く~にゃん雑記帳

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<日本の「型紙」> 欧米のデザイン改革運動に多大な影響!

2012年07月22日 | 美術

【絵画・ポスターから織物、陶磁器、家具まで】

 京都国立近代美術館で今「KATAGAMI(型紙) 世界が恋した日本のデザイン もうひとつのジャポニズム」展(8月19日まで)が開かれている。着物などの型染めに使われた型紙はその美しいデザインや高い技術が欧米の注目を集め、染色という本体の用途を越えてアールヌーボーなど美術工芸改革運動に大きな影響を与えた。その点、印象派の絵画に影響を与えたという浮世絵に似ている。しかも今なお様々な分野で型紙のデザインが生き続けているという。内外の展示品の数々は改めて日本人の美意識の高さと巧みの技を再発見させてくれ、さらに日本人としての誇りもくすぐってくれる。

  

 会場は「型紙の世界―日本における型紙の歴史とその展開」から始まって、英米圏、フランス語圏、ドイツ語圏ごとに型紙の影響を受けたとみられる作品・製品を展示。最後を「現代に受け継がれるKATAGAMIデザイン」で結ぶ。総展示数は約400点。その中には喜多川歌麿らの浮世絵やルネ・ラリック、エミール・ガレ、ドーム兄弟、アルフォンス・ミュシャらのガラス製品や絵画など、内外の美術館・博物館所蔵の作品も多い。「型紙」という、どちらかといえば地味なテーマにスポットを当て、関連する作品の収集に奔走した関係者に改めて敬意を表したい。

 まず驚いたのは浮世絵と同じく、型紙も海外の美術館・博物館が実に大量に所蔵しているということ。ドイツのドレスデン工芸博物館のコレクションはなんと約1万6000枚に上るという。会場の一画に「ライデンの里帰り型紙」というコーナーがあった。19世紀前半、オランダ商館医師として日本に滞在したシーボルトが母国に持ち帰った18点のうちの「稲穂」などの3点。ライデンの博物館が1837年にシーボルトから購入したという。そのそばにフランスの染色工業の中心地ミュールーズの染色美術館所蔵の型紙も出展されていた。

 型紙は江戸時代から明治時代にかけ、男性の裃(かみしも)や羽織、浴衣、女性の小紋や中形などの染め模様に多く使われた。その型紙を染め屋に多く供給したのが現在の三重県鈴鹿地方。「伊勢型紙」と呼ばれ、最盛期には全国の9割を占めたそうだ。だが、明治後半になって海外から染色技術が導入されると、次第に活躍の場を失っていく。しかも型紙はもともと消耗品扱いされており、染色業者の廃業などに伴って大量に海外に流出した。特に1880年代から90年代に多く流出したという。

 松葉や菊の花、ツタなどの型紙の細かな繰り返し文様は、欧米で斬新なデザインと受け止められたのだろう。英国ではデザイン改革運動の中で室内装飾の分野に欠かせない技法となり、ドイツやフランス、米国でも様々な分野に取り入れられた。しかも今なお型紙の技法は生き続けている。

 英国のブリントンズ・カーペット社は所蔵の型紙からデザインを起こし、ずばり「KATAGAMI」シリーズのカーペットを発売、世界中のホテルや空港などで使われているという。会場の出口そばに英国の陶器メーカーの主力商品というティーカップなどの食器類が並んでいた。濃紺地に小さな花柄を無数にちりばめた、型紙で染めた小紋のような図柄。そのデザインは懐かしさとともに新しさも感じさせてくれた。

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