く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ウツギ(空木)> 「卯の花」として親しまれ古くから垣根に

2013年06月01日 | 花の四季

【万葉集にホトトギスとの組み合わせで多く詠まれる】

 アジサイ科の落葉低木で全国の山野に広く自生する。花期は5月後半~7月。白い小花が密に集まって下向きに咲く。「空木」の名は幹が中空のため、「卯の花」は卯月(陰暦の4月)に咲くことによる。材は堅くて柔軟性もあるため楊枝や木釘などに利用される。同じ仲間のウツギ属に、花が八重の「サラサウツギ(ヤエウツギ)」や岸壁に生え花が小型の「ヒメウツギ」、葉の表面が灰白色の「ウラジロウツギ」、葉が卵形の「マルバウツギ」、梅の花に似た「ウメウツギ」など。

  万葉集には卯の花を詠んだ歌が20首以上あるが、その多くがホトトギスとのセットになっている。「卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥(ほととぎす)雨間(あまま)も置かずこゆ鳴き渡る」(大伴家持)。万葉集には「鶯の通ふ垣根の卯の花の……」(作者不明)という歌もある。この歌から卯の花が古く万葉の頃から垣根に用いられていたことが分かる。「卯の花腐(くた)し」は卯の花が咲く頃の長雨のこと。「五月雨」の異称で夏の季語にもなっている。そのルーツと思われるのが同じく家持のこの歌「卯の花を腐(くた)す長雨水始(みずはな)に寄る木屑(こつみ)なす寄らむ子もがも」。

 「卯の花の匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)早やも来鳴きて 忍音(しのびね)もらす夏は来ぬ」。これはご存じ、唱歌「夏は来ぬ」の1番目。明治中期、小山作之助が作ったメロディーに、歌人・国文学者の佐佐木信綱が詞をつけた。信綱は万葉集研究の第一人者。「夏は来ぬ」は1番から5番まであるが、作詞にあたって万葉の歌もヒントにしたことだろう。出身地・三重県鈴鹿市にある信綱の記念館・資料館周辺では「卯の花の里づくり」が進められている。

 卯の花は大阪府高槻市の「市民の花」。市内にある「玉川の里」は全国6カ所の「六玉川(むたまがわ)」の1つ。古くから卯の花や月の名所として知られ「歌枕の里」として多くの和歌に詠まれてきた。その「玉川の里」に松尾芭蕉の句碑が立つ。「うのはなや暗き柳のおよびごし」。芭蕉が亡くなった元禄7年(1694年)の初夏の作で、150回忌の1843年に建立された。「玉川の里」の卯の花は6月初旬までが見頃という。

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