平城京跡資料館の中には、細かく見てみると面白い展示が一杯あるが、その中でも木簡の展示は興味深い。
資料館入り口
平城京で発掘された木簡の中には、遠い隠岐国 海部郡 佐吉郷(島根県 隠岐郡 海士町 崎という地名が今もある)から養老7年(723年)に調として運ばれてきた鰒(あわび)六斤という記述がある。
つまり、1286年前の隠岐島に調(17~20歳の男性への賦課税)の課税対象となる人が住んでいることを平城京は把握していて、隠岐の特産品アワビによる納税がされていたことを示している。
ピンクの付箋が海士町 崎
細く切ったアワビを乾燥させた熨斗鰒(あわび)は、古くから祝い事に配られる習慣があり、伊勢神宮における重要な神事にも、熨斗鰒が使われていることは良く知られている。
資料館
恐らく、平城京における貴族社会でもあわびは、祝い事に欠かせない品として珍重されていたものと思う。
しかし、あわびが高価であったことから次第に簡略化されるようになり、後には熨斗紙で済ませるようになったという。
農耕大工道具
資料館に展示された木簡に記載されたアワビを見ると生鰒、蒸鮑、煎鰒、薄鰒、長鮑、割鰒、御取鰒など鰒と鮑の2種類の漢字が使われていて、平城京には日本各地から色々なあわびが集まっていたことが判る。
大極殿復旧工事
さて、楽天市場で現在の岩手県産干しアワビの値段を調べてみると、何と10グラムが4200円(1グラムが420円)もしている。
701年に完成した大宝律令で定められていた一斤は、約600グラムとされているので、723年(養老7年)の木簡にある六斤とは3600グラムにもなる。
古銭100枚
これを現在の楽天市場で調達すると、3600×420=151万円という途方もない金額になることに驚く。
資料館の外部
今の隠岐海士町には、海士町歴史民俗資料館があるので、この木簡のレプリカをぜひ展示して欲しいと思う。
海士町歴史民俗資料館
発見され展示してある木簡の中には読者の皆さんの故郷から送られたものも見つかるかも知れないので、ぜひ一度平城京跡資料館を見学して欲しい。
また発掘された部分は、全体の1%程度といわれているので、歴史の故郷とも言える平城京跡から、まだまだ新しい発見が続くものと思う。
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