波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「従妹どうし」

2021-03-02 10:27:58 | Weblog
ある日の午後突然電話が鳴った。最近は子供たち以外から電話が外からかかることは滅多にない。昔の友人、知人は年ごとに減り続け、年賀状の数も年々減り続け、増えることはない。電話も数少ない姪っ子から年に何回か、掛かってきて安否を尋ねられるくらいである。「誰だろう?」とでんわをとる。いつもの明るい声が聞こえてきた。ただ一人の同じ年齢の「はるちゃん」からだった。「元気してるかい」父方の妹の子供で同年齢とあって、昔から東京でも付き合ってきた。父方の家系は神官であったこともあり、従妹はまだ90を過ぎても湊川神社の仕事をしているとのこと「みんな元気かい」と聞くと、「年は取ってるけど、まだみんな元気だわ」彼は末っ子であって上に姉と兄がいるのだが、姉は京都で今年100歳を迎え、まだ元気で一人で出かけることもあるという。「驚いたね。うちの家系は長生きなのかね」と二人で笑った。不思議なものでそんな会話をしていると、昔の子供頃を思い出す。東京で育った私はその従妹の田舎へ行くと必ずそのおばの所へ遊びに行っていた。叔母はことのほか優しく小さな体を曲げながらやさしく大事にしてくれたことを思い出す。とんぼや蝉取りはその頃の最高の楽しみであった。「おばさんにはとてもよくしてもらったよ」「俺はお袋には叱られたことがなかったよ」そんな会話がいつまでも続き、二人はすっかり昔に返っていた。
「もう二人きりじゃけ、もう少し元気で頑張ろうや」という声に励まされて電話を切った。久しぶりに子供に返って心温まる一時であった。

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