「困った人は、困っている人かもしれない」
(松本俊彦『誰がための医者なのか』)
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「困った人」
思考は集合的な承認と合意を取りつけるように
一般化、命題化、言語化をめがけ
身についたルートをたどって着地し、ことばを結ぶ
このルート指定に飽き足らない心がある
飽き足らなさは着地した地平の貧しさの感受に由来する
思考の線形的なルート、予測可能な着地点
このことを留保するには、少し工夫がいる──
たとえば、思考をフックに掛けて壁に吊るし
思考がしばらくどこにも着地できないようにする
線形的な思考の展開を許さないようにスキマを開くと言ってもいい
この状態をキープして思考を回す
思考は着地できない、しかし思考は回りつづける
このスキマに非線形的変化が起こり、複数の視線が出現することがある
この経験が確定された思考のルートと着地点とは別の表象を可能にする
「困った人は、困っている人かもしれない」