わが家は中日、朝日、毎日、岐阜新聞の朝夕刊4紙と
読売新聞の朝刊を購読している。
忙しいときは、読みきれない新聞が机の上にたまるばかりなんだけど、
今回の女性への差別発言のような事件では、情報収集に威力を発揮する。
朝日新聞の朝刊に、江原由美子さんのコメントが載っていたので
アップしようと思ったんだけど、もう記事が一杯一杯で、
ザンネンに思っていたら、毎日新聞の「夕刊とっておき」は、
「『産む機械』発言に怒っているわけ 」の特集で
江原由美子さんとアグネス・チャンさんと清水ちなみさんの
コメントが大きな記事で載っていた。
朝刊に続いて、毎日新聞ばかりになったけど、
毎日新聞は読み比べても視点がいいのでけっこう熟読してる。
毎日の夕刊をとってる人は少ないので、PRがてら、紹介します。
特集ワイド:柳沢伯夫厚労相に、辞任せよの大合唱
「産む機械」発言に怒っているわけ
女性を機械に例えた「産む機械」発言は、柳沢伯夫厚生労働相の辞任問題に発展した。政治家の失言にはもうなれっこの国民も、今回ばかりは本気で怒った。なぜか。「機械」呼ばわりされた女性3人に話を聞いた。【太田阿利佐、小国綾子】
◇首相への不満も--首都大東京人文学部教授・江原由美子さん
単なる言い間違いを差別発言だと言い立てるのは好ましいことではない。しかし今回の発言には「言い間違い」以上のものが潜んでいる。だからこそ強い怒りが起こったのです。
柳沢さんは「分かりやすくするために機械に例えた」という。しかし例えて分かりやすくなったわけではない。ゆえに例える必然性はなかった。つまり、本音が出た、と考えられます。女性を「産む機械」に例えて「一人頭で頑張ってもらうしかない」ということは、つまりは「子宮一個当たりの産出量を上げろ」にも等しい。男性に置き換えれば「ペニス一本当たりの産出量」でしょうか。これ以上失礼な言い方はないでしょう。
インターネットの掲示板では「『産めない女性は出来損ない』と言われたように感じた」という趣旨の書き込みがあった。柳沢さんはそうは言っていないが、女性はそう言われたと感じてしまう。それほど「産む機械」というのは強い表現なんです。
安倍晋三政権への潜在的な不満もあると思います。女性たちに「なぜ産まないの」と聞くと「正社員になって雇用を安定させてから」という答えが返ってくる。正社員でなければ育児休業も取りにくいから当然です。女性の正社員比率は80年代よりもずっと低くなり、正社員との賃金格差も広がっている。夫に養ってもらおうにも若年男性の雇用も不安定。男性に「なぜ結婚しないの」と聞くとこれまた「正社員になって雇用を安定させてから」という。
それなのに、安倍政権の政策は、長時間労働や格差を是正する方向には向かっていない。その政策責任者は誰ですか。まさに柳沢さんでしょう。
ひとり親世帯の生活保護費に上乗せされている母子加算も廃止しようとしている。安倍政権の「子どもと家族のために」「再チャレンジ」などは言葉は美しいが、実態はうそ臭い。
安倍首相は柳沢さんを「高い見識をお持ちの方」とかばった。それは「私も同じ見識だ」と認めたに等しいと思います。
◇差別で人権侵害--歌手・アグネス・チャンさん
柳沢さんの発言には、怒りより残念な気持ちでいっぱいです。この発言は差別で、人権侵害です。日本で男女平等教育や人権教育が足りない、と世界に示しているのと同じです。
発言は海外のメディアでも大きく報じられています。残念です。日本のすべての男性がこんなふうに思っているわけじゃないのに。私もプライドを持ってこの国で暮らしているのに。
今回の発言は、セクハラやDV(配偶者間の暴力)、女性に対する性的搾取や児童ポルノなどの問題とも全部つながっています。つまり「女性はモノ」という考え方です。女性が人としてではなく、モノとして扱われている社会で、どうして安心して子どもを産めるでしょう。
女性が子どもを産まないのは、出産することで今持つ権利を失うかもしれない、孤立するかもしれない、幸せになれないかもしれない、と不安を感じているから。少子化の一因は女性差別ではありませんか。
子どもは授かりものです。国に「産め」と言われて産むものではない。出産は創造的なアプローチです。決して義務なんかではない。「一人頭」なんて経済的な表現で出産を語らないで。子どもを産み、育てる行為は本当にすごいこと。何もないところに一つの命が生まれる。一つ一つ体験を積み重ね、大人になっていくんです。
命の重さを大切にし、一人一人の女性が認められる社会を築くことこそが、一番の少子化対策だと思います。
私は、日本の社会は眠ってはいないと思う。だからこそ、怒りが沸き起こった。心配なのは、この問題が柳沢さん一人の失言問題で終わってしまうこと。何も変わらないというのが一番良くない。「腹の中で思っていても、言わなきゃいいんだ」という教訓を残すだけでは悲しい。
今回の騒動をきちんと政策につなげてください。そうすることで初めて、柳沢さんの失言とそれに対する人々の怒りに意味が生まれるのだから。
◇許せぬ「機能」視--コラムニスト・清水ちなみさん
あの発言には「オジサンの頭の中を見た!」と思いました。本音を言っちゃったのね、隠しておけばよかったのに、と。「ズボンからシャツが出ちゃってますよ」という感じ。でもあきれたり、笑ったりで済ませちゃいけない発言だと思う。
これまで少子化論議では、いつも女性たちの気持ちがなおざりにされてきた。出産一時金がどうだとか、お金や制度の話ばかり。でも出産や育児は体の外側の問題よりも、内側、つまり気持ちや体そのものの問題が大切。それを政治家はちっとも大事にしてこなかった。
「少子化対策は国の幸せのため。国民の幸せなんて考えてない」と女性たちは薄々気付き、うっ憤を募らせていたんです。「機械」発言は見事にそれを刺激してしまった。「やっぱりそれが本音だったか!」と。
出産するかしないか、働くか働かないか、など立場の違う女性たちが、これほど一丸となって怒ることのできる「失言」も珍しい。すごい発言ですね。
女性たちの怒りを過剰反応と考える人もいる。確かに柳沢厚労相は「女性は機械だ」と言いたかったのではなく「女性は出産という機能を持っている」と言いたかったのでしょう。でも女性が怒っているのは「機械」に例えられたこと自体より、「産む機能」として見られたことに対してではないかしら。
女だけでなく、男もそう。「亭主元気で留守がいい」とか「女は子どもを産んで一人前」とか、夫婦間でも、相手を機能としてしか見ていない人は案外多い。職場でも「女はお茶いれてニコニコ笑っていればいい」とか。特に常日ごろから「機能ではなく、人間性を見てほしい」とモンモンとしてきた人にとって、今回の「機械」発言は許せなかったと思う。
発言について夫婦で話し合ってください。あなたは妻を機能として見てないか、人間性を認めているのか。案外、柳沢さんの失言がのちの熟年離婚を食い止めるきっかけになるかも。
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ファクス03・3212・0279
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■人物略歴 ◇えはら・ゆみこ
1952年、神奈川県生まれ。東大大学院社会学研究科修了。
専攻は理論社会学、ジェンダー研究。
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■人物略歴 ◇アグネス・チャン
1955年、香港生まれ。72年歌手デビュー。
88年、息子を連れての芸能活動で「アグネス論争」に。教育学博士。
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■人物略歴 ◇しみず・ちなみ
1963年、東京都生まれ。青山学院大卒。会社勤務のかたわら、
アンケートで本音を探る「OL委員会」を主宰。
(2007.2.1 毎日新聞・夕刊とっておき)
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柳沢伯夫厚生労働相の問題の発言部分と、江原由美子さんのコメント。
27日、松江市での柳沢厚労相発言の問題とされる部分(出席者による)
では、人口の状況はどうか。平成17年の国勢調査を受けて,18年に年金の人口統計をやるわけです。(中略)特に、2030年に例えば30歳になる人を考えると、今、7,8歳になってなきいけない。生まれちゃってるんですよ、もう。
あとは、「産む機械」って言っちゃ何だけど、装置の数が決まっちゃったってことになると、機械って言っちゃって申し訳ないんだけど、機械って言ってごめんなさいね、あとは産む役目の人が、一人頭でがんばってもらうしかない。2030年はもう勝負は決まっているとよく役人に言われる。
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男性特有の支配感の象徴
江原由美子・首都大東京教授(女性学)の話
機械に油(金)でもやれば勝手にポコッとタマゴを産んでくれる、そんな発想だ。「がんばってもらう」という言葉にも、子どもは女性が一人で産み、責任を持って育てるものだという日本社会全体の心理がかいま見える。
子どもを産む苦しみ、産めないことの苦しみ、産めと強要される苦しみ。そんな人間ドラマが全く見えていないのではないか。言うまでもないが、子どもを産むのも育てるのも男女の責任。女性だけでなく、男性の働き方も見直さないと少子化対策にはならない。柳沢さんが提唱する「残業代ゼロ制度」にも共通するが、男は労働力、死ぬまで働け、女は産む機械という発想が透けて見える。じゃあ産まない女性はで出来損ないですか、という話になってしまうかもしれない。
少子化問題を語るときの男性にありがちな無責任さ、支配感の象徴のような「失言」だ。
(2007.2.1朝日新聞)
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午前中から届きはじめた賛同メールは、100人ほど。
仕事が終わった夕方から夜にかけて、もっとたくさん届くのかな。
柳沢伯夫厚労相の辞任申し入れの呼びかけ
明日の正午に締め切って、それから急いで文書を整えて、
安倍首相に「罷免要求」、柳澤厚労相に「辞任要求」を
速達で送り、厚労省記者クラブと名古屋本社の各社にFAXする予定。
厚労省記者クラブにアポも取ったし、あとは賛同者がひとりでも増えて欲しい。
自民党は、朝から「世論の動向を見まもりたいとか、
野党が問題にしてるだけで、国民の声が聞こえてこない、とか・・・・
さっきは「柳澤厚労相を一致団結して守る」だって。
みなさん、柳澤厚労相並みの見識のようだ。
女性への差別や侮辱の反省はこの程度にして、お仲間を守りたいのだろう。
とはいえ、いったい、だれからだれを守るつもりなんだろう。
盗人猛々しいとはこのことだ。
議会は「言論の府」であり、議員の仕事場は議場である。
各政党はこの問題を政争の具にしないで、
国会の場で、国民に見える場所で、今回の発言をきちんと議論して欲しい。
狭い世界で思惑ばかりの国会に、無党派・市民派の怒りの声を届けたい、
「女は産む機械」発言に怒りのクリックを
明日もまた見に来てね