江戸期から今日に至る各時代の建物が集まっている月桂冠大倉記念館の周辺は、「京都百景」の一つに数えられ、「京都美観風致賞・特別賞」を受賞している場所である。
また、環境省が日本の豊かな香りとその源となる自然や文化などを将来に残し、伝えていく「かおり風景100選」にも、「伏見の酒蔵」は選ばれている。
さらに、読売新聞が日本の行ってみたい、歩いてみたい、100か所を選定した「遊歩百選」のひとつにも京都を代表して選ばれている。
酒蔵通り
月桂冠大倉記念館から外に出て、酒蔵に沿って北に歩き左に曲がると、月桂冠酒造当主であった大倉家の本宅が1828年に建造された姿で残っている。
本宅建造から40年後に起こった鳥羽伏見の戦いでは、通りをへだてて北側の建物や、その並びに連なる船宿、町家の多くが焼失したが、この本宅は幸いに羅災をまぬがれている。
大倉酒造の内部
大倉家本宅は、京都市内の町屋の中でも最大規模に属すると言われ、表構えに、虫籠窓、太めの木材を組み合わせた酒屋格子が残る、昔ながらの酒屋のたたずまいを今に残している。
さらにその先には、1919年に建造された月桂冠の旧本社があり、建物の周囲を京都らしい犬矢来がとりまいている。
表玄関には石段や石囲いが施され、濠川の氾濫による水害から建物を守るため建物の床面は道路より1メートルほど高い位置に建造されている。
濠川
今は「伏見夢百衆」という飲食店となり、中に取り揃えられた伏見の清酒100種類の飲み比べができるという。
月桂冠酒蔵の西を流れる濠川は、1594年伏見城築城の際、宇治川の水を引き込み、伏見城の外濠として構築されたという。
江戸時代、濠川沿いには、大名の武家屋敷が建ち並び、現在の「昭和蔵」は紀州藩、「北蔵」は尾州藩、「大賞蔵」は薩摩藩の京都屋敷であったという。
月桂冠大倉記念館や隣接する内蔵酒造場のある南浜一帯は、かつて水陸交通のターミナルとして、三十石船が発着していた場所で、「伏見濠川の柳並木」は「京都市自然100選」に選ばれている。
しかし、日本にはこれほど、いろいろな百選があるとは寡聞にして知らなかった。
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