12/26の11月消費者物価で、「財」の季節調整値が前月比+1.3にもなっていたのを見たときは、商業動態の小売業が実質でプラスになるか心配だったが、名目前月比は+1.9と物価上昇を超える大きな伸びとなった。物価は、運輸や外食の力で「サービス」でも上昇しており、いまやデフレは脱却していると言って差し支えあるまい。消費は停滞を脱し切れずにいるものの、景気の「実感」では、いわば供給側の景気ウォッチャーは9月に50超えを果たしており、あとは消費者態度指数である。この50超えが成れば、日本経済の復活は完了だ。
……
内閣府がデフレ脱却の目安とする4つの指標、消費者物価、GDPデフレーター、単位労働コスト、GDPギャップは、7-9月期には、いずれもプラスになっているので、既にデフレを脱却しているとも言えるが、消費者物価には、円安と原油高の影響があり、それら抜きでも上がっているかの見極めも必要だ。そこでポイントになるのは、サービスの価格であり、12月までの東京都区部の動向によれば、3か月連続での上昇となった。
サービスの中では、帰属家賃や通信が低下する中、家事、医療福祉、運輸、外食が上がっており、差し引きしてもプラスになっている。宅配便の例で分かるように、人手不足になり、賃金を上げざるを得なくなり、価格に転嫁されるという常識的なルートである。日銀の異次元緩和で、物価への期待が強まったからではない。机上の空論に陥らず、労働需給の多寡が賃金を通じて物価を動かすプリミティブな現実を覚えておきたい。
他方、懸案の消費は、商業動態が大きく伸び、11月家計調査の消費水準指数(除く住居等)も前月比+1.3となったことから、今後発表される消費総合指数や消費活動指数は、前月比+0.5位の高めの伸びが見込めよう。そうなると、10,11月平均は、ようやく、前期比が水面上に顔を出す形になる。消費が巡航速度の前期比+0.4まで行くには、この勢いで12月も伸びなければならない。なかなか険しいが、可能性がないわけではない。
消費の伸びは、11月に急に所得が増したわけでなく、極端に低かった消費性向の回復によってもたらされた。この背景には、景気ウォッチャーと消費者態度指数の調査項目が示すように雇用環境の一段の改善がある。11月の消費性向の回復は、先に公表されていたウォッチャーや消費態度の結果から、予測できたものだった。消費性向の72.0は低めの数字なので、まだ上がる余地が残っている。
(図)
………
「消費が振るわないのは、財政赤字に対する将来不安があるから」という、まことしやかな「理論」が語られるが、実際の消費性向は、「雇用環境が良くなると高まり、悪くなると下がる」という、誠に庶民感覚に合致した動きを見せる。ちなみに、株価と雇用環境への認識は、似た動きをするので、世間的には、「株が上がった資産効果で消費が増えた」と語られたりする。勤労者世帯は、あまり株を持たないと思うのだがね。
2017年の消費を回顧すると、年明けから春にかけて大きく伸び、その後は減退、底入れという展開であった。将来不安がこのように変動したと説明するのは不自然で、素直に読めば、輸出等の追加的需要に従い、景気が変動し、それに消費も連れ添ったとなる。この見方なら、1年未満の短期の消費の変動も説明可能で、予測も立つ。むろん、政策的インプリケーションは、「緊縮財政で景気を悪くしたら、輪をかけて消費を減らす」でしかない。
一方、供給面に関しては、11月の鉱工業指数は、判断が22年ぶりに「持ち直している」とされた。リーマン前の最盛期を飛び超え、ハシモトデフレ前の1996年1月以来なのだから、感慨深い。設備投資を占う資本財(除く輸送機械)の出荷は、10,11月平均が前期比+2.8と好調だ。反面、建設財の出荷は、公共事業の剥落、貸家投資の峠越えがあって、前期比-1.3と息切れが見られる。建設投資に代わり、設備投資が成長を牽引できるかが今後の焦点だ。
11月は、労働力調査にも久々の動きがあり、9か月ぶりに失業率の更新を果たし、2.7%となった。男性雇用者は概ね横バイだが、女性雇用者が再び加速した。また、11月の職業紹介では、新規求人倍率の「除くパート」が前月比+0.04と、3か月連続の上昇で2.11倍となった。11月は新規求人数が伸び、特に「除くパート」の求人で、消費関連の卸・小売や飲食宿泊が強まっているのが特徴である。
………
経済運営においては、需要を安定的に管理することが大切である。追加的需要が消費にまで響くことは、公共投資を4-6月期にドンと増やし、7-9月期にガクンと減らす「稚拙な自然実験」で端なくも証明された。11月指標では、デフレ脱却への区切りを示唆するものがいくつも見られたが、好調に慢心してか、2017年度補正予算は、前年度補正後との比較で1.1兆円緊縮することに決まった。所得が増え、消費意欲も高ぶる好循環へのチャンスに、一気に行けずに、躊躇してしまう。こうした勝負弱さを「良識」とするところに問題の根源がある。このペースだと、消費者態度の50超えには、まだ1年かかるかな。では、良いお年を。
(今日までの日経)
17年 熱狂なき世界株高 金利リスクに。生産「持ち直し」外需底上げ。日韓置き去りの米中密談・秋田浩之。日本国債「安全」決着の舞台裏。給付面でも日本は低所得者に冷たい・田中秀明。
※秋田さんの論説を読むと、クライシスは現実的シナリオになってきたよ。
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内閣府がデフレ脱却の目安とする4つの指標、消費者物価、GDPデフレーター、単位労働コスト、GDPギャップは、7-9月期には、いずれもプラスになっているので、既にデフレを脱却しているとも言えるが、消費者物価には、円安と原油高の影響があり、それら抜きでも上がっているかの見極めも必要だ。そこでポイントになるのは、サービスの価格であり、12月までの東京都区部の動向によれば、3か月連続での上昇となった。
サービスの中では、帰属家賃や通信が低下する中、家事、医療福祉、運輸、外食が上がっており、差し引きしてもプラスになっている。宅配便の例で分かるように、人手不足になり、賃金を上げざるを得なくなり、価格に転嫁されるという常識的なルートである。日銀の異次元緩和で、物価への期待が強まったからではない。机上の空論に陥らず、労働需給の多寡が賃金を通じて物価を動かすプリミティブな現実を覚えておきたい。
他方、懸案の消費は、商業動態が大きく伸び、11月家計調査の消費水準指数(除く住居等)も前月比+1.3となったことから、今後発表される消費総合指数や消費活動指数は、前月比+0.5位の高めの伸びが見込めよう。そうなると、10,11月平均は、ようやく、前期比が水面上に顔を出す形になる。消費が巡航速度の前期比+0.4まで行くには、この勢いで12月も伸びなければならない。なかなか険しいが、可能性がないわけではない。
消費の伸びは、11月に急に所得が増したわけでなく、極端に低かった消費性向の回復によってもたらされた。この背景には、景気ウォッチャーと消費者態度指数の調査項目が示すように雇用環境の一段の改善がある。11月の消費性向の回復は、先に公表されていたウォッチャーや消費態度の結果から、予測できたものだった。消費性向の72.0は低めの数字なので、まだ上がる余地が残っている。
(図)
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「消費が振るわないのは、財政赤字に対する将来不安があるから」という、まことしやかな「理論」が語られるが、実際の消費性向は、「雇用環境が良くなると高まり、悪くなると下がる」という、誠に庶民感覚に合致した動きを見せる。ちなみに、株価と雇用環境への認識は、似た動きをするので、世間的には、「株が上がった資産効果で消費が増えた」と語られたりする。勤労者世帯は、あまり株を持たないと思うのだがね。
2017年の消費を回顧すると、年明けから春にかけて大きく伸び、その後は減退、底入れという展開であった。将来不安がこのように変動したと説明するのは不自然で、素直に読めば、輸出等の追加的需要に従い、景気が変動し、それに消費も連れ添ったとなる。この見方なら、1年未満の短期の消費の変動も説明可能で、予測も立つ。むろん、政策的インプリケーションは、「緊縮財政で景気を悪くしたら、輪をかけて消費を減らす」でしかない。
一方、供給面に関しては、11月の鉱工業指数は、判断が22年ぶりに「持ち直している」とされた。リーマン前の最盛期を飛び超え、ハシモトデフレ前の1996年1月以来なのだから、感慨深い。設備投資を占う資本財(除く輸送機械)の出荷は、10,11月平均が前期比+2.8と好調だ。反面、建設財の出荷は、公共事業の剥落、貸家投資の峠越えがあって、前期比-1.3と息切れが見られる。建設投資に代わり、設備投資が成長を牽引できるかが今後の焦点だ。
11月は、労働力調査にも久々の動きがあり、9か月ぶりに失業率の更新を果たし、2.7%となった。男性雇用者は概ね横バイだが、女性雇用者が再び加速した。また、11月の職業紹介では、新規求人倍率の「除くパート」が前月比+0.04と、3か月連続の上昇で2.11倍となった。11月は新規求人数が伸び、特に「除くパート」の求人で、消費関連の卸・小売や飲食宿泊が強まっているのが特徴である。
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経済運営においては、需要を安定的に管理することが大切である。追加的需要が消費にまで響くことは、公共投資を4-6月期にドンと増やし、7-9月期にガクンと減らす「稚拙な自然実験」で端なくも証明された。11月指標では、デフレ脱却への区切りを示唆するものがいくつも見られたが、好調に慢心してか、2017年度補正予算は、前年度補正後との比較で1.1兆円緊縮することに決まった。所得が増え、消費意欲も高ぶる好循環へのチャンスに、一気に行けずに、躊躇してしまう。こうした勝負弱さを「良識」とするところに問題の根源がある。このペースだと、消費者態度の50超えには、まだ1年かかるかな。では、良いお年を。
(今日までの日経)
17年 熱狂なき世界株高 金利リスクに。生産「持ち直し」外需底上げ。日韓置き去りの米中密談・秋田浩之。日本国債「安全」決着の舞台裏。給付面でも日本は低所得者に冷たい・田中秀明。
※秋田さんの論説を読むと、クライシスは現実的シナリオになってきたよ。
26日発表の総務省の統計をそのままだと、前月比が0.8で前年同月比が1.1で。生活必需品だと特に生鮮食品と米と畜産物、製品は石油製品が上がっています。
前月比は昨年も同じような動きで一昨年は違うので要因は何でかな…