【小学生の男児7人、湯谷神社で熱演を披露】
滋賀県米原市の「米原曳山まつり」が10月12~14日の3日間、秋晴れの下で繰り広げられた。江戸時代からの長い伝統を誇る祭り。“本楽”の13日には鎮守社の湯谷神社で子ども歌舞伎が奉納され、熱演に観客から温かい拍手と声援が送られた。
この曳山まつりは長浜の曳山祭を見習って始まったという。曳山は北町の旭山、中町の松翁山、南町の壽山の3台あり、今年は松翁山で子ども歌舞伎が披露された。役者は3つの町から選ばれた小学1~6年の男児7人。13日には午前9時から”御渡り“があった。
市役所前を出発した行列は途中小休止を挟みながら1時間かけて湯谷神社へ。その後、神事が営まれ、歌舞伎を演じる男児たちは神妙な表情でお祓いを受けていた。
子ども歌舞伎の今年の演目は近松門左衛門の「恋飛脚大和往来」の2幕目「封印切」。市川団四郎さんが振り付けを指導した。語りの太夫は竹本龍豊さん、三味線は豊澤賀祝さん。三番叟で幕開けした。物語の舞台は大坂。大金を扱う飛脚問屋の若旦那忠兵衛は遊女梅川と恋仲になる。
だが、身請けに必要な250両という大金はとても用意できない。そんな中、忠兵衛の友人、八右衛門が梅川を身請けしたいと言い出す。廓「井筒屋」の主人はその申し出を断った。
すると、八右衛門は忠兵衛の悪口を散々言い立て、金がないことをあざ笑う。カッとなる忠兵衛。次の瞬間、懐に入っていた店の金を出し50両、100両と次々に封印を切ってしまう。
忠兵衛は罪の大きさにおののき、梅川にすべて打ち明ける。そして二人は心中を決意するのだった。
終演後、曳山の周りには多勢の観客が押し寄せ、熱演を称えていた。役者の子どもたちも大役を果たした安堵からか、柔和な表情を振りまいていた。
この後、曳山は神社を出て、だらだら坂を下り、南北に走る目抜き通りへ。そこでもほぼ2時間おきに場所を変えながら3回、子ども歌舞伎をお披露目した。
米原では囃子のことを「シャギリ」と呼ぶ。それぞれの山組に保存会があり、独自のシャギリが伝わっているそうだ。リズミカルなシャギリの響きが心地いい。宵宮の12日には曳山が6年ぶりにJR ⋅ 新幹線の線路を跨ぐ米原跨線橋を越えて西町を巡行した。伝統の祭り保存へ地域を挙げて取り組む熱気がひしひしと伝わってきた。