経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクスにおける「消費抑圧」

2022年07月24日 | 経済
 アベノミスクは、異次元の金融緩和と機動的な財政出動の二つが特徴として語られがちだが、徹底した「消費抑圧」も、公言されることのない政策の柱である。それゆえ、消費が弱く、物価が上がらず、売上が高まらず、賃金が伸びない仕儀となった。黒田日銀がいくら「金融抑圧」をかけ、痛いほど円安にしたところで、抑圧される消費を超えるような輸出の増加でもなければ、2%物価目標をクリアしてのデフレ脱却とはならないのである。

………
 7/22に家計可処分所得の1-3月期がGDP速報の参考系列として公表され、2021年度の数字が判明したこともあり、これで推移を見てみよう。まず、アベノミクスでは、雇用者報酬が伸びた。質はともかく、量が増大したのは、立派な成果であり、リーマンショック後の減少と低迷からの脱却に成功している。ところが、家計消費は伸びなかった。所得が増せば、消費も増えるという「法則」に反する異常事態である。

 そこで下の図から分かるのは、家計消費は、雇用者報酬には似ていないが、可処分所得には重なるという事実だ。つまり、雇用者所得は増えたが、税や社会保険料が引かれる可処分所得は、あまり増えておらず、それに従い、「法則」どおり、お金がないので、消費に使えないというわけである。公言されない政策が大いに効果を発揮し、円安でもたらされた景気回復の成果を帳消しにしていただけなのだ。

 なお、消費税は可処分所得に反映されないので、増税の影響は、物価上昇分として、実質化する方法で見ることになる。当然ながら、実質の可処分所得は目減りしてしまう。ただし、2019年の増税の際は、幼児教育の無償化が行われたため、差し引き、物価は上昇していない。もちろん、大半の家計にとっては恩恵がないので、教育費以外の物価上昇によって、消費は抑圧される。

 アベノミクスを「積極」財政と勘違いする向きは多い。確かに、2013年に大型の補正予算を組み、景気回復局面なのに、「機動的」財政出動を行い、成長の加速に成功したが、それとて、15か月予算の枠組みで比較すれば、前年に東日本大震災の補正があった関係で、財政規模は縮小している。端的には、アベノミクスは金融抑圧と消費抑圧の組合せであって、宣伝文句を勝手に誤解してはいけない。

(図)


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 最新の1-3月期の可処分所得は前期比+1.3%だった。給付金の類がマイナスに戻る中、雇用者報酬などの伸びが支えた。前期比+1.0%だった名目の家計消費の動きとも整合的である。もっとも、実質だと+0.0%になってしまうけれども。これから、アベノミクスの教訓を活かすとすれば、GDPの過半を占める消費をこんな状況にしておいて、なぜ成長しないのかと悩まないことだね。何らかの改革が必要という思い込みから早く脱却すべきだよ。


(今日までの日経)
 新型コロナの国内感染、初の20万人超。円、一時135円台に上昇。子ども食堂、6000カ所超に。物価の二極化鮮明に サービスは下落。社会保障費、自然増5000億円台半ば。電気代、前年比3~4割高。欧州中銀、0.5%利上げ。冬の電力確保へ総力戦。SK、工場増設計画凍結。日清食品、アプリ自前開発 25時間で完成。日銀埋蔵金は使えるのか。


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