マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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木津川市加茂町銭司のオニ焼きとんど

2024年08月05日 07時47分53秒 | もっと遠くへ(京都編)
10日のこの日は祝日の成人の日。

その日に集まってきた木津川市加茂町銭司(ぜず)の人たち。

朝の早い時間帯にとんど焼き行事が行われる。

集合地は、銭司の公民館。

かつては、宮座それぞれの西座・東座ごとに、とんど場で行っていたが、今は公民館の駐車場に移った。

本日も同行取材される写真家K氏とともに撮影に入る。

集合時間帯は、午前7時。

ここまで来る時間帯は、まだ早い。

周辺の畑地は、うっすら白ぽくなっていた霜降り状態。

冷気が下りてきた午前7時前。

しばらくしてから、銭司の人たちがやってきた。

二人組の女性は、ご近所さんと連れ立ってやってきた。

到着と、同時に動いた女性。



もってきた輪っか締めのしめ縄を、ここに置いた。

躊躇うことなく、ロープを印のそこに置いた輪じめのしめ縄。

実は、先に置いていた1本の輪じめのしめ縄があるから、気づいたのであろう。

二日前に立てたとんどの櫓から、少し離れた位置に、なぜ置くのか。

とんど焼きがはじまってからわかった、なるほど・・・



二人の女性が立つ後ろに立てていた子どもたちの名前入りの青竹。

のちほど登場するが、ソレ以外にも数本立てている。

これも後ほど、トンド焼きがはじまってから知る銭司の在り方。

午前7時半。

直前に動いた一人の若者。



トンドの火点け役は、今年の厄祓い、或いは年男かもしれない。

火点けのタネ火から広がるとんど焼き。



お家に正月さんを迎えたしめ縄は、もちろん何らかの用途に使われたと思われるダンボ-ルも焼く。

そのとんどに、一本の竹。

よくよく見れば名前が見える。



その名は、女性が立っていたすぐそば。

8人の子どもたちの名前入り青竹。

うち、一本に同姓同名は見逃せなかった。

これは、どうことなのか。

これもまた、後に分かった名前いりの竹。

青竹でなく色褪せた枯れ色の竹。

竹は、時間が経つにつれ枯れ色に変色する。

銭司の人たちに伺った名前入りの青竹。

後ほど行われる名前入りの青竹は、とんどにくべて焼きを入れる。

ある程度の状態になれば、貯水池脇にある大きな石にめがけて叩き割る。

その竹は、ナタ道具で縦に割く。

先っぽを三ツ割に、家からもってきた餅を挟んでとんどの縁において焼く。

香ばしくなった餅を食べたら、歯が強くなる。

いわゆる歯固め習俗であろう、と思うが、ここ銭司ではとんどで焼いた餅を食べたら虫歯にならない、といわれているようだ。

とんどに焼いた名前入り青竹は、ナタを入れて一枚に・・

その竹は、家に持ち帰り、玄関や勝手口に一年間も置く。

つまりは家の守り神。

一年間もお家の無事を守った竹は、護符と同様。

とんどで燃やすのであった。

だから、この一枚はシャッターを押してなければ、その一連が見えなかったのである。

ふと、疑問を感じたときこそ、シャッターを押す。

それが記録になるのである。

奈良県内に実施されている大とんどには、このような行為は見られない。

だからこそ、この一枚は暮らしの民俗の一例になる。

ちょっと、先行しすぎた。

銭司の大とんどは、これ以上には広がらないが、消防団の消防車は、いつでも出発できるよう、待機していた。

一人の男性が、とんどに近づく。



手にもっているのは、おそらく名前入りの枯れ竹であろう。

とんど焼きに、集まってきた銭司の人たち。



とんど場は、丁度の中心位置であることがわかる。

まだまだ燃やすものがいっぱいある。

神社の門松もたくさんある。



とんどの周りに才木も並べていく。

とんどの火点けからおよそ30分後の午前8時ころ。

とんどに燃やしていた青竹を引き上げる。

青竹表面に焦げ目。

煤のような焦げ目になった一本を引いた。

そして、おもむろにはじまった丸太の青竹をがっちり。



両手で持って大鉞(おおまさかり)を振り下ろすように・・・

その動作は、まるで薪割りのカタチ。

そこに置いてあった大石めがけて振り落とした瞬間にボン!



青竹が割れ、破裂した音。

とんどに青竹を燃やしていた場合。

突然に起こる青竹の破裂の音。

ボン、ボン爆ぜる破裂音。

圧縮されていた青竹の空気が膨張し、一気に噴き出した破裂の衝撃。

遠くまで聞こえる破裂の音に都会暮らしの人なら腰を抜かすかも・・

こちら銭司の人が振り下ろした青竹。

煙は、竹の節を通り越して噴き出す。

この青竹の破裂が、オニ退治ではないだろうか。

破裂したその丸太の青竹は四等分割り。



ナタを入れて、すぱっと縦に割る。

その様子をみていた火付け役の男児も、同様に青竹割りをはじめた。



実は、かつて子どもがしていた青竹割り。

子どもたちの名前入り青竹割りは、その子どもたちの役目だった。

あるときか、どうか知らないが、子どもでは危険と、判断し大人が割る役目に移ったのであるが、今年は若き年男が割っていた。こういうのは稀であろう。

たまたま今年は、遭遇した青竹割りに子どもも大人も役に就いたのだろう。

年男に代わって父親が、四等分割り。



切れるナタを入れたら、するっと割れる。

うち一本の割り竹の先っぽは三つ割りを入れた。



そう、挟んだ餅が落ちないようにした三ツ割り。

この方法、奈良でも見たことがあるような気がする、つまりハサンバリのカタチである。

とんどの火から離しておく餅焼きの台は才木。



直接の火で焼くことなく、火の熱量によって餅を焼く。

そんなこうしていた午前8時過ぎ。

一人の男性が動いた。



何やら稲藁束から分離している。

きっちりした本数でなく、ザッパに分けた稲藁。

ここでわかった、稲藁の役目。

大とんどでなく、小さいとんどをこれからしようとしていた行動。



ばさっと置いた稲藁を置いたそこは、ロープに輪じめのしめ縄。

そこにふわっと置いた稲藁に火を移す。

葉付きの枝をもった男性は、大とんどに翳して火移し。



大とんどの火をもらった葉っぱに。

その火を稲藁に移したとたんにめらめら燃え上がる。



ある女性は、紙に包んだ何らかのモノをくべた。

徐々に広がる大とんどと区分けした小とんど。



このあり方は、まさか不浄のしめ縄焼きではないだろうか。

銭司とまったく同じように、大とんどの近くに小とんど。

私が住まいする奈良・大和郡山市の豊浦町で行われているニの正月のとんど、と同じでは、と思えた。

豊浦町での小とんどで燃やすのは、トイレにもかけた正月のしめ縄。

そのトイレにかけたしめ縄は不浄なもの。

だから、主たる大とんどでなく、場を外して燃やす小とんどがその役目を負う。

まさか、銭司も同じか。

そのことについて尋ねた小とんんどの民俗。



思った通りの回答は「トイレなど不浄の場にかけたしめ縄は、別途に離れた小とんど場で燃やす。これまでの家屋は、屋外にトイレがあった慣習である。だが、昨今は、新築建替えするなど、屋内にトイレを設備するようなった。だから、そのような慣習はしなくなった」と、話してくれた。

なるほどである。大和郡山の豊浦町は旧家村落。

銭司もまた、同じ旧家の村落。

村々を訪れ、暮らしの民俗を取材してきたが、用を足しの場を借りることが、ままある。

そのお家のトイレを借用した際、ここがトイレだと案内してくれた屋外施設のトイレ。

そこにかけていた輪じめのしめ縄は、今日に拝見した小とんどで燃やす。

お家をリ・フォームした際に、トイレは屋内に移した場合は、しめ縄はしない。

そうか、そうだったんだ。

オニを破いていた女児もまた小とんどに投げ入れて燃やした輪じめのしめ縄。



その横で同時に放った女の子は、もう一人の3姉妹。

小学3年生に妹は幼稚園。



仲のいい3姉妹にも教えられた銭司の小正月行事。



かつて子供が書いた書初めを、とんどの火にあてて飛ばしていた天筆の慣習もあったそうだ。

(R4. 1.10 SB805SH/EOS7D 撮影)


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