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経済政策と社会保障を考えるコラム


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2022年の非食料消費の割合は+0.7%の上昇

2023年02月12日 | 経済
 12月の家計調査が出て、2022年のデータが定まった。「非食料消費の割合は一定」というのが赤羽隆夫の法則だが、アベノミクスで大きな変容を受けた。それがコロナ禍を経てどう動いたのかを確かめておこう。きまじめな統計調査の積み重ねから、経済学では珍しい日本人が発見した法則だから、大事にしたいものだ。

………
 2022年の家計調査における勤労者世帯(二人以上の世帯)の実収入に占める非食料消費の割合は38.9%となり、前年差は+0.7%だった。この食料以外の消費の割合は、50年もの長きに渡って安定していたが、アベノミクスの2014年を境に、目立って低下し始め、コロナ禍の2020年には、前年から一気に-4.9%もの大幅な低下となり、2021年は+1.0%の戻しにとどまっていた。2022年も更に戻したものの、コロナ前には、まったく及ばない。

 非食料消費の比率が一定になるのは、所得と消費の間に、相互作用があるためと考えられる。すなわち、所得が増えれば消費が増え、消費が減れば、売上減を通じて、所得も減るという関係である。アベノミクスでは、雇用者報酬は増えたが、社会保険料の引き上げなどで、可処分所得が削られ、円安と消費増税による物価上昇も、消費の抑制に働いた。他方、消費が増えずとも、所得が増えたのは、円安の下での輸出の拡大が支えたと見られる。

 2022年においては、実収入が前年比+12,338円の増加となり、他方、消費支出も前年比+11,158円の増加だった、光熱・水道の+2,973円、教養娯楽の+2,285円、食料の+1,926円が大きかった。また、税・保険料が対象の非消費支出は+4,106円もの伸びとなった。2020年は、コロナ禍で特別収入が異常に多く、2021年は、その反動が出たが、2022年は、通常の変化の中での結果である。

(図)


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 今後、注目されるのは、非食料消費の割合がコロナ禍前に戻るのかである。2022年の戻りの鈍さからすると、この低い水準で安定する可能性も高い。政策的に消費の割合を上げたいというのであれば、少子化対策などで再分配を行って可処分所得を増やしたり、金融緩和による円安を是正して輸入物価を抑制するといったことが必要だろう。

 いずれにせよ、赤羽隆夫の法則は、消費性向が個々人の選好の集積では定まらず、所得や物価といったマクロの動向で決まることを示唆している。「消費増税をしたら、財政への将来不安が解消され、消費が増える」といった倒錯した理論は無用のものだ。消費は心理学にあらずである。


(今日までの日経)
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