伏見・月桂冠大倉記念館前の通り
(前回のつづき)
寺田屋を出るころには、メンバーはもう誰もいませんでした。濠川の柳と酒蔵との雰囲気有る景色を撮りたかったのですが、なかなか余裕もありません。龍馬が逃げて行ったという龍馬通りを左手に見ながら進むと、板塀や漆喰の蔵屋敷が見え、以下にも酒処伏見と云われる景観です。ここは、明治時代の酒蔵を改修した月桂冠大倉記念館です。このあたりまで来ると観光客も随分目立ってきます。入館料300円を払うと、記念のお酒が付いてきました。右側には、試飲や販売コーナーがありました。展示コーナーでは、350年の酒造りの歴史・道具・工程を紹介する資料が展示されていましたが、特に興味を引いたのが、レトロなレッテルが張られた酒瓶や時代の美女が描かれたポスターでした。中庭には、酒造りに使われる井戸の水。こちらは実際に飲むことができました。伏見は古く「伏水」と書き表されていたように豊富な地下水が流れ、上質な軟水に恵まれてきました。その水と盆地特有の底冷えによって名酒が生まれ、繊細でまろやかな味わいは灘の「男酒」に対して伏見の「女酒」と呼ばれるそうです。
この頃、やっとメンバーが揃い、折角なので、中庭のレンガの煙突が見える広場で記念撮影をすることになりました。帰りにおみやげにとワインを購入。時間までに、急ぎ濠川を散策することにしました。川岸には遊歩道が整備され、季節の花であるアジサイが花を咲かせ初めていました。川には観光用の十石舟が係留され、この先に乗り場があるようでした。何枚か写真を撮ると、もう時間となっていたので、あわててバスに戻ると、何と私が最後で少しあわてました。次に向かったのが、本日最後の目的地、東福寺です。
日本庭園を特別愛する私としては、今回のコースに東福寺を入れていただいたことに感謝したい気持ちです。小型のバスは、随分近いところまで来たはずですが、さすがに広大な敷地を持つ東福寺。ここから、通天橋のある拝観受付まで、随分歩いた気がしました。通天橋から眺める紅葉は、京都を代表する観光スポットですが、この木造の橋はよく時代劇のロケに使われます。鬼平犯科帳では、エンディングで秋のシーンに、紅葉を背景に橋を行きかう人々の様子が映し出され、まさに絵になる景色です。通天橋を渡り回廊の階段を上がると、開山堂に出ます。門を潜ると、正面に開山堂、石畳の右側には江戸時代初期に作庭されたといわれる、見事な庭園があります。小さなサツキや、庭石が見事に配置され、杉苔や、季節のアヤメやスイレンも咲き、グリーンの庭に彩りを添えています。左側は、川砂が敷かれた空間となっており、回廊の縁側からはこれらを一体的にみることができます。休みながら大勢の人が鑑賞していました。この開山堂の庭園は、私のお気に入りの一つです。
次に向かったのが方丈庭園です。別途拝観料が必要でした。考えてみれば自由行動となっている今日のコース、拝観料もばかになりません。寺田屋400円、大倉記念館300円、東福寺通天橋・開山堂400円、東福寺方丈庭園400円。ま、京都を巡るなら当たり前のことですが、桜や紅葉のシーズンは、さらに値段が上がって特別料金となり、何か所もまわると、結構な金額になります。
さて、方丈庭園といえば、我が岡山県が生んだ昭和の庭師・重森三玲が作庭した枯山水庭園が有名です。まず南庭、苔寺の枯山水庭園とは違って、石組も大きくダイナミックですが、それらが庭の隅の一部にバランスよく置かれ、まとまった雰囲気を与えています。東福寺の方丈庭園は、全国でもめずらしく、周囲がぐるりと違った異なる形式の庭園が設置されています。廊下を右に回り込むと、そこは北庭、市松模様に敷かれた四角い石の間に苔が生え、それらが一体となってとても斬新な意匠を作り上げています。
華鴒大塚美術館で、「日本文化再発見講座・日本庭園の魅力」と題して、講座が開催されており先日、第1回目の講座を私も受講したばかりでした。講師は、晩年の重森三玲に指導を受けた造園家の岩本俊男さんです。この東福寺の方丈庭園について、どのように解説されるのか、とても楽しみです。
帰りの出発前の駐車場で、万歩計を見たら一万歩を超えていました。久々によい運動になりました。(おわり)
東福寺方丈庭園の南庭 近代庭園の傑作と言われています。