く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「自在力 見えない道を歩く」

2012年07月29日 | BOOK

【有馬頼底著、講談社】

 筆者は臨済宗相国寺派の第7代管長で、京都の相国寺、鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)の住職も兼ねる。1933年、東京で競馬の「有馬記念」を創設した有馬頼寧伯爵(元農林大臣で日本中央競馬会理事長)に連なる名家に生まれたが、両親の離婚のため8歳で大分県日田市の禅寺で得度。現在は布教の傍ら、社会福祉活動や京都の景観問題などにも積極的に取り組んでいる。

    

 本書は「心を自在にする」「〝非常識な力〟を鍛える」「人生をまるごと遊ぶ」「死は一服のお茶である」の4章構成。仏教、禅宗の言葉などを挙げながら身の処し方などを分かりやすく指南する。例えば『一掃除二信心』。お経を唱える前にまず掃除せよという教えだが、その掃除とは「心にあるゴミを取り除く行為」という。『明歴々、露堂々(みょうれきれき、ろどうどう)』は何事も包み隠さず、ありのままの姿をさらけ出すこと。そうすれば、教養をひけらかす必要も金品で飾る必要もなく、本物の品格が無言の中に自然と出てくると説く。

 『鶴に冲霄(ちゅうしょう)の心あり』。揮毫を頼まれるとよくこう書くそうだ。鶴が中天を目指し高く高く飛ぶ様から、理想や志を高く持ちたいという自身の気概を表しているという。「人間、死ぬまで絶えず勉強、絶えず修行」。『無功徳』。見返りを求めず動く人には他人の助けや運などが多く返ってくる。『不殺生戒(ふせつしょうかい)』。単に生き物を殺すなという意味ではなく、相手を〝生かしなさい〟という教えが込められている。よく「地球を大事にしよう」というが、「生意気を言ってはいけない。その発想には人間の思い上がりが見える」とずばり。『山川草木悉皆成仏』の教えが今後、環境問題に取り組む大前提になるのではないかとみる。

 「いい加減」というと、ちゃらんぽらんという悪いイメージがあるが、「仕事でも人間関係でも〝いい加減〟が大事」。過労で倒れたりストレスがたまったりするのも、いい加減にやらないから。では程よい加減にするには? 「鳥のような眼を持って俯瞰して全体をとらえること」。その他にも「言葉に〝人間力〟が表れる」「休むから人は疲れる」「経済至上主義から開放されて、人は〝人〟になる」「人類が進化しているのは嘘である」「〝勝ち組〟〝負け組〟は、人間には決められない」「目標の先にこそ、本当に大事なものがある」等々、示唆に富む説話が多く盛り込まれている。

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