雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

昆明で見かけた「日本」

2006-03-29 12:13:44 | Weblog
私は一昨年から1年間、5歳の娘と夫とともに中国の西南部にある雲南省昆明市で過ごしました。そのとき感じたことや、おもしろい発見などを書いていこうと思います。おつきあいください。

【テレビの中で】
ある日、中国中央電視台(国営テレビ)を見ていたら、女性リポーターが「こんにちは」と日本語で呼びかけてきた。続いて中国語で「今日は日本の茶道にチャレンジしてみましょう」背景には富士山と桜が映った大パネル、彼女の前には羽織、袴姿で畳の上に「茶道家」の男性が正座している。さっそく男性は茶釜に沸いた湯を竹の柄杓ですくい、静かに茶道用の茶碗に注いでいく。茶せんを碗の中で動かす姿は、なかなかのものだ。やがて茶碗をささげ持つように両手で持つと、お辞儀してリポーターに手渡してしまった。感激したリポーターは「日本独特の静や繊細さが伝わってきますね」とコメント。次にチャレンジした「日本舞踊」では、袖の長い和服らしきものにたすきがけをして、なんと盆踊りを始めた。
【世博園のおみやげ】
昆明で1999年に開催された世界花博の跡地に日本コーナーを訪ねると、奇妙な「日本文化」を発見できる。満開の桜に富士山の写真パネルと簡易茶室の前でペラペラの着物を着て写真を撮らせてくれたり、「日本菓子」とかかれたコーナーにはイタリアかスペインあたりのカラフルなグミが売られていたり、日本産とかかれたみやげものコーナーには聞いたこともない銘柄のシェーバーなどが売られていて、それらが他国の展示と比べてぬきんでて売れている。だがそのみやげものコーナーには何一つとして日本のものはなかった。
【おしゃれ? な日本語】
街を歩くと、漢字と漢字の間にひらがなの「の」が書かれたものをよく見かける。食堂の看板「鮮の味」、動物の生態を扱ったDVDの背表紙「動の物」などである。日本人が、あいまいにフランス語の「de」を使うのと同じ感覚らしい。昆明っこで日本語学科の大学生にこの話をしたら、「『の(no)』の発音は、雲南語も日本語と同じ意味です。中国語の「的(de)」よりも発音が近いし、おしゃれなので昆明の看板に書かれることが増えました」と教えてくれた。
スナック菓子などの包装に日本語を見ることも多い。グリンピースを甘辛く味付けして揚げた菓子には「グリニヒス」、ちょっと高級そうな餅菓子にはちょっとずつ間違った日本語の説明書がつく。スーパーでは日本の100円ショップ向けの商品が、よく並んでいた。たいてい日本向け商品は、中国向け商品より高く、つくりがしっかりしているため、昆明では人気商品なのだ。
犬の絵がかかれたマグカップに、思いがけず正しい日本語を見つけた。「人生はいろいろだねえ」と書かれてあった。日本から中国の工場に出向させられた日本人がつけたのか、優秀な日本語ペラペラの中国人の悲哀が込められているのか、その深い味わいに引きつけられて、買ってしまった。
【円通山の桜見物】
3月には昆明動物園のある円通山は濃いピンクの八重の花が特長の雲南桜と海棠の花盛りとなり、春を待ちわびた人たちの花見(日本のような酒持ちではなく、花を見て歩くこと)で賑わう。とくに枝ぶりのいい桜の木にはお立ち台ができ、一回10元(約160円)で写真撮影をしてくれる。そこで貸し出されているのが浮世絵美人の模様などのついた、服の上からはおって着る日本風着物なのである。それを着た若い女性たちは本当にうれしそうだ。金殿の観光地では、「我就是日本来!(私は本当に日本からきたのよ)」といって笑いあう中高生4人組を見かけたこともある。
テレビではよく反日番組はあるし、雲南でも日本軍と中国軍の激戦が行われているので、すべての人の心の底はわからない。だが、街で見かける日本語の扱いから察するに「日本」は一つのブランドらしい。雲南には少数民族が多いためか、「どこからきたのか?」との問いに「日本人(リーベンレン)」と答えると、「それはどこの民族か。」なんていわれることもままあった。ともかく不思議な「日本」探しをしているだけで街歩きは十倍楽しくなる。



コメント (1)
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