仏壇の奥からVHSのテープが2巻出てきた。
20年前の父親の葬儀を撮影したものである。
見てみたいが、再生手段がない。
ビクターダビングサービスという会社に、DVDへのダビングをお願いした。
料金は2巻で2,800円。
安くはないが、チャプター分けするなど仕事のほうは丁寧だった。
再生してみると、なんともつまらない動画だ。
定点カメラで祭壇の様子を延々と取り続けているだけだ。
画質は驚くほど悪く、人の識別もおぼつかない。
世界を制した日本のアナログ技術とはこんなものだったのかと驚きを禁じ得ない。
それでも、あの時の記憶が蘇ってきた。
読経するお坊さんの後ろで幼い姪が遊び出し、それを心配そうに弟が見ている。
「そういえばそんな葬式だった」
もっと鮮明に映っていればと最初は思ったが、この程度でいいような気がしてきた。
悲しかったのは死んだ直後だけで、その後は、すべてが事務的に処理された。
初七日の法要も葬儀の当日に済ませてしまうぐらいだ。
悲しみは置き去りにされ、ただの儀式になった。
そんな葬式に、姪だけではない、誰もが退屈していたに違いない。 お気に入り名盤! マル・ウォルドロン:Left Alone
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