尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

羽子板市の浅草に落語を聞きに行く

2020年12月18日 22時47分45秒 | 落語(講談・浪曲)
 今年はついに旅行や演劇には行かずに終わりそうだ。コロナの影響というだけではない。家に年寄りがいるので、泊りで出掛けにくい。演劇は面白そうなのは、高くて遠い。秋からは見たい公演がいくつか出てきたが、歯医者が始まってしまって余裕がなかった。(来年早々の二兎社は取ってある。)ということで、何とか落語だけは行きたいなと思う。もっとも夜は避けたくなってしまう。どこかで食べないといけないから。そこで羽子板市の浅草に落語を聞きに行った。
 
 羽子板市も初めてではないと思うけど、ガラガラでビックリ。大体、こんな羽子板を何故買う人がいるのか、僕には判らない。浅草自体も人が少なくなっている。まあ、それでもいるとも言えるが、ちょっと前よりも減っていると思う。正月間近の仲見世はこんな感じ。
 
 TOHOシネマズで映画を見ると、山崎紘菜が「映画館っていいですよね」と言ってるけど、それは昔の映画館だろう。指定席なんかほとんどなく、いつ入っても良かった。ヒット映画は立ち見で見た。ナマ(ライブ)という意味で、演劇やコンサートには独自の緊張した匂いがある。そこが好きだが、でもずいぶん前からチケットを買ってないと、今では行くのも難しい。

 それを考えると、僕は一番寄席が落ち着くと思う。まあ椅子が悪くて疲れるが、いつ入っても構わないし、途中で出ていく人はいっぱいいる。そして時には12時前から夜9時頃までいられる。眠くなったら寝てしまっても、演者が変わるから筋が判らなくなることはない。

 12月中席は上野・鈴本演芸場浅草演芸ホールは出演者がかなり被っている。近いから時間を変えれば、両方に出られる。それを浅草に行ったのは、落語協会会長の柳亭市馬会長をしばらく聞いてないので、ずっと聞きたかったから。上野にも出ているが、浅草はトリである。たっぷり「掛け取り」をやって聞き応えがあった。

 「掛け取り」というのは、大晦日の借金取り攻勢を如何にしのぐかという話だ。去年は「死んだふり」で逃れた。今年はどうするか。相手の好きなジャンル(狂歌や芝居)に話を引きつけて、うまく撃退してしまう。市馬師匠の「掛け取り」は三波春夫ファンの借金取りに対して、歌ってごまかしてしまう。必ず歌入りになる市馬らしい工夫で、最後は東京五輪音頭でコロナ退散だった。

 今日は他でトリを取る五街道雲助三遊亭圓歌、最近人気沸騰の春風亭一之輔桃月庵白酒、大御所の林家木久扇鈴々舎馬風、さらに古今亭文菊三遊亭白鳥三遊亭歌武蔵など人気者が勢揃い。これで3千円は安い。若手の柳家わさびの「パーリー・ピーポー」もおかしかった。笑いで言えば漫才のロケット団がいつものようにバカウケしていた。「今年ももうすぐおわりです、か?」と何でも疑問文にするのが笑えた。

 白酒師匠が「時々メモ帳を開いて採点してる人がいるけど、これは困る」と言ってたけど、僕も同感。ぼうっと聞いてればいいと思うので、演題も忘れてしまう。しかし、その桃月庵白酒師匠の「粗忽長屋」のとことんバカバカしいけど、突き抜けた感じのぼけ具合が良かった。行き倒れの死体を「隣に住んでる熊だ」と言い張り、今朝本人に会ったから連れてくるという訳の判らない男を絶妙に演じている。何度も聞いてる話だが、印象的だった。この人はあまり聞く機会が無かったけれど、すごく面白くてハマりそうである。まあ、備忘のために書いておく次第。
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アゼルバイジャンが勝利した「ナゴルノ・カラバフ戦争」

2020年12月18日 21時01分34秒 |  〃  (国際問題)
 2020年9月27日に再燃した「ナゴルノ・カラバフ戦争」に関しては、10月3日に「再燃したナゴルノ・カラバフ戦争」を書いた。その後の続報。前回記事では「アゼルバイジャン側から紛争を再燃させた可能性が高い」と書いた。ロシアが中心になった停戦の試みは何度か挫折し、結局は事実上アゼルバイジャンの勝利で終わった。12月10日には支援したトルコのエルドアン大統領を迎えて、アゼルバイジャンの首都バクーで「戦勝パレード」が行われた。
 (右=エルドアン大統領、左=アゼルバイジャンのアリエフ大統領)
 エルドアン大統領は自ら出掛けていって、アゼルバイジャン兵を閲兵しているんだから、ナゴルノ・カラバフ戦争へのトルコの介入を公然と認めたと考えていい。パレードではトルコ製の無人攻撃機アルメニア軍から奪った装甲車両などが披露されたという。軍事衝突の細かい経緯はウィキペディアに「2020年ナゴルノ・カラバフ紛争」という項目があり詳しく知ることが出来る。今回の戦争で双方に数千人の死者が出たとされるが、確実な死者数は判らない。

 1990年代に起こった戦争で、アルメニアとアゼルバイジャン内の「ナゴルノ・カラバフ自治州」は事実上つながった。その状況で停戦していたので、当初はアメリカロシアフランスの和平協議議長国は即時停戦を求めた。しかし、アルメニアに対しては国連安保理の撤退決議があり、トルコはそもそものアルメニア軍の占領地撤退を要求した。結局、44日間戦闘が続き、トルコの支援を受けたアゼルバイジャンが南部を制圧した。アルメニアは占領地撤退を受け入れざるを得なくなったのである。ただし、本国とナゴルノ・カラバフとの「回廊」が一部残された。

 紛争の絶えない地域だが、今回の戦争をめぐる関係各国の対応は複雑怪奇。アゼルバイジャンはイスラム教のシーア派が圧倒的だが、スンナ派のトルコやパキスタンが支援した。しかし、シーア派の大国イランはアルメニアを支援している。(イラン北部にはアゼリー人の独立運動があり、アゼルバイジャンとは対立関係にある。)イスラエルがアゼルバイジャンを支援し、サウジアラビアはアルメニア支持らしく、宗教や宗派とは無関係にどの国も「敵の敵は味方」の論理で行動していることが判る。大国ではフランスがアルメニアを支持している。

 今後はアルメニアがこのままで済むかが焦点になる。パシニャン首相は停戦協定受け入れをめぐって「私にとっても国民にとっても筆舌に尽くしがたい苦痛」と述べたが受け入れざるを得なかった。戦争中は首相夫人が前線を慰問に訪れ銃を撃つ写真が国際的に話題となった。しかし、戦局を挽回すること出来なかった。20年間に及ぶ占領地から引き上げざるを得なかったアルメニア人が多数いたという。パシニャン首相への批判が起きるのは避けられない。もともと首相の政治的地盤は弱く、反政府運動も起こっている。
(アルメニアのパシニャン首相夫人)
 アルメニアとトルコは歴史的に対立関係にある。第一次大戦末期のアスマン帝国による「アルメニア人大虐殺」が背景にある。今後「反トルコ」を掲げる右翼政党が勢力を伸ばして、アゼルバイジャンへの「復讐」を求める可能性は否定できない。今回のままで決着するとは考えられない。しかし、アルメニアを支持する欧米各国でも、トルコのように武器や傭兵を送るほどの支援には踏み切れないだろう。もともと、この地域は「旧ソ連」だから、ロシアの影響力が強い。キリスト教国のロシアがアルメニアの後ろ盾だったはずが、今回は全然役立たなかった。

 じゃあ、トルコとロシアは対立しているかと言えば、これも複雑。シリア内戦への対応で協力する場面もあり、トルコはロシアから武器を輸入した。トルコはNATO加盟国なので、アメリカはそのことに不快感を示して制裁を決めた。今回のナゴルノ・カラバフ戦争の国際的影響としては、一番は間違いなく「ロシアの影響力低下」だろう。ベラルーシ情勢もあって、プーチン政権に影響を与える可能性もある。一方、確実にポイントを稼いだのがトルコのエルドアン大統領。秘かに「オスマン帝国再興」を目指すとも言われるが、アラブ諸国に問題が多発する中で「イスラムの盟主」的な振る舞いが多くなるのではないか。何にせよ、今後も注目していくべき地域だ。
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