波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

白百合を愛した男   第84回

2011-04-11 13:02:58 | Weblog
店の女性やママに見送られ、えらいさんの後について迎えの車の待機している場所へ向かう。のろのろと乗り込んだ車の後から敬礼で見送り、ようやくお勤めが終わる。
もう終電車の出た後とあって、電車は無い。無線タクシーを利用して帰るように指示されて帰ることになる。シートに背を持たせ走り出して、ほっと一息つく。少しづつ我に返り
自分に戻る気持ちになる。あの時間は何だったのだろう。少なくても慰労ではない。
まして宴会でもない。そんなことを考えているうちに、店にいたときのことを思い出していた。「ねえー、君、血液型は何型?」隣に坐っている若いホステスに話しかける。
「何型だと思う。」「そうね。日本人はA型が多いって言うからA型かな。」「はずれ」
こんな若い女性と話す機会がなかった、やはり無意識に気持ちが浮いていた。「えー、じゃあB型かな。」「あたり。」「そうなの。実は私もB型なんだよ。」「そうなの。じゃあ縁があるのかしら」「でもね。B型っていうのは、特徴があって好奇心が強く、何でも新しいものに飛びつく癖があって、しかも長続きがしないで、いい加減な所があるって聞いたことがあるよ。」「そうなの。」完全に調子付いて周囲のことを忘れていた。
とその時、隣の席から大きな声が飛んできた。「馬鹿言ってるんじゃない。お前だけがB型じゃない。何を言ってるんだ。」みると、こちらをにらんでいるえらいさんの顔がこちらを見ている。雰囲気の良さの中で、つい浮かんだ思いを冗談をしゃべったつもりだが、ひょっとしたら、彼もB型で自分の悪口を言われたと勘違いしたのか、
、何が癇に障ったのか、虫の居所が悪かったのか、突然の怒声であった。「しまった」と思ったが、もう遅い。「すいません」小さい声で言ったつもりだが、言葉にならなかった。それからの時間の長かったことが忘れられない。いつもの悪い癖が無意識のうちに出てしまったことを、苦い傷になって残っていた。
食事の店も、銀座の店も同じママであったこと、そういえば、この夜の時間のパターンは
今日が始めてではないらしい。既に少なくても、暫く続いているらしい。そしてその費用負担を自分の自由に出来る予算の金額から捻出すると同時に、自分の管轄している関係会社、商社に負担させていると聞いていた。とすれば、このケースは今日だけでは終わらないのか、だんだん不安と心配が頭をよぎってきた。確かに自分の会社の東京予算もある。それは自分の責任に任されていた。それは本社の、社長の自分に対する信頼である。
その信頼を裏切ることにならないか。帰りの車での思いは、次第に悪い方へ傾いていた。