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ROSSさんの大阪ハクナマタタ



一昨日に続き、谷崎潤一郎の小説「細雪」から昭和初期の中流家族が京都平安神宮で花見を楽しむ姿を紹介しましょう。< >が小説に出てくる部分です。・・・京都府立植物園の観覧温室は、いつも見事な花で一杯です。

<あの、神門をはいって大極殿を正面に見、西の廻廊から神苑に第一歩を踏み入れた所にある数株の紅枝垂、海外にまでその美を謳われているという名木の桜が、今年はどんな風であろうか、>・・・アロエの花

 平安神宮のHP(4月を華麗に彩るのは有名な「八重紅枝垂桜」です。開花時期は、桜前線に遅れること1週間程度で、4月上旬となることが多く、4月15日の例祭にはまるで奉祝するかのように見ごろを迎えます)と今も紅枝垂を誇っています。

 HP(八重咲きなので開花から2週間も見ごろが続きます。咲き始め、満開、散り際と、それぞれに風情がありますが、5分から7分咲きのころに紅の色が最も濃くなります)

 HP(枝垂れ桜のうえに、色は紅色、花は八重ですから、その艶やかさは群を抜いています。 文豪、谷崎潤一郎も『細雪』のなかで、「忽ち夕空にひろがっている紅の雲」を「一年待ち続けた」という情緒豊かな表現で著しています)とありました。

 細雪の中からその部分をもっと詳しく紹介すると、<もうおそくはないであろうかと気を揉みながら、毎年廻廊の門をくぐるまではあやしく胸をときめかすのであるが、>・・・

 <今年も同じような思いで門をくぐった彼女たちは、たちまち夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、「あー」と感歎の声を放った>

 <この一瞬こそ、二日間の行事の頂点であり、この一瞬の喜びこそ、去年の春が暮れて以来一年に亘って待ちつづけていたものなのである>

情緒豊かな表現を得意とした、谷崎潤一郎の文章力、ここに極まれりということでしょう。・・・ホウガンノキの砲丸のような実

 小説「細雪」は、この花見の後に阪神大水害が襲ってくる展開となるので、このときの花見は、今から75年前となる1938年(昭和13年)であることが明らかです。

つづく



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