桑名市の「男女平等をすすめる条例」について、「ジェンダーとメディア・ブログ」に書いたコメントに対し、斉藤さんからコメントがあった。
『・・・・桑名市の例で、合併と条例の扱いについて大変勉強になりました。私の地元の条例にあてはめても参考になるものでした。桑名市は合併による失効状態とみなし、早く、しっかりした上程案を議会に出すようにプッシュすることなんですね。私の地元高岡市の例でも合併のどさくさ紛れにおかしいなと思うことがあり、「条例は合併時に要注意」を広く全国に知らせたいと思い、昨年12月の東大ジェンダーコロキアムでの「ジェンダーフリー」をめぐる企画立案にもかかわりました。おそらく全国で形は違えどチェックしていないと後の祭りということが起きるんじゃないかと心配なのに、どこからも条例と合併に関する議論が出てきません。橋本さんも条例制定運動の旗振り役なんだから、それが合併でどうなるのか、どうなっているのか、条例と合併に関する議論でも積極的な役割を果たしてほしかったのですが、こんな形で反対向いてミスリードとは。条例制定の流れの現況が心配です。
みどりさん、ぜひ条例と合併に関する情報を出していきましょう。』
わたしのブログを読んだ人からも、「来年1月に合併する都城市の条例が心配」とのメールをいただいた。
メールに、こんなお返事を書いた。
『・・・・この条例と合併の問題は、現在は注目されていませんが、この「男女平等」の分野だけでなく、「市民自治」「環境」「教育」などの市民参加型の、条例の今後のゆくえにも深く関係するものです。
せっかく作った制度や条例が、水面下で消されてしまうなど、きっと法律をつくったひとたちにも想定外の(ありえない)ことです。
基本的な自治体のシステムとルールを、議員や学者(行政関係者すら)が熟知していないことと、法をつかって闘う手法を、知らないことによって起きていると考えています。
そもそも、合併によって失効するのは、この男女平等条例だけではありません。
旧市町村のすべての法人格が消滅することに伴い、条例・規則のすべて、特別職職員の全員が失職し、首長も議員も職員も身分を失い、予算(政策)も含めて、自治体システムのすべてが、〇月〇日24時0分0秒を持って、いったんなくなるのです。
それで、合併前から助走している法的合併協議会での決定事項を引継いで、新しい市が、翌日0時0分0秒に立ち上がるのです。消滅するのと誕生するのは、同時です(でなければ、無政府状態のはだかの市民だけが残ることになる)。これが合併というシステムです。
都城市の条例のことは「全国ではじめて『性的指向』という言葉を入れた条例」と聞いたことがありますが、詳しくは知りませんでした。
法的合併協議が合意済みで、「男女共同参画社会づくり条例は、都城市の例を基に新市において新たに制定するものとする」ということなので、法的に、条例は当然、新市に引継がれます。
条例が一票差で成立したということは関係ありませんし、議会勢力がきっ抗していることも、関係ありません。一たん制定・施行されている条例とはそういうものです。その意味では、制定したのは議会かも知れませんが、「条例は市民のもの」です。でもじっさいには、その条例をこころよく思わない勢力が、合併の混乱に乗じて、変則ルールで、条例を改悪したり、消したりしようとしているのです。
それが、桑名市の例です。
その勢力に対抗するには、法的ルールを熟知して、議会や行政を監視し、当事者(その条例が必要なひとたち)が、条例を守っていくことが必要です。桑名市の場合、よい条例を制定したところまでで安心して、学者も市民も、バックラッシュ派のデマや攻勢に腰がひけていたと思います。
友人の小川まみさん(市議)からは、意見を求められればアドバイスしていましたが、『正論』1月号には、名指しでひどい書かれ方をしていて、それは裏返せば、まみさんが現場で孤立無援だったということです。もう少しわたしにできることがあったのでは、と悔やんでいます。だから、これからはこの問題を情報発信し、サポートしていきたいと思っています。
ここで、「条例は政治的圧力でなくすことなどできない」と広く知らせ、「廃止」「失効」と言うデマをとばされている桑名市の条例を、法的手続きのとおりに制定・施行させることができれば、後に続く、都城市の条例にも、大きな影響があると思います。そういう意味で、桑名の条例は正念場です。
わたしは市民ですが、ずっと現場でたたかってきた人間ですので、無党派・市民派議員と政治を変えたい市民とともに、行政法や自治体システムやルールを使って、有効に闘う手法を伝える勉強会をしています。
議員向け勉強会の講師をすることが多いので、他のひとよりは、自治体システムに精通していますし、条例の立案・意思形成・意思決定・施行については、たぶんそこらの学者より詳しいです。(議員だからといって、ルールを知っている訳ではありません。「議員になる」ことと、「議会でちゃんと働く」ことは別物です)。
たまたま、上野千鶴子さんと組んで、『市民派議員になるための本』と、『市民派政治を実現するための本』を出したのですが、それまで、この業界では、無名でした(笑)。
都城市の合併は来年1月とのこと。
法的には条例は引継がれるのですから、想定しうるすべてのシミュレーションをして、対抗手段を考えておかれれば、じゅうぶんに対抗しうる、と思います。その前に、ルールを熟知しておくことが不可欠ですが。・・・・・』
夕方のテルテルさんのコメントは、「たった1行されど1行 」。
『「We」の橋本さんの一行の重大さに気がついた人がいた。私は言われても最初その意味が理解できないというお粗末さだった。寺町みどりさんの感度のよさに脱帽。合併のどさくさに紛れて、「桑名市の男女平等をすすめる条例」をなくしてはいけない。このことはわが町のことでもあるんだと痛感。私を含め、みんなもっとアンテナを研ぎ澄ませようよ!!』
橋本さんの文章を読んで、「おかしい!間違いだ」と直観ははたらいたけれど、これをちゃんと説明するには苦労した。テルテルさんにほめていただくのはうれしいが、最初からすべて知っていたわけではない。佐賀に行く前から、まずITで桑名市の議会の議事録と合併の資料を探した。つぎに法的合併協議会の議事録と合併協定を探し、その解釈のために分厚い『逐条地方自治法』、『合併特例法』の全文を読んだ。いろんなキーワードの組み合わせをITで検索し、地方自治法施行令3条を見つけ、法的&論理的に整合性がある説明ができた時はうれしかった。
ついでに分かったことは、「条例を失効せよ」と決議した旧桑名市の議員たちも、じつは合併と同時に失職(身分を失う)してるんだよね。合併特例法の原則は、「関係市町村の議会の議員全員が身分を失い、新たな議員の選挙を行う」。特例として「全市町村の議員がそのまま在任する」だけ。自分たちは、この合併協定の在任特例で首がつながっているのに、条例だけは失効させろとは、虫のいい話だと思うけど。
ついでのついでに言えば、たとえば、「A議員だけ気に食わないから、合併時の身分を失わせろ」って決議したら、ひとりだけ新市の議員になれないのかなぁ。そんなわけないでしょうに。気に食わない職員だけ失職したままにもできないのも同じ。新市長が条例を上程しないのは、抵抗勢力の政治的圧力に屈しているだけ。だから、市民の側の運動をつくって世論を盛り上げ、市長にちゃんと法的ルールを守らせないとね。
今までで、最長のブログ。
長いときらわれるから、かるーく書くことを原則にしてるんだけどね。
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