波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

 オショロコマのように生きた男  第72回 

2012-02-14 09:25:25 | Weblog
「村田さん、つかぬ事をお聞きするんですが野間さんは今何処にいるんですかね。先日から会社へは顔を出さないし、連絡がつかないんですよ。何かご存じないですか。あなたが保証人と言うことで何か知っておられるかと思って」全く思っても居なかったことを聞かれてとっさの返事が出来なかったが「えーそうなんですか。私のところへも何の連絡もないんですよ。自宅は分かりますが本人との連絡は出来ますかねえ。」と言う。「自宅はこちらでも分かっているんですが、本人との連絡がつかなくて困っているんです。」「分かりました。何とか調べて分かり次第本人から連絡させますので、ご迷惑かけてすみません。」
電話を切った後、村田はやれやれまた病気が始まったかと暫くは呆然として何も頭に浮かばなかった。少し冷静になったところで、池田なら何か知っているかもしれないと思い、連絡を取ってみた。
「池田さん、野間さんに連絡を取りたいんだけど何とかならないかなあ。」「いやあ、私も野間さんの連絡先は聞いてないんです。何しろいつも一方的に彼のほうから連絡が来て話すくらいで、こちらから連絡したことはないんですよ。」という。
村田はそうかもしれないと改めて納得した。そんな事をいちいち気にして行動している男でないことは充分知っているつもりだったが、咄嗟に何とかしなければと思ったが、よく考えれば分かることだった。そして探すことを諦めた。
村田はその後忘れるともなく忘れて過ごしていた。そんな所へ野間から電話がかかってきた。「悪い、悪い。迷惑かけたようだね。すっかり連絡するのを忘れていて今会社へ電話して波賀さんに謝ったところだ。又ゆっくり話すけどちょっと急用が出来て身動き取れないんだ。」と説明があり、やれやれこれで一安心とほっとした。
特別悪い影響はないと思いながら何かよくよくの事があったんだろうと驚きと安心が半々だった。何も話さなかったけど元気そうな声を聞いて安心していた。それとひょっとして又D社を去ることになるんではないかと不図思ったりした。
その後野間のことはその一件以来すっかり忘れていた。池田からも連絡はなくその年も暮れて新年を迎えていた。
池田からいつものように新年の挨拶があり、二人は「一度食事でもしようか」ということになった。神田駅前の居酒屋はまだ新年会のグループでにぎわっており、どの店も混んでいる。そんな雰囲気を楽しみながら二人は向き合っていた。
正月休みで少し太ったかに見える池田が頼もしかった。

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