鼎子堂(Teishi-Do)

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『蒼の乱』

2014-04-13 04:17:10 | Weblog

昨日(12日)は、午後から、東急シアター・オーブで、上演中の『蒼の乱』を観劇に。
観劇は、4カ月ぶり。


平将門と言えば、死して、怨霊になり、死してその首は、平安の京から、関東へ飛んで、神田明神に祀られた人物として、名高い。
菅原道真、崇徳上皇・・・と共に、崇り神のベスト・スリーには、間違いなくランキングされるであろうこの武将が今回の主役。
その将門の妻で、渡来人の蒼真を演じるのが、天海祐希さん。
この役は、もう天海さん以外、演じるのが難しいだろう。それ程、適役だった。

そして・・・一本気で、野性味あふれる坂東武者を演じるのは、松山ケンイチさん。
このひとは、舞台慣れしていないようで、最初から最後まで、正義漢溢れる純朴な坂東武者を演じてはいるが、どうも、役に負けてしまっていた。ただの力技だけにおわってしまったようだ。
劇団☆新感線という器の中では、異分子だ。主役でありながら、いまひとつ溶け込めない。
この平将門役、難役でもある。
相対する蒼真を引き立てかつ、敵対し、そして愛する・・・といった深みを表現できる役者でないと演じるのが難しいようだ。
単純で、純朴なだけの演技では、完全に青真に、喰われてしまう・・・非常に難しい役なのだ。

劇団☆新感線は、所謂、男の劇団でもある。
女性が主人公という作品が、そう多くはない。
そんな中で、唯一、女性で主役を張れる存在が、蒼真の天海祐希さんだろうと思う。今回は、その稀な女性の主役である。美しくかつ力強く・・・。
前回の『鉈切丸』、『五右衛門ロック』の成海璃子さん、蒼井ゆうさん・・・といったどちらかと言えば、添え物程度(演技力の乏しい?)の女優を、ヒロインに起用するのは、いただけない・・・と常々思っているのだが、『男の劇団』の中で、女優でも主役を張れるという証明をしたのが、天海祐希さんだろうと勝手に思っている。

舞台では、帳の夜叉丸役の早乙女太一さん、太刀影役で、早乙女さんの実弟の友貴さんが、華麗な殺陣で、舞台に華を添える。

常世王/太政大臣の二役で、舞台に重厚な荘厳さを与える平幹二朗さんの存在感は、流石。
姿を現すだけで、場の空気を変えてしまう。おチャラケ?の新感線に格調高さが加わる。常世王の衣装は、リア王を彷彿とさせた。

漂々とした宮廷貴族・弾正淑人役の梶原善さんは、芸達者。
この掴みどころのない公達の酸いも甘いもかみ分けた政治家ぶりを軽やかに演じていた。

伊予の海賊・藤原純友役に、粟根まことさん。このひとらしい冷たさと暖かさが、同居。


今回は、いつもの新感線路線?に戻り、殺陣のシーンが多い。
いのうえ歌舞伎の面目躍如だろう。

相変わらず、正義が悪となり、悪が正義に逆転する・・・或いは、光と影、夫と妻、兄と弟、敵と味方、老獪さと若さ・・・表と裏が、交互に変わり、何が真実なのか解らなくなる・・・。

私は、このドラマを見ていて、思い出したのが、某・国営放送の大河ドラマ『風と雲と虹と』。
平将門役は、加藤剛さん。藤原純友役は、緒方拳さん。俵藤太役は、露口茂さん。
役名は、違うが、帳の夜叉丸(早乙女太一)と同じような役どころのハルアキラに草刈正雄さんという布陣だった。


最後にひとつ。
歴史的な視点からだが、平将門を打ち取ったのは、藤原秀郷(俵藤太)で、劇中では、妻の蒼真が、将門御前を名乗り、敵対する夫・将門が、俵藤太と名乗るのは、少し、無理がある。
地元で、大ムカデ退治の秀郷は、結構、有名人だったりするからね・・・。


上演時間休憩を含め約4時間。
飽きさせることなく、早い展開で、時間の立つのを忘れさせる演出は、さすがのひとこと。