大英博物館の入り口では、厳格な荷物検査が行われていた。大英図書館でもあったが、入場者数が多いので入るまでに時間がかかる。
【寄付で運営される博物館】
かつて(30年ほど前)ロンドンに寄った時のこと。地下鉄を降りて、予備知識もなくふらりと寄った大英博物館。
するといきなり目の前に、かの有名なロゼッタストーンが。そのほか、中東の石像の数々が高い天井が特徴的な建物の一階に、ずらりと並んでいました。解説はほとんどなく、開放的な空間に戸惑う私。
これら本物の風情を醸す物体を横目に、チケット売り場を探したのですが、どこにも見当たりません。日本では一流美術品はとにかくチケット買わないとみられないという常識に完全に毒されていて、まさか無料とは考えもつきませんでした。そのため、本物を探し求めて大英博物館の一角だけをさまよって、立ち去ったのでした。
以来30年。入場料を払って来日する大英博物館展を見ては、ため息をつく日々。
それが今日、終わるのです。
朝10時に行くと、私の記憶とは異なっていて、入口では厳格な荷物検査のテントがあり、そこを通過するために行列ができていました。
相変わらず入場料はなし。ただ、寄付ボックスがそっと置かれていて、「気持ちをいれて」と書かれていました。
寄付で社会を回す文化と知らなかったかつての私が気づかなかったボックスに、気持ちのお金を投じて、ようやく周りを見渡す気分になれました。
かつてのようにスーッと道を歩くようには博物館に入ることはもはや治安が許さず。文化が囲い込まれた空間に、かつてを知る人は違和感を覚えることでしょう。が、悲しいことに日本の常識にどっぷりつかった私には入場を意識することが、館内の価値を高める大切なセレモニーなのだと自覚しました。
博物館は思った以上に巨大でした。今日のうちに全部を見るのは不可能なので、まずはアジア系の部屋に絞ってみることにしました。
(つづく)