【龍谷ミュージアムで開館1周年の記念展】
今から約2500年前の紀元前5世紀にインドで生れた仏教はガンダーラや中国などを経て、約1000年後の紀元6世紀半ば、日本に伝わった。その仏教伝来ルートの解明を目的に、日本で最初に学術調査したのが浄土真宗本願寺派・西本願寺の「大谷探検隊」(1902~14年)。龍谷大学にはその当時に収集した膨大な史料約9000点が伝わる。特別展「仏教の来た道―シルクロード探検の旅」(~16日まで)ではそれらの文物などを時系列に沿って展示、仏教伝来の流れを分かりやすく紹介している。
仏教総合博物館「龍谷ミュージアム」は京都・堀川通を挟んで西本願寺の向かいにある。龍谷大学創立370周年の記念事業の一環として、西本願寺の全面的な支援で昨年春開設された。特別展会場は同館の2~3階。「仏教の源流」から始まって「西域の仏教文化と多様な宗教」「中国への伝播」「西域の文字と言語」「大谷探検隊と仏教伝播の道」の5つに分けて211点を展示している。
仏像が造られ始めるのは紀元1世紀ごろから。仏の姿はそれ以前、法輪や仏足跡などで象徴的に表現されていた。展示の1番目は仏像造立から間もない2~3世紀のガンダーラ出土の仏立像(写真㊧)。高さ約1.2mで、少し西洋的なお顔が印象的。これらの仏像3点に続いて、釈迦の生涯をレリーフで表現した1~3世紀の「仏伝浮彫」がずらりと並ぶ。その中には東京国立博物館や大阪・四天王寺など外部所蔵のものも含まれていた。これだけ古いものをよく集めたものだ。
4~5世紀のハッダ出土の仏坐像(写真㊨)はその整ったお顔立ちなどから注目度が高く、記念絵葉書でも売り上げナンバーワンという。中国では北魏時代の5~6世紀ごろ、仏像造りが本格化する。その代表が雲崗石窟の大仏群。中国式の衣をまとい、ややほっそりしたお姿となる。これが飛鳥仏の源流になっているという。7~8世紀ごろの壁画や菩薩像には極彩色を施されたものが目立ってくる。異国の宗教である仏教が各地域に適応した形で次第に浸透していく過程がよく分かった。
中国・北周時代(6世紀後半)の大理石彩色「ソグド人墓」(MIHO MUSEUM蔵)は死者を安置した寝椅子。13枚の石版に隊商や葬列などのレリーフがくっきり刻まれていた。彼らが信仰したゾロアスター教的な表現も見られるという。メソポタミア出身のマニ(216~276年)が開いたマニ教の経典なども印象に残った。マニは釈迦やイエスなど以前の宗教家が自ら教えを書き残さなかったために教義が歪められたと考え、マニ文字を発明して経典を書き記した。