今日から6月、衣替えですね。あまり関係ないけれど長文を綴りました。
池波正太郎さんの短編物語を編集した「 武士(おとこ)の紋章」という本があります。
最近、たまたまデカ字の3分冊を図書館で見つけて読みました。
池波さんの作品はほとんど「デカ字(大活字文庫)」で読めます。
このシリーズには、戦国時代の武士が多数、登場します。
第1話「智謀の人」-黒田如水
第2話「武士の紋章」-滝川三九郎
第3話「三代の風雪」-真田信之
第4話「首討とう大坂陣」-真田幸村
第5話「決闘高田馬場」
第6話「新選組生残りの剣客」-永倉新八
第7話「三根山」
第8話「牧野富太郎」
戦国時代など武士の時代の人物のほか、2人の異色の人物が登場します。
元大関の「三根山」、植物学者「牧野富太郎」の2編が興味深く読めました。
牧野さんは、好きな植物学の研究だけに一途に生涯を過ごした人でした。
一方、三根山は大関まで昇り優勝もしたが、
ケガと持病で幕尻近くまで番付を下げても人気が衰えなかった「転落大関」でした。
妻を愛し、弟子たちには厳しく、やさしく「気配り」の人でした。
「三根山」は34歳の昭和31年・秋場所の15日間を追いながら、
苦労人・三根山こと島村島一の生い立ち、修業時代、大関までの輝いた時代、
結婚・妻の淑子さん、病気とケガで幕尻まで落ちて、
復活する肉体と精神に向き合ってきた相撲人生を描いた記録です。
昭和31年は、たにしの爺が高2の年です。
●9月16日・初日、相手は自身と同様にケガを克服した古参の清水川に勝って、
同部屋の後輩、芳野嶺に水をつける。その芳野嶺も北の洋に勝つ。
自宅に帰って若の花が鳴門海を転がすのをテレビで見て「強いな、実に強い」とつぶやく。
このように初日から千秋楽までの15日間に、さまざまな力士名が登場して、
「三根山」にまつわる土俵人生が語られていきます。
丸っこい顔で、闘志むき出しの顔貌とは言えない三根山(高島部屋)は好きな力士でした。
当時、羽黒山、名寄岩とかがいた立浪部屋がひいきでした。
というのは、この物語には出てきませんが、「大昇」という郷土力士が立浪部屋に居て、
お相撲に関心を持つきっかけになっていました。
自分で星取表まで作ってラジオの前で熱狂した懐かしい力士名が出てきます。
後期高齢者の方々には思い出す力士が出てきます。
●2日目の相手は大蛇潟、寄り切りで勝利。
●3日目は潮錦、寄り切りの勝利。
●4日目、島錦に下手投げで逆転勝ち。
●5日目、若ノ海を寄り切り。
●6日目は吉井山にも勝。
●7日目、信夫山の寄りを残して勝。
●8日目、福ノ海を破り、若乃花と並んで勝ちっ放なし。
○9日目、時津山に初黒星。
○10日目、栃光の下手投げに屈して連敗。
●11日目、安念山に速攻の寄り倒しで勝。
○12日目、若羽黒に敗れる。
●13日目、北ノ洋に物言い相撲で勝利。
この日から若ノ花が発熱で休場。優勝は1敗の鏡里と2敗の吉葉山にしぼられる。
○14日め、大天龍に送り出しで敗れて4敗目。
○千秋楽の相手は大起、出し投げに敗れる。大起といえば巨漢の力士だということが記憶にあります。
10勝5敗で2度目の敢闘賞に輝く。
これまで優勝1回、殊勲賞4回、敢闘賞1回の輝かしい戦歴に新たなページとなった。
この場所は20年間の力士生活の経験を傷だらけの肉体と精神の力で挑んだ結果が出たのだと、三根山は思った。
優勝は吉葉山を破り鏡里。この取り組みはラジオで聞いた記憶がよみがえりました。
淑子夫人との7年間に渡る婚約時代、大関になるまでのストイックな精進。
大関から落ちてもなお人気を保ち続けた三根山。
力強く、愛情深く見守る弟子たちへの気配り。
愛情をもって弟子を育てる厳しさと愛情がうかがえます。
このような人物が今の竹縄親方の宮城野部屋にいたなら、
あの「見苦しい」横綱も違った振る舞いになっていたかもしれません。
池波さんは「勝負を争う力士たちの相撲の取り方を見ただけで、敏感に、
その力士の人柄まで見透してしまうのだ。それだけに、
力士の人柄と日常の生活というものが、その体と顔と、相撲ぶりに、
ハッキリと現れるので、恐ろしい職業なのだ」と三根山の心情として書いています。
三根山の大関時代は一場所の収入が30万円、平幕で15万円。
5場所になれば年収が50万円になる。これが1年の生活費になると、
年間5場所制になることでの生活設計を述べています。
いまの大相撲界とは隔世の感です。
最近、モンゴルに代表する外国人力士の登場が、何かと波風の立つ角界となっています。
「栃若時代」で相撲人気が高まっていたこの頃に活躍した、
羽黒山、吉葉山、栃錦、若乃花、朝潮、突進の松登、長身の大内山、内掛けの琴ヶ濱、
名寄岩、三根山、若羽黒らの時代。
この人たちが今、すべての横綱記録を外国生まれの力士に塗り替えられる土俵を見たら、
どんな思いになることでしょうか。
最後までお付き合いありがとうございます。
佐藤正美「浜町河岸の生き神様」です。
「佃島ふたり書房」 出久根達郎
「わが落語鑑賞」 安藤 鶴夫
こちらは、上記のものより少し小さな活字でした。
感想をまとめるのはなかなか骨がおれますね。
これだけの文章におまとめになったこと、
さすが谷氏と、敬服いたします。
最近は活字を追っていくのが苦痛になって、
ストレスになっています。
その点、大活字本は絵本を見るような感覚で、
ページごと一目で目に入りますので、
活字を追わなくでも済みます。
ストレスが少なくなります。
池波さんの本は改行が多くて、
一行の文字数が少なくていいです。
一生懸命に内容の濃い文章が書かれていても、
読むのに苦痛をを感じさせてはいけませんね。
自戒しています。