波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

音楽スタジオウーソーズ    第38回

2015-03-04 11:22:06 | Weblog
慰謝料の金額は田中にとって考えていなかったし、もちろん準備も無かっただけに大きな負担となった。保険料を解約したり、親や知人に借りたり、何とか工面することが出来たが、生活は一変した。今までは何となく心にも余裕があったが、今は毎日の暮らしも楽ではなかった。しかし彼女とのデートは止めるわけにもいかず続けていた。
コーラスにも出ていたが、今までのような気持ちで歌う気持ちにもならず、彼女との時間だけが慰めだった。店の好きジュールは相変わらずだった。評判を聞いてぜひ出演したいという申し込みは続いていて一ヶ月の予定は決まっていたが、全部埋まることは無かった。そんな時間はコーラスの練習に当てたり。、ホールの貸し出しに当てたりしていた。
時には光一がバンドの助手でアルバイトで頼まれていくこともあったりである。
でもぽっかりと休みが取れると張ること二人でドライブを兼ねて近所の温泉でのんびり時間をつぶすのが最大の楽しみだった。
元来好きな音楽の世界で時間が過ごせることだけが楽しみである光一にとってそれで不満は無かったが、春子はそうは行かなかった。経理を任されてその日の売り上げや経費の事を考えるときが休まることはなかった。
来客の波は激しくチケットが売り切れるときもあるが、ばらばらとホールが空いているときは経費倒れになりはしないかと採算が気になる。
チケットの価格は相場もあり、出演者のきぼうもあるので勝手には出来ない。
そしてギャラは当然客の数に関係なく支払うことになる。とう全赤字になることもあるのだ。そんな毎日の中で春子は光一に相談することも出来ずひとり出悩むことが多かった。父はそんなことには無頓着でコーラスの日には出かけてきて楽しんでいる。
偶に町会の人たちをつれてくることがあるが、父の付き合いとあって、二度とくることは無かった
そして父は相変わらず普段は町会の仕事に熱心だった。最近は他町会と渉外の役を買って出てた他町会へも良く出て行くようになっていた。
近所の町会との連合長老会があってそこへ出かけていくのである。
その会合で年に一度の「旅行会」の打ち合わせが行われた。