読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! 武居俊樹 文春文庫

2007-05-19 15:08:55 | 読んだ
著者は、少年サンデー(小学館)の編集者になったときから赤塚不二夫の担当となった。
本書を読むとわかるが、赤塚不二夫も相当変な人であるが、著者:武居も負けず劣らず変な人である。

赤塚不二夫はギャグ漫画とかいわれているけれど、ギャグというよりナンセンスあるいは不条理に近いのではないか、と私は思っているのだ。

さて、赤塚不二夫なのだが、藤子不二雄<A>の「まんが道」はじめ、いわゆる「ときわ荘」ものを読むと、石森章太郎のカゲに隠れているような、おとなしいイメージである。

本書でも「第3章 漫画家アパートのおちこぼれ」として描かれている。
そして、本書において当時の赤塚不二雄の有様がやっとわかった。
赤塚不二夫の自伝的エッセイ「笑わずに生きるなんて」でもあまり詳しく書いていなかった、いわゆる「不遇の時代」は、表面的にはどうあれ内面的には相当屈折していたことが本書でわかり、ある意味ほっとしたのである。

私にとっては「ときわ荘」の漫画家のなかで赤塚不二夫と寺田ヒロオが興味を持ってしまう人なのである。
その後、二人はまったく違った人生のようになってしまう。

赤塚は人気漫画家になり奇行の人となる。
寺田はペンを折り漫画の世界から身を引く。

私には二人とも繊細すぎたのではないのか、と思っている。
成功する人たち、特に芸術系の人は繊細な部分と変に鈍い部分が同居しているように思える。
しかし、この二人は鈍い部分が欠けていて、だから、赤塚は奇行に走って繊細さを隠そうとした、のではないだろうか。そして寺田はペンを折った。

本書の大部分は著者の見た赤塚不二夫である。
そして著者はすでに<おそ松くん>で「大家」となっていた赤塚と出会ったので、絶頂期へ向けて進む時期からひたすら奇行に走るときまでのことが詳しく書いてある。

それを読むと、赤塚に誘われたように編集者たちや友人も変な人が多く、ゆえに加速度的に「変」が進んでいるようである。

時代といえば時代で、今では到底そんなことはできない状況であるが、それにしてもスゴイことをしている。
それは、おそ松くん、天才バカボン、もうれつア太郎、などによって、社会をリードしているという自信とその著者は正常ではないんだというアピールだったのか、興味が尽きないところである。

それから赤塚の漫画というのは、赤塚一人で作るものではなく、アイデアの段階からチームでつくられていたということが本書を読んでわかった。
それゆえに、チームのメンバーが変わることによってパワーも変化していくこととなる。
チームが順調に動いているときはいいのだが、やはり人の動きというのはいつまでも右肩上がりで推移するわけでなく・・・
そのあたりに、漫画家・赤塚不二夫の悲哀があるような気がする。

本書はこれまで読んだ「このてのもの」のなかでは、スゴク正直に書いてあり、それゆえに凄みがあるようで、かるーい気持ちで読みはじめたのが、イロイロと考えさせられたのであった。

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