読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

笑伝 林家三平  神津友好 新潮文庫

2006-05-17 18:48:27 | 読んだ
この読み物は、昭和58年1月から2年3ヶ月新聞連載されたものを、昭和60年単行本となり、平成17年改訂をして文庫本になったものである。

林家三平の長男である泰孝(こぶ平)が、祖父(三平の父)の名であった、いわゆる大名跡である林家正蔵を襲名したことも、文庫本化の要因であろうが、林家三平という不可思議な魅力を持った芸人に対する思いというのがなかなか消えないことがその最大の要因ではないだろうか。

と、この本に、林家三平という落語家の芸風の源を知ろう、あるいは落語の真髄や芸談を知りたいなどという人は、たぶん「あれ?」っと思うだろう。

この本は著者があとがきで
「これは昭和の爆笑王伝説というようなものではない。同時代を生きた私たちの中を走り抜けていった三平さんが、その身のまわりにふりまいて行った生き方を、懐かしく語る、すくなくとも百人におよぶ身近な人々のお話や思いを聞き集めた実伝なのです」
と述べているように、辛気臭い芸談でも伝記でもない。

読後、すごくさわやかな思いにさせてくれるものです。
これは、三平が憎めない性格であったことと、登場人物が善人ばかりだからではないだろうか。

著者は、三平とラジオ番組の演者と作者という関係で知り合い、以後長年にわたり、仕事を通じての友達だったという。
そのへんの、濃い仕事をしたけれど、付き合いはあっさりしたもの、という感じがまた「さわやか」というか「さっぱり」感を出していると思われる。

林家三平って変わった人だったんだなあ、とごくあっさり思えれば良いのではないか、と思ったのであります。
コメント
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