島根県には、天然記念物で環境省準絶滅危惧に指定されているマガン(真雁・体長65~86cm)が毎年4000羽前後渡来します。
日本国内でマガンの渡来が最も多いのが宮城県伊豆沼内沼で7万羽以上なので、それと比べると大したことはありません。
西日本では鳥取県、滋賀県、佐賀県にも渡来しているようですが、その数は20羽前後と言われています。・・・右を見ているので飛びそうです。
昔は大挙して渡来してきていたカリガネ(環境省レッドリスト2015・絶滅危惧ⅡB指定)は、「カリ」又は「カリカリッ」と甲高く鳴くことが知られ、そこから「カリ」(漢字では雁)と呼ばれ、「カリが音(ね)」という名前が生まれたと推測できます。・・・離陸
カリガネとよく似たマガンも、かつてカリと呼ばれていましたが、カリに当てた漢字「雁」の音読みがガンだったため、ガンへと変化したようです。
またマガンの仲間のヒシクイが「ガガン」「グヮン」マガンも「グヮハハン」と鳴くので「ガン」となったという説もあるようです。・・・マガンのねぐらは、宍道湖や斐伊川の砂州で、耕起のない水田で草を食べているようです。
室町時代以降、「カリ」という呼び方が次第に使われなくなり、江戸時代には「ガン」が普通に使われるようになっています。
「ちんちん千鳥の啼く声は」の著者は、鳥名のカリがガンへと変化してきたのは「カリ」と鳴くカリガネが減って、「ガガン」「グヮン」と鳴くヒシクイやマガンが勢力を増したことと、漢字の読み方が和語から漢語へ変化したこと、と書いています。
カリからガンへの変化は、日本に飛来する野鳥の数の盛衰が引き起こした現象とも言えるようです。
参考文献:「ちんちん千鳥の啼く声は」 山口 仲美著