波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

 コンドルは飛んだ  第37回

2013-02-01 11:07:00 | Weblog
数日後社長は出社すると、朝礼のあとすぐ専務を社長室に呼んだ。田舎の狭い事務所だが、何とか社長室と専務室は個室として備えられていた。
モーニングコーヒーをおいしそうに飲みながら社長は専務を迎えた。
「近日中に上京してこようと思っている。本社常務にあって、今回の計画を一応私の個人的な希望として説明しようと思っている。問題は資金でいよいよとなった時に常務の権限で何とかバックアップして貰うことをお願いしておこうと思っている。最低でも10億くらいは概算見ておかなければならないからなあ。それと東京営業所へ廻り、所長とじっくり営業の見解を確認しようと思っている。もちろん数字だけではなく裏付けとなる市場が見込めるのか、どうかその辺がポイントになるがね。」とそこまで一気に話した。
専務は「そうですか。社長はこの計画を進めるつもりですね。分かりました。」
社長はその相槌を聞いてから続けた。「問題はこの間の会議で分かったように社内に
反対意見がまだ多いということだ。勿論トップダウンで決めてしまえばやれないことはないが、できれば社内統一意見として進めたいと思っている。その辺の根回しと調査も頼んでおきたい。それと出来れば工場建設地の現地調査をしたいと思っている。
行くすれば東南アジア(アセアン)地区となると思うが、具体的にどこの国を回るか
その検討をしっかりしておいてほしい。常務の同意が確認できれば、二人ですぐ出かけたいと思っている」成るほど社長はもう腹を決めている。専務はそこまで考えていなかったが、改めて社長を見直した思いで聞いていた。
「分かりました。この間の財務部長の意見はあれ以上になるとは思えないし、それに追従するものもそんなにいるとは思えませんが注意して行動を見ておきます。
現地調査は現段階では台湾、タイ、フイリッピンは除かなければならないでしょうけど、その他のインドネシア、シンガポール、マレーシアは候補に上がりますね。いずれにしてもお帰りまでにインフラを含めて詳しく調査書を作成しておきます。」
専務も乗り気だった。辰夫は久々に水を得た魚のように元気を取り戻していた。
元来不可能なことを可能にする挑戦意欲の強いところへ火がついたような感じである。
社長が上京して社内が少しいつもより静かになっていたある日、財務部長がひょっこり
専務室へ入ってきた。
「専務、社長がお帰りなったら、これをお渡しください。」と言って一通の封書を机に置いた。そこには「辞表」と書かれていた。

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