波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「ウラジオストックの空に夢を」⑧

2020-07-11 14:42:29 | Weblog
山内と名乗った男は玄関であいさつをし、手土産を置くと通され合間に座ると静かに話し始めた。この山内氏は同じ岡山でも西にあたる高梁というところのコメ問屋として商いをしていた。その商いは近郊だけではなくその北部にできた三菱金属の鉱山への専属の店でもあった。山内氏は若い時からその鉱山は商いを続けているうちにそこで採掘され製品になる「べんがら」の魅力に取りつかれ、何時しかこれを自分も扱ってみたいと考えるようになっていた・鉱山から町へ下る沿道にできた小さな商いではなく、これを機会を使って大量に製造し販売をして財を成したいとの考えがあった。その為に高橋を離れコメ問屋も譲り新しい土地を求めて県内を回り、工場を建てる許可を得るために奔走した。何しろ真っ赤な顔料を扱うだけに人の生活に影響があるために簡単には許可が下りず、くろうをしたようである。そして少し人里離れた山の谷あいの辺びな場所に工場を作ることが出来た。その製造は長年見てきた技術を持ってできたのだが、これを市場へ販売するのは全く別な仕事である。山内氏はハタと困ってしまった。「どうしてこれを売ることが出来るだろうか。作ることはできるが、これを売らなければ、お金にならない。」
そこで何とか販売をしてくれる人を探さなければと悩んだのである。するとある知人が岡山の神主のせがれで今、敦賀にいる🅼という人がいるが、いちどあってみたら」と紹介された。「岡山の人間で神主のせがれなら、悪い人間ではなさそうだ。一度会ってみよう」山内氏はとりあえずあって自分で確認すべく、岡山から通津がへと向かったのだ。

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