【バイオリンの伊東真奈さん・小川響子さんとチェロの伊東裕さん】
「奈良の俊英ソリスト達」と題したクラシック演奏会が15日、奈良県文化会館国際ホールで開かれた。前日の14日に開幕した「ムジークフェストなら2013」(30日まで)のメーンコンサートの1つ。この日のために特別に結成された弦楽合奏団をバックに、地元奈良県出身の若手演奏家3人がはつらつとした演奏を披露した。
合奏団の構成は女性主体の20人余だが、数少ない男性陣の中には奈良出身で東京交響楽団首席チェロ奏者の西谷(にしや)牧人さんも含まれていた。演奏会は合奏団指揮者・澤和樹さん(東京芸大教授、なら国際音楽アカデミー音楽監督)によるバッハ「G線上のアリア」のバイオリン演奏からスタートした。使用したバイオリンは東日本大震災の被災流木を使って、世界的なバイオリン製作者・中沢宗幸さんが作ったもの。裏板には「奇跡の1本松」の絵が描かれており、内外のバイオリニスト1000人を目標に各地でリレー演奏されている。
この後、芥川也寸志作曲の「弦楽のための三楽章(トリプティク)」に続き、バッハの「二つのバイオリンのための協奏曲」で若手バイオリニスト2人が登場した。伊東真奈さん(写真㊧)と小川響子さん(㊥)。2人とも数々のコンクールで上位入賞を果たしており、将来を嘱望されている。演奏曲は2つのバイオリンの〝対話〟が聴きどころだが、2人の呼吸もよく合って、それを合奏団がしっかり支えていた。
シューマンの「チェロ協奏曲」では東京芸大2年在学中の伊東裕さん(写真㊨)が熱演を披露してくれた。伊東真奈さんの弟で、第77回日本音楽コンクール1位と実力は折り紙付き。合奏団に特別参加した西谷さんは県立奈良高校―東京芸大の先輩でもある。西谷さんも後輩が同じチェリストの道を邁進しているのを自らのことのように喜んでいるに違いない。
最後の曲目は今年がちょうど生誕100年の英国の作曲家ブリテンの「シンプルシンフォニー」。第2楽章のピッチカートの歯切れの良さと、第3楽章の叙情的な旋律を豊かな音量で奏でた演奏が印象に残った。アンコールは同じ英国の作曲家ジョン・ラターの「弦楽のための組曲」第3楽章。指揮者澤和樹さんが再び〝1本松バイオリン〟を使って哀愁を帯びたメロディーを繊細に奏でた。心に染みる音色だった。