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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

地滑り少子化の行く末

2025年06月08日 | 社会保障

 2024年の合計特殊出生率は1.15人で、2018年の1.42人から、わずか6年で2割減という地滑り的な少子化が進んでおり、未だ奈落に届いていない。出生率の低下は世界的なもので、結婚と出産がコロナ禍とその後のインフレにいかに脆弱だったかを示しており、やはり、出生は、おカネの問題であることを端なくも表している。出産は時期を逃すと取り戻しがたく、景気の回復をのんびり待つわけにはいかない。

………
 少子化は経済的には不合理な行動であり、極端に進むと、負担の苦しさから、親でもない老人の面倒まで見切れないという反乱が避けられなくなる。現行の年金や医療がどうあれ、他人の子供が易々と養ってくれると期待すべきでない。子供を持たないことは、悲惨な老後につながりかねないという、経済的に不合理な行動であることを自覚した上で、選択しなければならないものだ。

 日本の場合、コロナ前の2019年からの少子化加速の背景には、2018年以降の15-24歳の女性の就業率の急上昇があると考えられる。就業できれば結婚に頼る必要はないし、結婚しなければ就業は続けられるという関係だ。男性との格差が少ないほど、結婚に魅力を感じなくなるし、就業していれば、社会保障の下で老後も支えてもらえるように思えてしまう。他人の子の重荷であるという危い本質など考えずに。

 今回の年金改正では、積立金の「流用」という批判が渦巻いた。この改正は、少子化の重荷をマクロ経済スライドで広く分かち合おうとしていたものが、政治経済的な制約で上手く作動せず、歪になったものを本来の形に直そうとするものだった。目的に変わりないという意味で、技術的なものであり、損得論が絡めば、蒸し返しの面倒にしかならないものだった。案の定、不公平だろうとオレが損するのは嫌だ論が始まった。

 積立金を作ったのは、30年以上前に現役だった世代で、その取り合いは遺産争いでしかない。国民年金組には使わせたくないようだが、その大半は非正規などで、厚生年金組が正社員のポストを占めて追い落とした者である。負け組には遺産も渡さないわけで、事の本質は、公平性など度外視の醜いものだ。こんな国民性を見せられたら、子供を持たない者にも公平に社会保障が給付される未来は、とても想像できまい。

(図)

………
 子供がなくても社会保障が支えてくれるという幻想があるために、目の前の経済状況の変化で、大きな少子化が起こってしまう。起こってしまった以上は、なんとかしのぐ施策を用意せねばならぬが、非正規への適用拡大という最後の手しかなく、低所得者が対象である以上、軽減措置は必須だ。しかし、そいつらにはカネを渡したくないという醜い議論が出る気がする。少しは公平への気持ちがなければ、「蜘蛛の糸」になる。


(今日までの日経)
  縮む建設業、工事さばけず 投資に影、成長下押し。家事・育児時間、男女差縮む。出生数初の70万人割れ 縮む日本、揺らぐ経済基盤。人口「低位」の未来図、現実味 出生率1.15で最低更新 生産年齢層は5割減 基礎年金4割弱減額。労組トップ・減税ポピュリズムと戦え。博報堂、スター社員をAIに。長嶋茂雄・磨いたフルスイング。

 


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