経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・2023年度税収 黒字財政への転期

2024年07月07日 | 経済(主なもの)
 2023年度の国の税収は、補正予算額を2.5兆円上ぶれる72.1兆円だった。これを受け、2024年度は、予算額を2.9兆円上ぶれる72.6兆円と見込まれ、2025年度は、定額減税の剥落により、前年度予算より8.1兆円多い77.8兆円になると予想される。おそらく、財政再建目標を達成するのみならず、1.6兆円ほどの黒字になるだろう。家計が疲弊して、異次元の少子化を起こしているのに、それで良いのだろうか。

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 名目成長なくして財政再建なしというところだろう。他方、物価高で生活が苦しくなり、2024年の合計特殊出生率は1.15人まで下がって、人口推計の低位並みになり、年金の代替率は50%割れの危殆となる。これを取り戻すため、厚労省は、遮二無二、適用拡大を進めるだろうが、低所得層への重課は、ますます、少子化を進めかねない。一将功成りて万骨枯る、国強くして竈に煙立たずとは、まさにこのことだ。

 1月の中長期の経済財政試算では。目標達成にGDP比で0.2%、1.3兆円程が足りないだけだった。予想では、国・地方で税収が3.4兆円程上ぶれるので、2.1兆円の黒字になる。もっとも、税収は、いつも低めに見積られるので、ギリギリ達成くらいの打ち出しかと思う。実は、社会保険を含む一般政府では、1月の時点でも、既に赤字が解消されているが、視野が狭くて、誰も気にしていない。 

 普通の思考なら、税収の黒字を低所得者の社会保険料の軽減見合いの給付に充て、一気に適用拡大を実現して安心を得るという戦略に行き着くはずだ。非正規の育児休業給付まで実現しても、2023/1/1で書いたように1.8兆円たらずだ。プライマリ・バランスを達成してもなお、更なる緊縮を進めるだけが国家戦略なのか。「将来世代に負担をかけない」と標榜しつつ、少子化で将来世代を壊滅させていれば、世話はない。

(図)


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 財政再建目標の頸木から解放され、政治は、いかに効果的な再分配をするかで評価されるようになる。社会保険料の軽減は、130万円の壁を撤廃することにもなり、労働時間を柔軟に変え、精一杯、働ける社会に変える。ジョブ型導入やリスキリングより、はるかに意味がある改革だ。お金をかけない改革ばかりで、憤懣やるかたない国民に対し、政治が政策立案能力を発揮できるチャンスでもある。総裁選や総選挙には旗印が要るだろうし、次の最大の政治課題である年金改正への武器も必要であろう。


(今日までの日経)
 給食無償化は困窮対策か。年金、高まるGPIF期待 5年運用収益が想定の6倍。協会けんぽ、4662億円黒字 賃上げで保険料増。高齢者世帯59%「生活が苦しい」過去最高。長期で上向く女性の年金額。

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