大活字本で読む時代小説シリーズ「藤沢周平」
「隠し剣孤影抄」<上下>を読み終えました。
藤沢流「隠し剣奥儀」の世界を堪能しました。
遣い手は、何故か切なく、気分はほろ苦い。
武士たる者、正々堂々と戦う正当な剣法ではなく、
師匠から一人だけ、密かに伝えらている護身剣。
秘剣・隠し剣を習得した8人の武士が登場します。
抜き差しならない状況に追い詰められた果てに、
視られてはならない、一回限りの秘剣が一閃します。
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8編の短編が収められています。
「邪剣竜尾返し」「臆病剣松風」「暗殺剣虎ノ眼」
「必死剣鳥刺し」「隠し剣鬼ノ爪」「女人剣さざ波」
「悲運剣芦刈り」「宿命剣鬼走り」
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必ずしも藩内で知られている剣士ではありません。
評判の臆病者だったり、目立たない下級の家系だったり、
秘剣の遣い手だという噂はあっても、
誰もそれを遣ったところは見たものいない。
同輩との確執や対立など、いろいろないきさつの末、
真剣で立ち向かわざるを得なくなり、隠し剣が勝敗を決する。
必ずしもフェアな剣技ではなく、ひっそりと始末される。
遣った本人にとっても後味は苦いものだった。
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緊迫感の凝縮した短編小説ですが、
各篇とも生と死の間に女の影が介在します。
「隠し剣」が一閃し死命を決するまでに、
「武家の女」静謐さと激情の「官能」が織り込まれて、
愛憎劇ともなっています。
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浅見俊之助は美人の家系だということで結婚した妻の邦江が、
期待外れで好きになれず、疎んでいたが、
俊之助が立ち会わざるを得なくなった相手は本堂派の遠山左門。
俊之助が勝てる敵ではなかった。
それを知った妻は「隠し剣」の習得者だった。
妻に救われた俊之助は、邦江への愛しさを一気に募らす。
「女人剣さざ波」がいい味でした。