く~にゃん雑記帳

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<ムジークフェストなら②> 「遙かなる悠久の響き 涂善祥 中国琵琶の世界」

2013年06月20日 | 音楽

【多彩な音色、透明感あふれるトレモノの響き】

 中国琵琶の名手、涂善祥(ト・ゼンショウ)さんの演奏会が19日、奈良市の奈良県文化会館で開かれた。題して「遙かなる悠久の響き 涂善祥 中国琵琶の世界」。琵琶を10指で自在に操って、自作の「さくら変奏曲」「白帝城追想」や「この道」「オ・ソレミオ」「アルハンブラ宮殿の思い出」など10曲余りを演奏した。中国琵琶の多彩な音色や音楽表現の幅の広さを存分に堪能させてくれる名演だった。

 

 涂さんは中国上海音楽学院を卒業後、1988年に来日し名古屋芸術大学作曲研究生を経て、東京芸術大学大学院で音楽学の修士号を取得。中国国家一級演奏家でもある。2005年の愛知万博では中国館の音楽顧問を務めた。阪神大震災や東日本大震災のチャリティーコンサート、日中国交正常化40周年記念公演(2012年)など内外で精力的な演奏活動を続けており、これまでに開いた演奏会は2700回に上るという。

 この日はチェロの松崎安里子さん、シンセサイザーの海老原真二さん、ピアノのマリ・リーさん、ソプラノ兼打楽器担当の矢野留美さんがバックを固めた。1曲目は自作の「バインゴリンの祭り―競馬」。軽快な琵琶の響きと涂さんの張りのある高い声に圧倒される。2曲目は世界的な作曲家・シンセサイザー奏者、喜多郎の代表曲「シルクロード」。琵琶のトレモノとチェロの深い音色がうまく絡み合って心地よい。喜多郎とは奈良・薬師寺をはじめ内外で度々共演してきたという。

 自作の「白帝城追想」は途中、漢詩の朗詠や大太鼓も加わり、最も印象に残った。2010年の上海万博では合唱団の100人も加え総勢180人で演奏したという。涂さんは演奏に先立って、世界的な切り絵作家だった宮田雅之さん(1926~97)の思い出話も披露した。宮田さんは上海での日中国交正常化25周年の記念展の帰途、機中で脳梗塞のために亡くなった。宮田さんの遺作となった切り絵もタイトルが「白帝城」だった。

 この曲に続いて、ベトナムの印象を基に作曲した「越南素描」を演奏。アンコールはバイオリン発表会などでよく耳にするモンティの「チャルダッシュ」と「荒城の月」「故郷」だった。演奏の合間には日本の琵琶との違いを説明してくれたり、津軽三味線やギター、マンドリンのような音色を出してくれたりした。まさに〝至芸〟といえる名演で、終了後、周りからも「良かったね」「感動した」といった話し声が聞かれた。

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