マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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榛原萩原・玉立の水口マツリ

2018年03月19日 09時49分22秒 | 宇陀市(旧榛原町)へ
榛原萩原(はぎはら)の小鹿野(おがの)のごーさん札を見届けて県道に戻る。

次の信号待ちの玉立(とおだち)橋から下を見れば苗代場が2カ所もあることに気づく。

橋の真下であれば見つからなかった位置外れの場である。

遠目だったがお札を立てているように見えた。

これはもしやと思って信号を右回り。

すぐさま右に入る下り道に沿って車を寄せてみる。

膨らみのある道の端に車を停めて歩く。

下っていって近づいてみればアタリ!だった。



その地は榛原萩原(はぎはら)にある玉立(とおだち)地区。

小鹿野の北隣にある村であった。

苗代の水口に立ててあったお札はこれまで見たことのないような文字。

しかもその文字数がとても多いように思えた。

その近くに、畑作業をしていたご婦人に声をかけたら、うち畑だという。

畑の一角に苗代を作って立てたお札は・・。

1月3日、村にある日蓮法華宗青龍寺で行われたウルシ棒たたきのランジョー作法である。

その行事名は「難除」。

「なんじょ」と発音する。

村の初祈祷に奉ったお札を持ち帰って保管する。

そして、そのお札は4月半ばに作った苗代場の際に立てる。

そう話してくれた婦人だった。

ランジョー叩きに用いられる木の棒は漆(ウルシ)の木。

ウルシの木であれば被れる人もいる。

婦人もそうであるように、わざわざ採ってきたフジの木の皮を剥いで立てたそうだ。

時間的に余裕もあればイロバナもするのだが、介護の仕事に就いているので、戻ってくる時間も遅くなり、なかなか時間の確保が難しくて・・、と話してくれた。

そういう婦人が立てた日は前週の4月9日の日曜日だったそうだ。

お仕事が休みの日にしかできない畑仕事である。

他にもしている家がありそうだ、と思って散策がてらに付近を探してみたら、2カ所の苗代田に見つかった。

すべてではないが、奈良県内で行われている農耕の豊作願いをしている地域がある。

豊作願いの在り方は苗代を作ったときに立てるお札などだ。

何年にも亘って県内各地の調査をしてきた。

ある所にはあるが、無い所(していない)方が圧倒的に多い。

お札もあればナエノマツもある。

場合によってはイロバナだけの場合もある。

苗代があればその場を覗いてはモノがあるのか、ないのか探してみる。

有ればそのお札とかナエノマツとかを奉る、祈祷する上流工程を探す。

上流工程は寺や神社の年中行事である。



その一つが見つかった。

場所は宇陀市榛原萩原の玉立(とうだち)地区である。

なにげに玉立橋から見下ろした田んぼに白いモノがあった。

それを確かめたくて降り立った。

お札は枯れた竹に挟んで立てていた。

田主を探した。

少し歩いた所におられた婦人に尋ねた。

それは私が立てたという。

村の寺行事に「難除」と呼ぶ正月の初祈祷がある。

その行事で祈祷されたお札はこうして苗代を作った際に立てて豊作を願っていた。

玉立橋から見下ろした苗代田以外にもう一カ所が見つかった。

先ほど拝見したのは橋の西側。

今度は東側であるが、距離が離れているせいか、白い小さな点にすぎない。

下って、その場所がどこであるのか歩いて探してみたら見つかった。

時間帯は午後6時であるが、明るめに撮っておいた。



スズメ除けのバルーンが風に揺られてひゅん、ひゅん。

ここはネスカフエの空きビン利用にイロバナを添えていたが、花の種類はわからない。

竹を割いてお札を挿していた。

判読できる文字は「南無」に「大日」、「二聖」、「雨」などである。

文字がやたらと多い願文はこれまで拝見した県内事例の中には見られないケースだ。

始めに拝見した苗代田におられた婦人が云った。

お札は村寺の日蓮法華宗青龍寺で行われた「難除(なんじょ)」で祈祷されたお札。

いずれは寺行事も取材しておきたいと在地を探してみる。

それほど遠くない地に寺があった。

道を隔てた向こう側にも苗代があった。



白い幌を被せているからすぐにわかった。

その水口に立ててあったお札。

先に拝見した2例とはまったく異なる在り方である。

水苗代に藁束を横たえる。



その藁束に挿した棒は4本。

お札を挟んでいるのは竹だが、その両脇はウルシ棒であろうか。

後日に伺った田主の話しによれば、かつてはウルシ棒であったが、被れることからフジの木に替えたという。

その横の1本の竹は固定するためにある。

特に決まりはない在り方だという。

イロバナは竹筒。

そういえば始めに拝見した処で婦人が云った。

忙しくてイロバナをする間もなかった・・・。

なお、庚申講についても教えてくださった。

ただ、参列されていないので詳細はわからないという。

講中は玉立に2組あるという。

上(かみ)は6軒の講中で下(しも)は3軒。

閏年の庚申講は、まず始めに講中のヤド家に集まって営みの餅搗きする。



塔婆を準備して日蓮法華宗青龍寺に場を替える。

そして、僧侶に塔婆の願文を書いてもらう。

いわゆる塔婆ツキである。

それから再び講中のヤド家に集まって営みをしていると聞いて、是非訪れたいと思った玉立・日蓮法華宗青龍寺の行事である。

(H29. 4.14 EOS40D撮影)


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