7

2023年03月12日 08時36分44秒 | 世界のつくり

7・世界創造って

量子場は、表舞台と舞台裏との二面性を持つ。
世界は陰と陽に分かたれてて、明らかな境目が存在するんだ。
その両サイドは、描像が反転した鏡面のようにそっくり対照なつくりになってる。
・・・いやいや、だから、待てって。
オカルトと思わず、この話もまた純粋な数学的解釈(つまり最新の科学知識)なんで、とにかくだまされたと思って、そういう画づらを思い浮かべようではないか。
つわけで、そこからはじまる世界誕生の物語なんである。
むかしむかし、138年前から奥の昔には、この空間反転はバランスが取れてて(つまり非の打ち所のない鏡映しになってて)、完全な平衡状態にあったようだ。
その静穏な世界には、なにもないし、なにも起きない。
収支計算がパーフェクトなんで、アソビが出ないんだな。
超安定な、エントロピー最大値のフラット世界だ。
ところがあるとき、なんらかの拍子で対称性が破れた。
舞台裏での在庫管理が甘かったんだろうか、その鏡写しとなるべき表舞台に供給された物質と電荷に余りが出たんだ。
表舞台に飛び出した物質は、同じ数だけ飛び出す反物質と反応して、対消滅(裏舞台に引っ込む)するはずだった。
電荷もまた、同数の+と-とで相殺され、どちらかが鏡面の片側に取り残されるなんてことはあり得ないはずだった。
ところが、それが起きてしまったのだ。
このとき、すさまじい世界創造の作業が開始された!

つづく

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世界のつくり/宇宙編・6

2023年03月08日 07時21分52秒 | 世界のつくり

6・138億年前って

むかしむかし・・・すごくむかしの、めちゃめちゃチョーむかし。
昨日もない、さっきもない、つまり「これよりも前」がないくらいの途方もないむかし。
これから時間をスタートします!という、いっちばん古いむかしの話だよ。
それは、138億年前。
世界には、なんにもなかった。
というよりも、世界自体がなかった。
そこには大地も空もないから、ひろがりも、奥行きも、上も下もない。
その頃には、まだ時間も動いてない。
そもそも、「そこ」という場所がないし、「その頃」という瞬間がない。
なんにもなんにも、なんっ・・・にもない。
無、だ。
ところが、その裏側には、すでに場があったんだ。
ぐらぐらと煮え立って波打つ、幾重にも折り重なった、そろそろあなたにもおなじみとなった、量子場が。
時間も空間もないところにそんなものが?とけげんに感じるかもしれないけど、まあここはひとつ、SFの世界で言うところの異次元みたいなやつだと思ってくれたらいい。
その場が、あるとき突然に世界を創造したんだ。

つづく

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世界のつくり/宇宙編・5

2023年03月07日 08時45分02秒 | 世界のつくり

5・物質って

素材が集まったところで、ぼちぼちとこの世界を構築していきたい。
さて、世界の所在に先行して、場というものがまずあるんだった。
場は、何枚も折り重なり、繊維を絡み合わせて波打つマットだ。
その中の一枚、クォーク場(の波動関数)が大きく波頭を突出させ、三つのピークからクォークを生み落とした。
最も小さな物質のかけらとも言える波のピース・・・つまり素粒子が三つ、概念上のひろがりである場からこちらの実在世界へ、独立を果たしたのだ。
すると、クォーク場と重なったグルーオン場が反応し、高い波をつくってクォークと相互作用を起こす。
接着剤の役目をするこの素粒子は、クォーク三つをくっつける。
陽子・・・すなわち水素原子核が誕生した。
過程の後先についてはごめんなさいだが、ここにさらにヒッグス場が反応し、出来たての物質に質量を与える。
質量あるところに、重力あり。
グラビトン場がすかさず波のピークを重ね合わせ、引力を与える。
この部分を一般相対性理論は、「物質は周囲の時空間をゆがませて場(マット)にくぼみをつくる」と言い表したんだった。
さらに光子場が電磁気力を与え、水素原子核は+電荷を持つ。
その電荷に電子場が反応し、−電荷を持つ電子と結んだ水素原子核は、晴れて水素という原子のユニットを構成するに至る。
波同士の相互作用だけで、ひとつの元素ができた。
だんだんと世界のつくりが見えてきたところで、いよいよ宇宙の開びゃくの物語を具体的に展開していきたい。

つづく

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世界のつくり/宇宙編・4

2023年03月06日 04時03分53秒 | 世界のつくり

4・エントロピーって

あと、宇宙の根本原理で知っとかなきゃなのが、「エントロピーの法則」ね。
世界の大きな流れは、この法則にあらがえないことになってるんだ。
この約束ごとを平たく言えば、「熱は、冷める」ってこと。
「まとまったものは、散らかる」と言ってもいいし、「パワーを使えば、ポテンシャルは失われてく」と言ってもいいし、いちばんわかりやすく言えば、「あるものは、なくなる」ってことかな。
重要なことは、「今あるものは、未来になくなる」わけじゃないってこと。
ここでは、逆のレトリックが必要だ。
あるものがなくなってく過程こそが、過去から現在、そして未来、という不可逆の時間をつくってるんだ。
エントロピーこそが、時間の方向を決めてるわけ。
エネルギーが仕事をし、熱いものが冷えていき(要するに、素粒子の元気がなくなり)、複雑な構造物がなめらかに崩壊していくさまを、「エントロピーが増大する」という言い方で表す。
エントロピーの増大は、閉じた系では反転するように思える。
例えば、宇宙のチリが集まってアッチッチの熱を放出する太陽を練り上げ、ブラックホールを中心に星々が集まって銀河を形成し、知的生命体が文明社会を築くプロセスは、まとまったものは散らかる一方!としたエントロピーの法則に、直感的には反する。
だけど、そうした閉じた系の内側で減少したエントロピーは、その外側で必ず増大の形で埋め合わせられることになってる。
時間が過去に向けてひたすら一方向に進むのは、エントロピーは増大する一方、という法則に世界が厳格に拘束されてる、って意味なのだ。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園