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日本の三権分立存続の危機に際し各紙社説の言論:朝日・毎日・東京:撤回、日経・産經:審議をつくせ、読売:5/16現在社説なし

2020-05-17 21:09:00 | 国政レベルでなすべきこと

 三権分立を否定する危険性のある検察庁法改正に対し、日本の主要各紙がどのような対応をとっているか、念の為、見てみました。

 重大論点にもかかわらず、読売は、2020.5.16現在(ここ一カ月)記載がありませんでした。明日を待ちます。

 他は、

朝日:検察庁法改正 やはり撤回しかない

毎日:政府・与党は考えを改め、やはり出直すべきだ

日経:数の力で審議を打ち切ったり、採決に持ち込んだりしてよい話ではない。将来に禍根を残さないよう十分に時間をかけ、国民に分かりやすい丁寧な議論を行うよう求める

東京:野党は徹底抗戦の構えだ。衆院本会議でも参院でも抵抗するだろう。検察の独立性を覆す法案は撤回すべきなのだ。与党も理性を働かせないと、国民の信頼から遠くなろう。

産経:検察庁法の改正案は内閣委から分離して法務委員会で審議することが筋である。


*******朝日新聞2020.5.16************************
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14477736.html

(社説)検察庁法改正 やはり撤回しかない
2020年5月16日 5時00分

 いったい何のために、そしてどんな場合を想定して、法律を変えようとしているのか。市民が抱く当然の疑問に、政府はまったく答えようとしない。いや答えられない。こんな法案は直ちに撤回すべきだ。

 検察庁法改正案を審議する衆院内閣委員会に、きのう森雅子法相がようやく出席した。

 検事長ら検察幹部を、その職を退く年齢になっても政府の裁量でとどめ置けるようにする。そんな規定を新設することの是非が、最大の焦点だ。

 野党は、法改正が必要な事情や政府が判断する際の基準を明らかにするよう求めた。だが法相から中身のある説明は一切されなかった。用意したペーパーをただ読み上げるだけで、約束したはずの「真摯(しんし)な説明」にはほど遠い答弁ぶりだった。

 戦後つくられた検察庁法は「検事総長は65歳、その他の検察官は63歳で退官」と定め、年齢以外の要素を排除している。政治が介入する余地を残すことで、職務遂行の適正さや検察の中立性が損なわれるのを防ぐためだ。このルールは、1月末に安倍内閣が東京高検検事長の定年延長を決めて留任させるまで、例外なく守られてきた。

 法案は今回の「特例」を制度化するもので、検察官のありようの根源的な見直しとなる。政府はその詳しい理由とあわせ、延長を認める具体的な基準も示して、国会の審議を仰ぐのが筋だ。だが法相は「これから適切に定める」と繰り返し、理解を求めた。そんな白紙委任のようなまねができるはずがない。

 法相に限らない。安倍首相は「検察官も行政官であることは間違いない」と述べ、内閣の統制に服するのを当然のようにいう。司法と密接に関わり、政治家の不正にも切り込む検察の使命をおよそ理解していない。

 時の政権が幹部人事への影響力を強めることが、検察をどう変質させ、国民の信頼をいかに傷つけるか。きのう松尾邦弘・元検事総長ら検察OB有志が、改正案に反対する異例の意見書を法務省に提出したのも、深刻な危機感の表れだ。

 与党の対応も厳しく批判されねばならない。答弁に不安がある法相を委員会に出席させず、野党欠席のまま審議を進めたり、「国民のコンセンサスは形成されていない」とツイートした泉田裕彦議員を、内閣委員会から外す措置をとったりした。

 国会は議員それぞれの視点をいかして法案を精査し、国権の最高機関として内閣を監視する責務を負う。異論をもつ者を排除し、政権に追従する姿は「言論の府」の正反対をゆく。

 このまま採決を強行するようなことは、決して許されない。


*********毎日新聞2020.5.16************
https://mainichi.jp/articles/20200516/ddm/005/070/070000c
検察庁法改正案 疑念は何も解消されない
毎日新聞2020年5月16日 東京朝刊


 批判の声に耳を傾けず、数の力で押し切る。安倍晋三政権の強引な手法がまた繰り返されるのだろうか。

 特例的に検事総長らの定年延長を可能にする検察庁法改正案は週内の衆院通過こそ見送られたものの、与党は無修正で早期に成立させる方針を変えていない。

 検察幹部が役職定年を迎えても内閣や法相が認めれば延長が可能となる規定を設けたことにより、内閣が恣意(しい)的に検察人事に介入できるようになるとの疑念は解消されないままだ。政府・与党は考えを改め、やはり出直すべきだ。

 きのうの衆院内閣委員会には、野党の求めにやっと応じて森雅子法相が出席した。しかし定年延長の際の具体的基準など説得力のある答弁は相変わらず乏しかった。

 今回の問題は、政府が1月末、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を閣議決定したのが発端だ。黒川氏の検事総長への道を開くための脱法的な手法であり、改正案はこの前例のない決定を正当化するものだとの批判は消えない。

 にもかかわらず安倍首相は先の記者会見で「検察官は行政官であり、改正で三権分立が侵害されることはなく、恣意的な人事が行われることは全くない」と語った。

そして内閣が検察幹部の人事を行うのは今までと全く変わらないとも述べた。

 そもそも黒川氏の人事自体が恣意的ではないかという疑念から問題が起きていることを忘れているのか。検察は首相も逮捕・起訴できる強大な権限を持つだけに独立性が担保されなくてはならない。その点も意識的に軽視している。

 元検事総長ら検察OBが改正案に反対する異例の意見書をきのう法務省に提出した。抗議の声は国民の間にさらに拡大している。

 懸念する意見は与党にもある。ところが、採決の際には退席する考えを表明した内閣委の自民党委員を即座に差し替えるなど同党執行部は異論封じに躍起だ。公明党も「しっかり説明を」と繰り返すだけでひとごとのようだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に力を注ぐべき時に与野党対立をあおる改正案の成立を急ぐのは、「当面総選挙はなさそうで、それまでには国民は忘れる」と高をくくっているとしか思えない。

**********日経新聞2020.5.16*************
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59163690V10C20A5SHF000/
[社説]拙速な検察庁法の改正は禍根を残す
社説
2020/5/15 19:05

検察庁法改正案の審議が紛糾している。検察官の定年を引き上げるとともに、内閣や法相が必要と認めた検察幹部についてはさらに勤務を延長できるよう盛り込んだ特例の規定をめぐり、衆院内閣委員会で与野党の意見が激しく対立しているからだ。

こうした政府の判断による特例措置は、検察の政治的中立性や独立性に懸念を抱かせる。検事総長人事などに政権の意向が反映されているのではと受け止められるだけで、検察の捜査や刑事処分に対する信頼が揺らぎかねない。

委員会での審議は8日に始まったばかりだ。政府・与党は今国会での成立を目指して先を急ぐが、ことは検察組織にとどまらず、刑事司法の根幹にもかかわる。

数の力で審議を打ち切ったり、採決に持ち込んだりしてよい話ではない。将来に禍根を残さないよう十分に時間をかけ、国民に分かりやすい丁寧な議論を行うよう求める。

改正案では検察官の定年を、現在も65歳の検事総長をのぞき63歳から65歳に段階的に引き上げる。同時に役職定年を設けるため、検察首脳もほとんどの場合、63歳でいち検察官に戻る。

だが政府が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めれば検事総長は最長68歳まで、検事長などは66歳まで同じ職にとどまることができる。延長を認める特例の基準は明確にされていない。

検察は行政組織であるが、同時に刑事司法の中核を担う。あらゆる事件の捜査ができ、起訴するかどうかを決める権限をほぼ独占する。時の政権やその周辺の刑事責任を追及することもある。「準司法機関」と呼ばれるゆえんだ。

このため他の国家公務員とは異なる強い身分保障がなされる一方で、定年になれば例外なく一律に退職する制度とし、これまでそのように運用されてきた。

ところがこの法案の国会提出に先立ち、政府は1月に黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を閣議で決めた。その理由や経緯について国民が納得できるような説明は尽くされておらず、今回の法案はこの定年延長を後付けで制度化する形になってしまっている。

加えて国家公務員の定年を延ばす国家公務員法の改正案と一括して審議をしていることが疑念を深めている。検察庁法の改正案は国家公務員法とは切り離して、法務委員会で堂々と審議をすべきだ。

************東京新聞2020.5.16********
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020051602000155.html
検察庁法改正案 法が終わり、暴政が…

2020年5月16日


 政権による「特例」人事を認める検察庁法改正案。与党は成立を強行しようとしている。民主政治を踏みにじる手法はいけない。

 「ルイ十四世の『朕(ちん)は国家である』との言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢である」

 「高名な政治思想家ジョン・ロックは『法が終わるところ、暴政が始まる』と警告している。心すべき言葉である」

 検事総長や検事長など検察幹部だったOBたちが十五日、こんな言葉とともに同改正案に反対する意見書を法務省に提出した。異例中の異例の出来事である。法務省の案にかつてのトップらが反対するのだから。

◆政権の意に忖度しては
 松尾邦弘氏らロッキード事件の捜査にたずさわった元検事らの名前が意見書に並ぶ。思い出の話もつづられた。当時の神谷尚男・東京高検検事長の言葉を元検事たちは覚えていた。

 「この事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後二十年間、国民の信頼を失う」「(八方ふさがりの中で)進むも地獄、退(ひ)くも地獄なら、進むしかないではないか」-そうして元首相を逮捕・起訴したのである。

 検察は政治の影響を切り離さないと、政界疑獄などの捜査はできない。だから、検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、守られてきた。だが、今回の法案の中には「特例」人事の規定がある。

 六十三歳になると役職から外れ、ヒラ検事となるが、政権が認めた場合に限り、六十三歳以降も検事長や検事正などの地位でいられる。さらなる定年延長もある。

 つまり政権のさじ加減で検察幹部の人事を左右できる。そうなると検察まで政権の顔色をうかがい、捜査にまで忖度(そんたく)が働きかねない。これが問題の中核だ。検察OBの怒りも当然である。

◆「特例」人事を削除せよ
 「今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる」-検察OBたちはずばり法案の意図を読んでいる。

 公正中立であるべき検察が、時の政権の意向により、起訴したり、起訴しなかったり…。公判時にも政権の力学が働くかもしれない。これでは厳正中立とはいえず、司法の一翼を担う検察の信頼が国民から一挙に失われる。法案に反対する根本理由はそれだ。

 国民も同じ心配をしている。会員制交流サイト(SNS)のツイッターで「強行採決に反対する」との書き込みが既に七十万件を超えている。タレントら著名人も多く、九~十日にかけての「ネット・デモ」のうねりが続いている。

 もともと共同通信の三月の世論調査では、発端となった黒川弘務東京高検検事長の定年延長をめぐり「納得できない」の声が六割を超えていた。法案は民意に背くもので、与党が強行策を取っては失望せざるを得ない。

 国家公務員の定年を六十五歳とするのに合わせて検察官の定年を六十五歳とする-これに異論はない。問題なのは政権による「特例」の人事を認める規定である。

 十本もの法案を一括した「束ね法案」になっているから、この特例部分を分離・排除すればよいのだ。野党も主張している。法務省も昨年段階までは、そのような内容の原案をつくり、内閣法制局の内諾も得ていたはずである。特例部分の削除は容易にできると考える。

 安倍晋三首相は十四日の記者会見で恣意(しい)的な人事を否定し、「三権分立は侵害されない」と述べたが、いったい誰がこの言葉を信じよう。内閣人事局を通じ「安倍カラー」の人事を乱発し、霞が関の官僚を操ってきたのではなかったか。検察で同じことが起きる可能性は十分にある。

 衆院内閣委員会での審議の在り方に与党議員から疑義も出ていた。委員だった自民党の泉田裕彦議員(新潟5区)が「国会は言論の府。審議を尽くすことが重要であり、強行採決は自殺行為だ」と表明したとたん、自民党は別の議員に差し替えてしまった。

 この出来事に歌手で女優の小泉今日子さんは「もうなんか、怖い」とツイートした。あまりに強権的な自民党の体質にも不信が出ていることを知るべきである。

◆「正しいこと」を行えと
 野党は徹底抗戦の構えだ。衆院本会議でも参院でも抵抗するだろう。検察の独立性を覆す法案は撤回すべきなのだ。与党も理性を働かせないと、国民の信頼から遠くなろう。

 「正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない」-検察OBたちの意見書には絶叫のような一文もある。法が終わり、新たな暴政がやって来ないようにと…。


********読売新聞2020.5.16************
https://www.yomiuri.co.jp/editorial

5/16の社説に掲載無し、最近のものにもなし。

********産経新聞2020.5.13***********
https://www.sankei.com/column/news/200513/clm2005130002-n1.html
【主張】検察庁法改正案 疑念もたれぬ説明尽くせ
2020.5.13 05:00コラム主張


 検事長らの定年延長を可能にする検察庁法改正案をめぐり、衆院内閣委員会が紛糾している。

 政府・与党は週内にも衆院を通過させたい方針だが、新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中で、野党側は「火事場泥棒だ」などと反発している。これに多くの芸能人らがツイッターへの投稿で参戦して、論争は茶の間にも飛び火している。

 事実の整理が必要である。

 コロナ対策を優先すべきだとの批判は当たらない。重要法案であればいくらでも並行して審議することは可能である。

 改正案は検事総長以外の検察官の定年を現在の63歳から65歳に段階的に引き上げ、63歳に達した次長検事と検事長らは役職を外れる「役職定年制」を設けるというものだ。これは国家公務員法の改正に伴うもので、野党も基本的に反対はしていない。

 問題は特例として、内閣が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めた場合、引き続き次長検事や検事長を続けられると定めたことだ。これに野党などは「内閣が恣意(しい)的に人事介入できる」と反発している。

 しかもこの特例は、黒川弘務東京高検検事長の定年を半年間延長するという前例のない閣議決定が行われた直後に加えられた。森雅子法相がいくら「東京高検検事長の人事と今回の法案は関係ない。法案自体は数年前から検討されていた内容で問題ない」と強弁しても、疑いは簡単に晴れない。


 そもそも森法相は内閣委の審議に参加していない。「国民の誤解や疑念に真摯(しんし)に説明したい」というなら、検察庁法の改正案は内閣委から分離して法務委員会で審議することが筋である。

 黒川氏の定年延長について森法相は2月、「検察官としての豊富な経験知識等に基づく部下職員に対する指揮監督が不可欠であると判断した」と述べた。

 こうした属人的判断が改正案の特例に反映されるのか否かが問われている。疑念をもたれぬ説明を尽くすには、法務委での審議が必要だろう。

 検察は捜査や公判を通じ、社会の安全と公平、公正に重大な役割を担う。時に捜査のメスは政府・与党に及ぶこともある。検察がその仕事を全うするには、国民の信用、信頼が欠かせない。それは政治も同様である。

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