尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

秘書を「誘導尋問」した前首相の責任ー「桜を見る会」前夜祭

2020年12月29日 22時38分21秒 | 政治
 「桜を見る会」前夜祭をめぐる政治資金規正法違反事件は、安倍前首相の配川秘書略式起訴されて罰金100万円が科される一方で、安倍前首相は不起訴となった。安倍前首相は12月24日に記者会見を行い、翌25日に衆参両院の議院運営委員会で「国民の信頼を傷つけた」と謝罪した。この問題については、11月30日付で「「桜を見る会」問題、安倍前首相の議員辞職が必要」という記事を書いた。その時点では臨時国会も開かれていて、野党は国会招致を要求していた。その時は何ら応えずに、突然コロナ禍の年末に急に国会で「謝罪」を行った。
(国会で「謝罪」する安倍前首相)
 その記者会見も、まだ首相のつもりなのか、長谷川栄一氏(元首相秘書官)が司会して、記者数も質問数も制限するというものだった。国会でも基本的な「証明資料」である「領収書」「明細書」を提出することなく、野党議員の質問に対しては「通告がなかった」などと答えないことが多かった。国会での発言というのは、「官僚が用意してくれた文章を読み上げること」と心底思い込んでいるのかもしれない。だけど、もう首相ではない一議員だから、政府機関は発言を準備してくれない。自分の言葉で自分の認識を語る必要がある。

 この問題をどう考えるべきだろうか。僕は何より「政治的責任の取り方」が最大の問題だと思っている。だから改めて「議員辞職が必要」と書いておきたい。しかし、それは前にも書いたわけで、今回は「事件の構図」について考えたい。安倍前首相が不起訴になったことに不満を持つ人も多いようだ。しかし、事件の構図がこのままだったら、今回の検察の処置は概ね正しいのではないだろうか。「安倍氏が知らなかったはずがない」などという思い込みで起訴したら、数々の「冤罪事件」と同じである。明白な証拠があるかどうかだけが、刑事責任判断の基準である。

 今回の「前夜祭」が「安倍晋三後援会」の主催行事であるとするならば、後援会を担当する配川秘書に記載責任があるだろう。下の写真を見ると、確かに「安倍晋三後援会」の主催行事であると思われる。しかし「領収書」は安倍晋三議員の政治資金管理団体として届け出られている「晋和会」宛てになっているという話がある。その場合は、また別の問題になるのではないかと思う。「晋和会」の代表は安倍晋三氏本人だからである。何にしても「領収書」を見れば全部判るわけで、なんで領収書を国会に提出しないのだろうか
(桜を見る会前夜祭のようす)
 出したくても安倍氏側には領収書がないという話もある。国会でもそう説明している。野党はホテル側に再発行を求めるべきだと言っている。そもそも何で安倍事務所に領収書がないのか。捜査当局に押収されているわけではなく、探してもなかったということらしい。「紛失」ということになっているが、数百万円になる領収書をなくす事務所があるだろうか。むしろ常識的に考えれば「証拠隠滅」ではないのか。証拠隠滅は刑法犯で、最高刑は懲役3年。最高刑懲役5年未満の罪なので時効は3年間になる。最近のものは時効になっていないから、安倍氏の関係先に対する「強制捜査」(家宅捜索)が必要だったのではないだろうか。

 安倍前首相の記者会見・国会での説明にもおかしな部分は多い。「結果として間違っていた」というが、領収書などを見ればすぐに判ることだ。それを確認しないで、野党側が間違っていると強弁し続けた。その「強弁」に対して人間としての責任を取らなければいけない。それはともかく、「秘書が正しく報告していなかった」とすべて秘書の責任にしている。しかし、秘書に対して「何回も確認している」ということだが、「5千円で総てまかなっている」という認識を前提にして秘書に聞いている。それは「質問」ではなく、「誘導尋問」である。

 「領収書を見せてくれ」と言えばすぐに判ることを、なんで「誘導尋問」するのだろうか。秘書と議員の関係では、「こういう風に答えて欲しいんだな」と読み取って対応するに決まっている。もっとも安倍氏は歴史認識問題などでも、「史料」をきちんと調べることなく「思い込み」で語ることが多い。客観的に資料を見るというトレーニングをしてこなかったのだろう。「客観的証拠」を何一つ提出せずに、「結果として間違っていた」と言い張るのではなく、提出を求められているものを国会に出して、証人喚問に応じるべきだ。年末に急いでやったこと自体がどうもおかしい。
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