経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・ゼロ成長後の脱デフレ到達

2018年04月30日 | 経済(主なもの)
 連休前に3月の主な経済指標が公表され、これらからすると、1-3月期GDPは、わずかにプラスのゼロ成長にとどまるのではないか。とは言え、フレの部分が大きく、見た目ほど悪いわけではない。むしろ、今後の成長加速を思わせるデータもあり、4-6月期での飛躍が楽しみである。2014年の消費増税から丸4年、昨年来の輸出増に助けられ、ようやくにしてデフレを脱し、自律的成長が望めるところに来ている。

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 まず、消費については、指標が揃う前であることを留保しつつ、本コラムは、前期比+0.2と、やや強気に見ている。それでも「巡航速度」の+0.4からすると物足りない。伸び悩みは、GDPに近い消費総合指数が、そうだからであり、消費活動指数や総消費動向指数だと、より水準は高くなっている。伸び悩みの理由には、1,2月の生鮮食品の高騰の悪影響が挙げられるが、それほど明確ではない。

 次に、設備投資は、鉱工業指数の資本財出荷(除く輸送機械)が前期比-0.7と、10-12月期の高い伸びの反動が出る一方、企業の建設投資が順調だったことから、全体では、前期比+0.4は確保できると見ている。10-12月期より低いにせよ、まずまずだろう。機械受注は、非製造業が底入れし、製造業が上向いており、日銀・3月短観での設備投資の意欲も高いため、先行きは十分に期待できる。

 外需に関しては、日銀・実質輸出が前期比+0.5と鈍り、輸入も+0.5だったことから、寄与はほぼゼロである。輸出は鈍りはしたが、これまでの強い牽引力に比してのことだ。また、建設業活動指数は、1,2月平均の前期比が+0.1であり、3月の建設財生産がプラスなので、二期連続の大幅減から底入れしたと考えられる。これにより、景気をリードする「輸出+建設」の追加的需要は、2期連続の横バイから上向くこととなった。

 そして、1-3月期GDPの攪乱要素が在庫である。内閣府が仮置きする原材料と仕掛品の寄与度が-0.24にもなり、成長を年率で1%近く下げてしまう。製品在庫は鉱工業指数から横バイ、流通在庫は商業動態からプラスと思われ、そうした中、1-3月期は、生産や消費が今一つなことからすると、大幅な在庫減がマッチしない。GDP1次速報で寄与度がマイナスになるせよ、統計に基づく2次で修正される可能性がある。

 以上を総合すれば、1-3月期GDPは、わずかにプラスのゼロ成長にとどまるというわけだが、在庫減の影響が大きく、必ずしも内容は悪くない。むしろ、追加的需要や設備投資の動きからすれば、先行きが楽しみである。加えて、雇用と物価の指標では、注目すべき動きがあり、とうとう脱デフレに至ったと言える状況になっている。

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 3月指標のサプライズは、就業者数の大幅な伸びだった。労働力調査によれば、完全失業率は前月と同じ2.5%であったが、男性の就業者数は+14万人となり、1-3月期は前期比+35万人もの飛躍的伸びとなった。雇用者数だけでも+20万人である。2014,15年は「年間」で+14,+11万人だったから、その勢いが分かるだろう。もちろん、女性も、就業者数の前期比が+60万人、雇用者数が+44万人と伸びが加速している。  

 質的にも、既に、男性の35~44歳の就業率が原数値で94%をコンスタントに超えるようになっており、45~54歳も3月単月ながら94%を超えた。いずれも、リーマン・ショック前のピーク時の水準だ。雇用回復は、女性と高齢者から広がりを見せ、虐げられてきた氷河期世代にまで及んできた。もっとも、1997年以前は、いずれの年齢階層でも年平均が96%超だったこともあり、未だ望むべき上がある。

 これだけ雇用が広がると、人手不足から賃金増となり、物価高につながる。4月の東京都区部の消費者物価を財・サービス別で見ると、サービス(除く帰属家賃)の前年同月比が3か月連続で+0.5以上となった。外食、運輸等、医療等が強く、民間家賃にも動きがある。グラフで分かるように、停滞から脱し、加速したことが見て取れる。言うまでもなく、日銀の物価目標からは遠いけれども、もうデフレには戻るまい。その意味で脱デフレ到達である。

(図)



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 世の中には、消費増税やりたがりの御仁が多いが、2014年から3年間の景気停滞をどう考えておられるのかね。またやったら、再び2~3年は低迷するという想像ができないのかな。体験したことくらい活かそうよ。それに、2017年からの回復だって、成長戦略とやらの成功ではなくて、単に世界経済の回復で輸出が牽引してくれただけ。生産性向上は、人手不足による賃金増と省力化投資によって実現している。そこには、需要があって、人手が足りなくならないと、企業は社会にとって前向きのことをしないという「下らない真実」があるだけだ。それゆえ、「真実」は捨て置かれ、「緊縮でムダが絞られれば、企業がリソースを活かす」というファンタジーに浸り続けるのである。


(今日までの日経)
 「消費税14%、25年までに」・経済同友会。大企業賃上げ2.54% 今春、経団連1次集計、建設などけん引。世界で金利上昇圧力 米長期3%台、銀行間も急騰。運輸、脱デフレ優等生。


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