経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

21世紀の財政政策はどうあるべきか

2023年04月16日 | 経済
 金利が成長率より低いなら、財政を経済政策に活用するのは有益だとするのが、『21世紀の財政政策』でのブランシャール先生の主張だ。金利=成長なら、基礎的財政収支をゼロにするのが財政再建の目標になるが、金利<成長なら、多少のマイナスでも大丈夫だ。まあ、そういうことである。ただ、金利や成長率が何で決まるのかを真面目に考えていくと、なかなか話は面倒になってくる。

………
 多少、引っかかるのは、先生が財政の実践例を挙げる第6章で、欧州は締め過ぎ、米国は出し過ぎ、日本がちょうど良かったとするところだろう。オールドケインジアンの私は、もう少し緩めるべきだったと思うし、正統派は公債の膨張を問題視するだろう。いずれにせよ、欧日米の相対的な立ち位置は、先生の言われるとおりである。

 日本は、いち早く、1997年以降、長期停滞に入ってしまったが、これは、橋本政権による過激な緊縮財政による需要ショックから始まる。成長率の基礎となる設備投資のGDP比がどう動いたかと言うと、バブル期の過剰が解けて、せっかく上向いてきたのを低下させ、以降、浮き沈みを繰り返す。従前との違いは、盛り上がりの局面がなくなったことだ。

 盛り上がってもおかしくなかった局面は、構造改革の小泉政権期、アベノミクスの第二次安倍政権期だが、いずれも、緊縮財政で需要を抑圧し、好循環を堰き止めて、設備投資の加速を阻害した。低い成長率は、こういう形で決まったわけである。他方、金利は、需要を抑圧すれば、投資の見込みが立たなくなるので、資金が求められなくなり、ゼロ金利にしたって、まったく問題が生じない。これで金利<成長ができ上がる。

 金利が貯蓄と投資を調整するという前提を置くと、話は面倒になるが、貯蓄と投資は、需要で導かれると考えると簡単だ。財政をどのくらい使えば良いかも分かりやすい。名目3%成長を目標にするなら、財政による需要の創出を3%増にする必要がある。景気が上向いたからと言って緊縮していたら、そりゃ金利も成長率も上がるまいて。

 名目成長の目標が3%で良いのか、内実の物価の目標が2%で適当かは、労働供給の潜在力次第だろう。資本はすぐ増やせても、ヒトはそうはいかないからだ。物価の目標は、金融政策の単なるノリシロではなく、生産性格差インフレーションに相当する。成長で増える需要がどのくらいサービスに向き、どのくらいの労働力を供給できるかで目標は定まる。

(図)


………
 経済政策は、金融政策と財政政策の両方を節度をもって使うべきである。常識的な結論に聞こえようが、オールドケインジアンの立場であればこそだ。実際、私も歳だしね。金融政策が万能との立場になると、取るべき経済政策は違ったものになる。金融緩和でバブルを作って需要を創出し、緊縮財政や他国通貨安で物価を抑制するという時代が終わって、21世紀の経済政策においては、両方を使うようになるということなのだろう。


(今日までの日経)
 米大手銀、4割増益も与信費用3.8倍。女性の働き方、正規にシフト。バイト時給3月2.1%高。ファストリ、営業最高益。台湾IT総崩れ 2割減収。高級品消費、なお中国頼み 25年に世界市場25%占め首位。イオン営業益最高に迫る。中国消費、盛り上がらず。


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