鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『負ける!やめる!あきらめる!:P.ピアソール・著』②~ロージーの話~

2010-05-12 21:02:13 | Weblog
朝方は、雨。そして曇りがちだけれど、晴れ間もあったり、忙しい空。

昨日の続き。

この本は、いま巷で流行の『ポジティブ・シンキング』だとか、『引き寄せの法則(・・・これは、ちょっと違うかも?)』といった自己啓発本に、真っ向勝負を挑んだ本である。

悪性リンパ腫で、死の宣告をうけた著者が、ポジティブになって、病から生還しようと試みれば、試みるほどに、心が深く落ち込んで行くといった体験を語っている。

ポジティブ(肯定的)に物事を考えることが苦手なタイプのひとに、ポジティブになれ・・・って言ってみたところで、それは、無理な話だと思う。
・・・実際、私自身も、
『強く念じれば、希望は叶う・・・』
といった類の本を、何冊か真剣に読んでいた・・・しかし、希望は、一切叶わず、悪い局面に落ち込んで行くだけだった。
・・・もともと、ネガティブ(否定的)な性格だしさ・・・。

だったら、勝とうなんて思わないほうがいいみたいだし。

さて、この本の中に、著者のピアソール教授が入院していた病院に、ロージーという看護助手の女性の記述がある。この話を読んだとき、涙が出てきた。

ロージーは、看護助手だから、安い賃金で、汚い仕事をやらなければならない。
患者さんの吐瀉物や排泄の後始末・・・やっかいな仕事を、ロージーは、陽気にこなしていた。
病室の清掃が終わると必ずこう尋ねる。
『ロージーが出て行く前に、あなたにしてあげられることは、あるかしら?』
特に、用事がなければ、彼女は、軽く会釈をしたあと、ちょっと黙り込む。そしておもむろにこう囁くのだ。
『神様の祝福がありますように。また明日ね。』
ピアソール教授は、彼女に尋ねた
どうして自分の仕事をこれ程までに、愛せるのか?
『この仕事は、ロージーにとっては、遊びみたいなものよ。彼女は、これをやるために生まれてきたの。ロージーがやることをやらないとお医者や看護師の仕事もうまくいかない。ロージーは、自分のやり方で病気を治しているし、そうすることが大好きなの。』

・・・神の領域である・・・と私は、思う。

たいていのひとは、生きるために働かなければならない。だが、そのせいで、ロージーのように天職を果たす感覚が薄れ、面倒な事だと思ったり、キャリアを追求することが第一目的となる。
仕事の見返りには、外来的なものと内在的なものがある。外来的な見返りとは、金銭や地位といったもの。そして、ロージーが得ていたのは、自分以外の人にとっては、なくてはならない価値ある勤めを果たしたことで得られる達成感である・・・と著者は、書く。