【ビヨウヤナギに次いで江戸時代、中国から渡来?】
オトギリソウ科の半落葉性の低木。原産地は中国中南部から台湾にかけて。5弁の花びらの真ん中に広がる黄色いオシベを金糸にたとえ、花の形から梅に見立てて、この名が付いた。同じ仲間でそっくりな花にビヨウヤナギ(美容柳、未央柳)がある。花弁がキンシバイより細めで、長いオシベが放射状に突き出しているのが特徴。
渡来時代については平賀源内が書いた「物類品隲(ひんしつ)」の記述などから江戸中期の宝暦10年(1760年)といわれてきた。だが、それより50年ほど前に出版された貝原益軒の「大和本草」(1709年)では「金糸梅(クサヤマフキ)」としてこう紹介されている。「花の形、仲椀のごとし。しべ金糸のごとし。金糸桃より糸短し」。この中に出てくる「金糸桃」はビヨウヤナギを指す。
貝原益軒はその前に出版した「花譜」(1694年)にこの「金糸桃」を取り上げ「花は桃に似て、葉は柳に似たり。しべ長し、金糸のごとし」と記す。だがキンシバイはこの「花譜」では言及されていない。いずれにしろキンシバイが18世紀前半に渡来していたのはほぼ間違いなさそうだ。ちなみに慶応大学名誉教授だった磯野直秀氏(博物誌史)の「明治前園芸植物渡来年表」では、キンシバイは享保2年(1717年)、ビヨウヤナギはそれより100年以上前の慶長8年(1603年)に渡来したとしている。
近縁種に小アジア原産の「セイヨウ(西洋)キンシバイ」や、北米南部原産の「ホソバ(細葉)キンシバイ」など。セイヨウは花の径がやや大きく、オシベが突出していてキンシバイよりビヨウヤナギに似る。静岡県伊東市の松川湖展望広場にはこの時期、約3万株のキンシバイが7月上旬にかけて咲き乱れる。三重県松阪市のカネボウ跡公園(鈴の森)にはセイヨウキンシバイが約7300株。6月中旬~7月下旬が見頃という。「金糸梅水のひかりをためらはず」(六角文夫)。
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