読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

十五少年漂流記 ヴェルヌ <訳>波多野完治 新潮文庫

2006-07-21 20:53:31 | 読んだ
子供ころに「世界少年少女文学全集」で読んだものだ。
新潮文庫の100冊にあったので、マスコット人形をもらいたいがために買ってしまった。

子供向けに訳されたものとどう違うのかも確かめてみたかったからでもある。

ヴェルヌといえばこのほかには「海底二万里」とか「80日間世界一周」などを読んだが、一番のお気に入りはこの「十五少年漂流記」であった。
この物語の題名の話や設定などに瑕疵があることなど「あとがき」に書いてあるが、そんなことなど吹き飛ばすような「面白さ」なのである。

15人の少年たちが乗った船が漂流し、無人島へたどり着く。
そこで少年たちは知恵を絞り勇気をもって生活をする。
その知恵や勇気に子供のころはあこがれた。

今回読み返してみると、彼らは立派に「民主主義」によって共同生活を行っている、ということに感心する。
島の大統領を選ぶのにも選挙をする。何かを決めるには「話し合い」を行う。そこには上級生や下級生の区別はない。
一方、彼らが果たすべき義務や責任は、ちゃんとその人の年齢や能力にかなったものであり、無分別な平等はない。上級生は下級生を守るのである。
さすが、民主主義の世界の住人である。

もっとも、黒人の見習い水夫モーコーには選挙権がないという、ちょいと割り切れない話もでてくるが、それはそれで当時の状況をあらわしているんだと思う。

それにしても1888年(今から118年も前)に書かれたものであるが、そのころの子供たちはしっかりしていたんだなあ、と思うのである。
世の中が進んでいろいろなことができるようになったのに、人間そのものの能力というか生命力は低下してきているのではないだろうか?
なんてことも思ったりしたのである。

十五少年漂流記はフランス版(つまり原版)の題名と同じ「2年間の休暇」としても出ているらしい、が、やはり十五少年漂流記のほうがしっくりくる。
コメント
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