11月15日 ご縁があり 法蔵寺さんの本堂 お十夜法要で 檀家のみなさまとお数珠をまわしたあと 語らせていただきました。
先代のご住職は100人以上の孤児たちの面倒を見られ 吉川英治文化賞を受けられた方です。今のご住職もおだやかな透明感のある素敵な方です。
語る前にご本尊さまに南無阿弥陀仏を唱えました。その日 語ったのは みのわの嘆き 若い妻が夫に先立たれ 病気のおっかさまと乳飲み子を抱え 生活に窮したとき どちらかひとりだけなら養っていけると悩んだすえ おっかさまをとり わが子を泣く泣く お寺の門前に棄てます。おっかさまが寿命をまっとうし あの世にいったあと 母親はひとこと 棄てたわが子に詫びたいと旅にでます。そして 棄てたわが子にめぐりあうというおはなしです。息子もまた母をさがしていたのです。「 ゆるしておくれ ゆるしておくれ」と 泣く母にりっぱなお坊さまになっていた息子は 「おかあさん 泣かないでください。あなたのなさったことはまちがってはいなかったのですよ。その証拠に ふたりこうしてめぐりあうことができたではありませんか」 といって老いた母を抱きしめるのでした。
次に語ったのは 金沢山の鬼 です。きのことりがあまりやさしいので ついそばにいたくて女房になった鬼は しだいにわらわなくなります。
「おめ なして わらわね なして赤子のかおばみて 切なげな顔するなや こげな暮らし やになっただか」
「あんつぁ あんつぁ おら おら 金沢山の鬼だ。 おめさまが 山からひろってきた長い糸のようなもんはよ おらの髪の毛だ そればとりもどそうとこの家にきたが おめさまがあんまり やさしいから おら 女房になって おめさまのそばにいだくなったなや だども... 赤子の顔ば見ると 鬼の心がもどってきてよ はぁーっといぎかけて 食いたくなるだや こげなことでは とても ひとの子のおやにはなれねぇ 山へかえしてくだされ この子ば 食ってしまわぬうちに..... 」
もうひとつ わるさばかりしていた伝助じさが あの世にいってどうなったかというおはなし でした。なんといいますか ピンとはりつめた空気でした。いつもとどうも違う ... お十夜が終わったあもと 呆然と話からはなれられずにおりました。今朝 やっとわかりました。語りのときはいつも神さまにお祈りします。それが仏さまだったから.... 仏さまのほうが厳しい感じがします。
カタリカタリの公演も 個人の語りも わたしの心の中では奉納演芸なのです。ほかの芸能でもおおもとはそうですね。それで いつも 舞台にお神酒を捧げます。13日の感想をメンバーにレポートとして送ってもらったら ふしぎなことがふたりから寄せられました。ひとりは 自分がかたっているとき 最前列の一番左に座っていたわたしのとなりに見えないだれかがいたといいます。思わず目をそらしてしまったそうです。そしてもうひとりは 客席から青いひとすじのひかりが伸びてきたといいます。そのひとは 空席に満州で亡くなった方が座っているのだと思って 語っていたそうです。語りはほんとうにふしぎです。
レポートを読みますと ほとんどのひとが カタリカタリにいることがしあわせだ...と書いています。みんながだいすきだと。 それはほんとうにうれしいけれど もっと切磋琢磨して もっともっと神さまにもよろこんでいただき 聴き手のみなさまにもあぁ きてよかった と思っていただけるようになりたいですね。.....戦争の話となると 敬遠なさる方も多くいらっしゃいます。今回の二部 満州国の洛陽は 満州で亡くなられた方々の供養として語らせていただきました。平和についてはひとことも言及しなかったのですが こんな感想をいただきました。
・どっしりと重い内容も多かったけど「語り」っていう伝え方って真剣さとか、語りをする人の心がすごく伝わってやっぱりすてきだなって思ったよ。学校で語りを聞いたことをキッカケに参加した青年も素敵でした。そして、一つ一つの物語からいろんな事を想像したり考えられるようになっていた自分にも驚いたというか、日々成長しているのね。みんなが平和を願う、大切な、素敵な時間をありがとうございました。
・何だか最後の里の秋を歌ってたら泣けてきちゃったわ。 Yさんのやさしいカタリ癒されたわ。ツライ話だったけど、いい時間を過ごせました。ありがとう。
・真面目に生きなきゃな、真剣に生きなきゃなと考えさせられたよ。
・たくさんの人が来てましたね。若い人から、お年寄りまでいてびっくり!語りって花さき山など物語しか聞いたことがなかったから、戦争体験の聞き書きや自分の家族のものがたり、第二部のような語りがあることを初めて知りました。 本人から聞いているみたいでドキドキしましたよ。満州の語りは本当に辛くなりました。
満州で多くの方々がどんなに懸命に生き 死んでいったか 聴いていただき うけとめていただくことで 救われた方々もおいでになったと思います。おいでいただいてほんとうにありがとうございました。